液体の移送(liquid transfer)の危険性について解説します。
プラントで何か問題があった時は、液体の移送をとにかく止めるように緊急処置します。
当たり前のことですが、実は意外と説明できないでしょう。
特に機電系エンジニアは当たり前のように、ポンプを購入したりメンテをしたりしますが、使用時の危険性を認識していないケースがあります。
危険物の溶媒を想定した表現ですが、酸やアルカリでも原理は同じです。
しっかり危険性を理解して、化学プラントを安全に運営したいですね。
ガスの漏洩
液体の移送をしているとき、ガスが発生すると考えた方が良いでしょう。
水でもあっても、一部はミストとなって空気中に舞っていきます。
有機溶媒を扱う化学プラントでは、有機溶媒ガスが液の移送時には発生します。
反応槽やタンクなどに液を流しているとき、ガスラインからはガスが外部に漏洩していきます。
通常の運転時なら適性な処理がなされて、外部に影響が出ない安全な状態になっています。
ところが、何かしら問題が起きている時には、ガス処理が適切になされているか確認する時間すらない場合も。
まずは、いったん液の移送を止めてガスが発生しない条件にしてから、ガス吸収装置に問題が無いことを確認して再開します。
液の移送時にはガスが発生する
液体の漏洩
液体を移送しているとき、配管ライン中から液体が漏洩してしまう可能性があります。
通常はポンプ起動後にラインチェックをして漏れ確認を行います。
そこで配管から漏れがあったら、即座にポンプを停止します。
応急処置をしましょう。
処置をしている間に、他のラインも移送をしていると、もしかしたら漏れが起きるかもしれません。
ガスケット劣化が原因でたまたま漏れているだけなのか、別の理由があるのかを想定します。
1ラインだけを処置すれば良いのか、他のラインもチェックしないといけないかで、作業員の負担は全然違います。
こういった場合に、バッチプラントでは他のラインの液も止めてしまうことが割とあります。
液の移送時間が1時間程度と短いため、少し止めてもカバーできるからですね。
静電気による着火
液体を移送させている時、静電気の着火リスクは高くなります。
適正にコントロールして静電気着火がしないように運転します。
液体の移送は常に安全に行っているとは限らず、いつ何かしらの問題が起きたとしても不思議ではありません。
例えば先の例である、ガスケット劣化による液漏れで静電気着火という可能性は十分にあります。
何となくポンプで移送すれば安全と思うエンジニアもいるかもしれませんが、作業員は常にある程度は不安と緊張の状態にいます。
液の移送時には静電気が溜まるリスクがある
閉塞を起こす
液体の移送をしているときは、配管の閉塞のリスクを持ちます。
閉塞したら開通作業をすればいい、と単純にはいきません。
静電気着火が起こってもおかしくないからですね。
配管取外しなどの肉体労働としての辛さもありますが、それ以上に着火の危険性は怖いです。
何か問題が起きている時は、閉塞の恐れがありそうな液体の移送はとにかくストップします。
液体の移送は危険
液体の移送は危険ということが理解していただけましたでしょうか?
化学プラントでは反応がとにかく危険だとスコープがあたりますが、液の移送も十分に危険です。
機電系エンジニアとしてはポンプの設計として関わりますが、能力設計にだけ目を向けて危険性を意識しない人が意外といます。
改めて考えると難しい話ではありませんが、一度は考えておかないととっさの時に困りますね。
参考
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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
液体の移送が化学プラントで危険な理由を解説しました。
ガスが発生する・液体が漏洩する・静電気着火が起きる・ラインが閉塞する
反応が危険という分かりやすい条件以外にも、液体の移送も十分に危険な作業です。
一度は考えておきたいことですね。
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