化学プラントで怖いモノ言うと、ガスでしょう。
目に見える怪しげな色のガスもあれば、眼に見えないけど非常に危険なガスまで様々。
液体のように見えるものばかりでないことが、ガスの怖いところでしょう。
化学プラントではそういうガスを外部に漏洩させないために、しっかりと設備を構築します。
ここで手を抜くと、設備投資としては安くなりますが、人体・環境など様々な面で問題になります。
ガスを処理するためには、液体に吸収させることが王道。
ガス吸収を実現させるためにはいくつかの設備が考えられます。
塔・タワー
塔・タワーはガス吸収の典型設備です。
発生ガス量が多い場合には、塔・タワーを使います。
このケースで問題になることは、設置してすぐの運転開始のタイミングや、増産したいというトライアルの時くらいでしょう。
しっかり設計されて、工程中の最大発生ガス量で塔径を選べば、問題になることは少ないでしょう。
最初にしっかり考えることで、以降の何十年と続くプラント運転が安心になるでしょう。
エゼクター
ガス吸収でも少量の場合はエゼクター方式を取ることがあります。
エゼクターは真空装置として使いますが、ガス吸収の機能も持ちます。
特に水スクラバーが分かりやすいでしょう。
水の力でエゼクター部に負圧を作り、ガスを導きます。
エゼクター部では水とガスが接触して、一部のガスは吸収されます。
水とガスが混じったものをタンクに導いて、水を循環させれば、ガス吸収を継続することができるでしょう。
ただし、ガス発生量と水の入れ替えタイミングには注意が必要です。
発生ガス量が多いと、エゼクターだけでは吸収できずに、外部に放散する可能性があります。
水で吸収させようにも、すぐに飽和状態となって、水の入れ替えを余儀なくされることもあります。
少しのガスが発生するけど、塔・タワーは高価。塔・タワーの前に少し処理をしたいという時には、大活躍します。塔・タワーに導く配管費は高いですからね。
反応器
反応器はガス吸収装置の機能を持ちます。
反応器で反応が起こった時にガスが発生し、反応器内の溶媒でガスが溶けるという場合です。
エゼクターと同じく、ガス発生量と溶媒量の問題があるので、積極的にガス吸収を行う設備としては捉えない方が良いでしょう。
ただ、現場で少しガス発生が問題になって、塔・タワーやエゼクターで使えるものはなく、反応器やタンクが余っているという場合には、ガス吸収装置の代理として使えます。
- 反応器内に水を張って、反応器上部の挿入管付ノズルからガスを流しシールポット代わりにする
- ガスを反応器に導き、上部から水を流す
- ジャケットで冷却液を流し、凝縮させる
ガス吸収以外にも色々な機能があって汎用性の高い反応器だから、ガス吸収にも使おうという発想があっても良いかもしれません。
ただし、配管口径がそれなりに大きくなると思います。
真空ポンプ
真空ポンプもガス吸収装置の機能を持ちます。
水封式真空ポンプなら、エゼクターと同じ感覚ですね。
エゼクター以上に、腐食性とポンプ動力が問題になりやすいです。
ガス吸収された液は例えば酸性液になることもあり、設備には耐食性が求められます。
エゼクターの場合にはセラミックが使えますし、タンクやポンプもフッ素樹脂ライニングなどが選びやすいです。
水封式真空ポンプの場合は、ハステロイなどの高級材質で代用せざるを得ず、効果になりやすいです。
液体を回す動力も、エゼクタータイプよりも大きくなるでしょう。(水封式ではエゼクターに比べて、ガスの圧縮にもエネルギーが必要になるため)
真空ポンプでガス吸収を担うという思想はかなり危なく、塔・タワーで処理した残りや熱交換器などで凝縮して残ったガスだけを処理する、という位置づけが良いでしょう。
参考
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最後に
ガス吸収を実現しようとしたら、塔・タワーが一般的ですが、局所的にはエゼクターも活躍します。
反応器や真空ポンプを代用するのは、緊急的用途や一時的なものにしたいです。完全に使えないわけではないので、いざ使わざるを得ない状況になれば、しっかり評価しましょう。
そんなことにならないのが理想的ですが。
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