団塊世代の設備保全エンジニアが定年退職で完全に仕事を辞めてしまった入れ替わって数年。
設備保全エンジニアの今後を勝手に想像してみます。
弊部の設備保全エンジニアを見て感じたことです。独断と偏見だらけでしょう。
世間で感じる保全の待遇とは徐々に変わってきている印象を持っています。
入れ替わりが完了していない会社なら、入れ替わったらこんな感じになるのでは?という参考になるかもしれませんね。
部内
設備保全エンジニアなら、自部門である保全部の部内のことはよく見えるでしょう。
環境変化
例えば弊部ではこんな感じで変化が起こっています。
- 平均年齢 50代 → 30代
- 経験年数 約30年 → 5~10年
- 人数 100% → 120~150%
- 学歴 高専100% → 大卒・院卒が数人配属
この変化が、2010年から2020年くらいの10年間で徐々に起こりました。
変わらないことで有名なJTCでも、ここだけは劇的に変わっていますね。
この変化は当然ですが予見できています。
その組織の年齢構成と定年を考えれば自ずとわかりますね。
入れ替わりをスムーズに行うためには、遅くとも定年退職が起こる10年位前から採用・補充をしています。
でも、そんなに急に採用されるわけではありませんよね。。。
10年前から少しずつ採用をしたとしても、経験年数が30年というおじいちゃん設備保全エンジニアが定年してしまうと、経験年数5~10年くらいに一気に変わってしまいます。
保全は「長期的な育成」を視野に入れるので、採用される年齢は20代がほとんどです。
20代の人が経験年数5~10年だと、20~30才となります。
平均年齢は30代になりますね。
経験者採用を考えるとちょっとだけ年齢が上になるでしょうが、誤差範囲ということで。
人数は相対的に増えています。
スキルがない人が多くなるから、人数でカバーせざるを得ません。
これは技術伝承を全否定している形です。
技術伝承ができない理由
定年退職間際の人には「技術伝承」をミッションとして課して、部のテーマとして取り上げたりしますが・・・
真面目に取り組んだ人は誰もいませんでした。
何となく定年退職間際の人の話を聞いた情報をまとめると、こんな背景があったのだろうと推測できます。
実態
経験年数が少ない設備保全エンジニアが集まった集団である、弊部はこんな傾向があります。
- 話をしない(雑談・相談)
- 報告が遅く、手遅れ間際になって炎上している
- 誰かの言いなりになっている
設備保全エンジニアどうしでの話をする機会をほとんど見なくなりました。
生まれた地域や時代が似た人同士であれば、結束は強くなります。
昔の設備保全エンジニアはそうやってタッグを組んでいたのですが、今のエンジニアは個人主義が行き過ぎています。
本来は協力し合う設備保全エンジニア同士でもほとんど会話をしません。
「相談することが悪」と思っている節すらあります。
部内で会話が少ないと思ったら、相談の大小を疑った方が良いでしょう。
もちろんメールやチャットでコミュニケーションを取っているかもしれませんが、それが十分にできていれば言語化能力は相当のレベルになっているはずです。
話をしないという関係性が、報連相を遅くする要因となって問題が先送りされ炎上するというケースは増えています。
今の40~50代の保全管理者は、若手設備保全エンジニアの管理で精いっぱいという状況です。
本来なら彼らは自保全部門の運営・将来構想の立案・工場全体最適化などの広い視点で仕事をするべきなのに・・・。
経験年数が少なく言語化が得意ではない設備保全エンジニアは、誰かの言いなりになっている傾向が強いです。
「○○さんからこんな風に言われました。以上です。」
こういう報告が異常に増えています。
保全部門としての自分の意見がなく、伝言ゲームだけ。
その伝言ゲームすら適切にできず、非言語情報が落とされていてニュアンスが読めなかったりします。
学歴
設備保全エンジニアの学歴もちょっとずつですが変わっています。
大卒や院卒の設備保全エンジニアを増やそうとしています。
これは高卒・高専卒が多い保全としては大きな変化でしょう。
高卒・高専卒では募集人数が集まらないという理由だけではありません。
保全を作業のレベルから1ランクアップさせるためには、大卒・院卒の思考が有利だからです。
- 設備の構造を学問的に理解する
- データを体系的に活用する
- 自分で仮説を立てて検証する
