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化学機械

なぜ熱交換器は大量に使われるのか?化学プロセスでの必然性を解説

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熱交換器 化学機械
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 化学プラントに欠かせない装置のひとつが 熱交換器 です。プラントの安定運転や効率的な反応制御のために、熱交換器は大量に導入されています。
 本記事では、化学プラントにおける熱交換器の基本的な役割と必要性を、温度制御・効率的な伝熱・具体的な使用シーンに分けて解説します。エンジニアとして設計や運転の基礎を固めたい方におすすめの内容です。

熱が必要な理由

化学プラントではさまざまな温度条件で運転をします。化学プラントでの運転で、制御可能な物理的指標はあまり多くはなく、温度・圧力・流量・液面などの測定可能な値でコントロールします。

化学反応は目に見えないミクロな世界で行われることですが、人間ができる制御は意外と少ないです。この中でも温度は最も重要と言っても良いでしょう。

温度が運転上重要

プラント設計者なら特に意識しておきましょう。温度が10℃上がると反応速度は2倍になる、とも言われます。温度をとにかく上げれば反応速度が速くなってヨシ!というわけではありません。

  • 温度が高くなると暴走反応を起こして危険
  • 温度が高いと反応速度が速く、不純物ができやすくなり、運転成績が悪くなる
  • 温度が低いと反応速度が遅く、時間が異常にかかる
  • 温度が低いと固まったり粘度が上がって、運転できなくなる

温度という1つのパラメータでも、運転には非常に大きな影響が出てきます。運転をするうえでは温度管理範囲を明確に定めて、その範囲内で運転します。管理範囲を超えた場合は、逸脱管理をして通常とな異なる特別な管理方法で対応して、品質が問題ないか確認していくことになります。

生産量をできるだけ最大にするために、化学プラントでは24時間運転をします。この成果をさらに効率良くするためには反応成績をとにかく上げることが大事です。温度は反応に直接影響を与える超重要な管理指標です。5℃くらい温度が変わっても成績に影響が出るということはよくあります。

効率的な熱交換

熱交換器は効率的な熱交換ができる設備です。熱を交換するというだけ、例えば熱い物質を冷やすだけなら、冷たい水を直接掛ければ良いでしょう。

化学プラントでも危険な状態になれば、こういう方法を取ります。通常の運転範囲では、水を入れてしまうとそれが異物になったり、取扱量が変わったり、運転上の問題になります。そこで、プロセスの温度だけを変えるために、熱だけを交換する設備が必要になります。

これが熱交換器です。熱交換器では熱を効率的に交換するために、以下を重視しています。

  • 伝熱面積を上げる
  • 流速をできるだけ早くする

伝熱面積を上げるのは、熱の交換が伝熱面積に比例するからです。熱量の公式Q=mcΔtという公式で有名。熱交換器は、入口の配管1本で通っている流体の流路面積を広げる設備という表現も可能です。

なお、伝熱面積を上げることと流速を早くすることは、対立関係にあります。というのも流量は一般に決まっているなかで、伝熱面積をあげると流速は下がるからです。平均流速そのものは返れなくても局所的な流れを変えたりして、熱交換を促進する設備もあります。この辺はメーカーの努力ですね。

典型的な熱交換器

化学プラントでよく使う熱交換器をかんたんに紹介します。

  • 多管式熱交換器
  • プレート式熱交換器
  • スパイラル式熱交換器
  • コイル・トレース式熱交換器
  • 直接接触式熱交換器(バロメトリックコンデンサー)

これらの設備は、温度・圧力という運転条件や、腐食・閉塞などのプロセス特性に応じて選択します。熱交換をするために必要な機能は、温度の異なる2つの物体ができるだけ接触しやすいようにすることです。

ここで紹介したどの設備も、その機能は担っていることを認識しておきましょう。現場レベルでの改善や困ったときに、使える考え方です。

使い方

熱交換器を化学プラントで使う工程を紹介します。

凝縮・蒸発(相変化あり)

熱交換器は凝縮・蒸発を目的に使います。これらは相変化を伴います。

凝縮はベントコンデンサーという表現で一般に認識されています。蒸留が多いプロセスでは当たり前の設備ですね。

蒸発は反応器やリボイラーで行う工程です。蒸留プロセスを見たら、温めるための蒸発と冷やすための凝縮がそれぞれ含まれています。熱(温度)を利用して、物体を分離しています。液体を取り扱うプロセスでの分離の基礎的な方法です。

機械的な組立工場とは違う部分で、初心者は戸惑うでしょう。

凝縮でも蒸発でも設備の能力的には、余裕を持ちましょう。蒸発は温度管理が大事であって、設備能力に余裕があっても処理量を増やすということは普通はしません(処理量を増やす場合は慎重に扱います)。凝縮は設備能力に余裕がないと問題になるけど、余裕があって困ることはほぼありません。

温度調整(相変化なし)

熱交換器は温度調整の目的で使用します。

  • 反応を適切に進めるため
  • 反応器に投入する物体の温度を予め調整するため
  • 反応物の移送中に固化しないようにするため
  • 冷凍機・冷却塔で熱をやり取りするため

温度がプロセスに影響を与えるために、温度調整をする設備です。

直接的な熱交換設備というよりは、間接的な熱交換設備という位置づけでも良いでしょう。

反応を適切に進めるために、滴下をして徐々に反応を進め反応熱を冷却するという重要なので、間接的な熱交換器だから軽視していいという訳ではありません。

参考

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最後に

化学プラントで熱交換器が大量に導入される理由は、単に「加熱・冷却するため」ではなく、反応の安定性・効率・安全性を担保するため です。

  • 温度は最も重要な制御パラメータ
  • 熱交換器は異物混入を避けつつ効率的に熱を移動できる
  • 凝縮・蒸発や温度調整に幅広く活用される

基礎を理解することは、設計・運転・保全において確実な判断につながります。現場で迷ったときに思い出すべき、必須の知識です。

化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
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