フッ素樹脂ライニング設備の取り扱い上の注意点を解説します。
耐食性が必要なプロセスや粉体摩擦を低減する目的などに使うことが多いフッ素樹脂ライニング。
グラスライニング設備の陰に隠れがちですが、重要な設備の1つです。
フッ素樹脂ライニングはグラスライニングよりも雑に取り扱っても良いことが、特徴の1つです。
それでも完全に気にしなくて良いというわけではなく、それなりに注意点はあります。
ガスにとにかく注意
フッ素樹脂ライニング設備の最大の課題は、ガスの透過です。
フッ素樹脂という耐食性の高さで目立った姉妹、何にも問題ないように見えますが、これは液体だけの話。
ガスはフッ素樹脂を透過する場合が多いです。
とくに、ハロゲン系はプロセス反応でガスとして発生することが多く、このガスがフッ素樹脂を抜けていって外部に放出されます。
フッ素樹脂ライニング設備は、内面がフッ素・外面が金属という構造なので、フッ素部を抜けたガスは金属部で溜まってしまいます。
フッ素と金属の間に溜まったガスは、金属を腐食させていきます。
長く続くと金属がボロボロになるでしょう。
圧力が大気圧より高い・低い使い方をする場合、フッ素樹脂だけで形状を維持することができず、タンクが変形して、フッ素樹脂が破れて、プロセス液が漏れるという結論に至ります。
もちろん、そうなる前に交換が必要です。
金属の腐食が認められたら、何かしらのアクションをしましょう。
腐食を少しでも早く発見するために、知らせ穴を設けることは有効です。
強度を担保する金属部の一部を削って、フッ素と金属の間に溜まったガスが導かれるようにします。
穴はプラグで止めておいて、ガスが漏れてきたら少しずつ滲んでくるという形が良いでしょう。
ガスは透過した後に、凝縮して液体となるのが普通なので、知らせ穴は下部に設定します。
早期発見のためにはプラグは付けない方が良いのですが、雨風などで知らせ穴から逆流したり詰まったりする恐れがあるので、プラグで閉止しておきましょう。
内部点検・洗浄は注意
定期的なメンテナンスのために、槽内に入って点検することがあるでしょう。
ここは最大限注意しましょう。
プロセス液を排出して、洗浄液で洗えば、見た目は完全に綺麗になります。
だから、保護具を何もつけずに、通常の作業服でタンク内に入ってしまいがち。
内部の拭き上げをして、ライニングの破れや膨れがないか点検しているうちに・・・
フッ素と金属の間に溜まったガスの液化したものが、漏れてくる可能性があります。
透過したのだから逆流してもおかしくないですよね。
これで、作業員が薬傷を負う可能性は十分にあり得ます。
フッ素樹脂ライニング設備内に入るときは、一見綺麗に見えても何が起こるか分かりません。
しっかりと保護具を付けてから入るようにしましょう。
補修点検のために、ピンホール検査をしたり張替をしたりする場合も、同じく薬傷の危険性がありえます。
特に張替はリスクが極めて高いでしょう。
FRPは意外と安全
フッ素樹脂ライニングとFRPを比較したら、フッ素樹脂ライニングの方が安全安心と言われがちです。
でも、ガス透過のリスクを考えれば考えるほど、FRPにはその心配がないことがメリットの1つとして挙げられます。
メンテナンス思想と関連する話です。
- フッ素樹脂ライニング設備を大事に使っていって、薬傷のリスクを抱えながら内部洗浄・点検して、長期使用していく
- FRPで内部点検はほぼ行わず、TBMで交換していく
会社として一律に決めれる話ではなく、設計者や使用者によって意見が分かれるところです。
フッ素樹脂ライニングを扱うためには、購入前からしっかりと考えておきましょう。
参考
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最後に
フッ素樹脂ライニング設備を扱う時はガス透過に注意しましょう。
フッ素樹脂が強力で耐食性が高いため、安心して使えそうに見えますが、気が付かないうちにライニング接着面に透過していきます。
腐食がだんだん進行していきますので、知らせ穴での検知をしましょう。
内部に入るときは液が残っていると想定して、しっかり保護具を付けましょう。
フッ素樹脂ライニング設備とFRPのどちらを選ぶのか、購入前にしっかり考えましょう。
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