こういう力は高卒・高専卒では結構低いでしょう。
だからこそ場当たり的な保全が横行しがちです。
それでは工場の安全安定な運転は難しいです。
設備がトラブルを起こしたら、すぐ直そう!と何とか努力する。
トラブル対応をしているときは、あたかも物語の主人公的な気分になるでしょう。
もしくはプレッシャーに押しつぶされそうになって悲壮感が漂うかもしれません。
そういう経験を繰り返していると、設備のトラブルに振り回される日々を過ごしていると疲れていきます。
思考を放棄して、トラブルに振り回されるのが保全だと割り切って仕事をするかもしれません。
工場の安全安定な運転をするには、保全として何ができるのかを冷静に見極めて社内にアピールする力が必要です。
そこは大卒・院卒の方が有利なはずです。そこを期待しているのが現在の弊部です。
大卒・院卒だから優秀、高卒・高専卒だから優秀ではないという議論は意味がありません。期待している大卒・院卒が、実は保全の改革に機能しないという可能性は十分に考えられます。大卒・院卒が設計に期待できるかというとそれも怪しいです。逆に、高卒・高専卒が設計を適切にできる組織もあるようで、学歴でキャリアを縛るという発想には否定的です。人事は強烈に反発すると思いますが・・・。
製造部との関係
設備保全エンジニアが若返ってしまうと、製造部とのやり取りも変わっていきます。
製造部からの注文姿勢も変わっていっています。
- 期限までに絶対に直せ! → 無理なら早くいってほしい
- 直して当然だ! → 対応してくれてありがとう
- 電話や対面で即報告を! → メールでもいいから連絡をしてね
こういう風に表現や対応は軟化していっています。
ここだけを見るとブラック要素がなくなって、ホワイト化しているように見えます。
ぱっと見は非常にいいことです。
でも、実態としては誰かが我慢している格好になっています。
- 企画部の無理な生産計画をに対して、工場として減産報告をする
- 設備洗浄など強引な方法で進めて日数を確保する
- 報告書を保全部が作らず、製造部の人間が作成する
こんな感じで無理をする形になります。
設備保全エンジニア的には自分のことで精いっぱいになって見えにくいですが、過去の体制からの変化を考えると歪みを誰かが吸収しています。
製造部からの注文が軟化していけばいくほど、設備保全エンジニアとしては成長する機会が失われていきます。
その結果、中長期的には「あれ?保全っていらなくないですか?」ということになるかもしれません。
そうして子会社化をして悲惨な目にあい親会社に戻すというサイクルを繰り返しそうな気がしています。
工事会社との関係
入れ替わりが起こった保全部は、工事会社との関りにおいても変化があります。
これは露骨に「工事会社の言いなり」になる形で現れます。
具体的な補修方法や保全方法を考えることなく、工事会社がこういうからそれが正しいという判断をしがちです。
「今回の補修は□□としようと思います。工事会社の○○さんもそれが良いと言っています。」
こんな感じの報告をよく聞きます。
ちょっと細かいことを聞いたら、確実に答えが返ってきません。
分かりませんとも言わずに無言で立ち尽くすなんてケースも多いです。
実は定年退職したベテランも同じような感じだと思います。
昔からこうやってきていたからこれが正しいんだ!って感じのやりとりですね。
設備の構造や原理を考えてその方法が最適である理由を言語化できるというのは、非常に高度なスキルです。
専門スキルのある工事会社から情報を抽出しそれを社内で適切に公開して保全を牽引する、という設備保全エンジニアが育つには相当の時間が必要です。
経験年数を積み重ている間に定年を迎え、若手をまた採用するというケースを繰り返すことになり、設備保全エンジニアって何?という疑問を抱いてしまいますね。
最後に
設備保全エンジニアの入れ替わりを経験した弊部の実態を基に、入れ替わりが起こっていない保全部門でも5~10年後にはこんな変わり方をするかもしれないという例を紹介しました。
経験年数が少なくなり報連相の意識が少ないがゆえに、成長が遅くなります。
製造部や工事会社からの信頼が失われて存在価値がなくなり、子会社化していくかもしれません。
保全も設計も化学プラントでは非常に不安定な職場ですね。
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