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電気設計

電気配線の知識を機械系エンジニア向けに解説

電気配線ケーブル 電気設計
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電気配線(electronic cable)や電機という単語があると、電気エンジニアの分野と思って丸投げする機械エンジニアは非常に多いです。

一般論としてそれは問題がありません。

でも、電気のことをちょっとしっているだけでも、電気エンジニアと話をするときに楽になります。

電気も計装もある程度知っているだけで、設備全体を把握するトータルエンジニアとして活躍できるのが機械エンジニア。

その意味で、電気エンジニアや計装エンジニアよりも優位性がある機械エンジニアなので、

電気のことも周辺知識として知っておきたいですね。

電気配線(electronic cable)仕様

電気ケーブルは機械屋が見ると、少し複雑に見えます。

ですが、基本は配管と同じです。

配管が果たす役割は一般に、下記のように表現できます。

  • 中に流体が通り
  • 周囲の金属の配管によって
  • 流体を周囲に拡散しないようにする。

電気ケーブルも同じように表現できます。

  • 銅線中を電気が通り
  • 周囲の絶縁体によって
  • 電気が周囲に拡散しないようにする。

同じですよね。

電気は難しくありません。

導体・絶縁体・シース

電気ケーブルは導体・絶縁体・シースなどで構成されています。

下記の例はCVQというタイプです。

ケーブル断面(electronic cable)

1本の電気ケーブルに電気を押すための導体部分が必ず必要です。

この導体部分は、電気を通しやすいで製作されます。

裸線などとも言われます。

この裸線に触れると当然感電します。

だから、電気が漏れないように、電気から人や周囲を守るために、遮断する必要があります。

電気を通さない性質が必要なので、絶縁体と言われます。

絶縁体として、ポリエチレンが一般に使われます。

裸線と絶縁体を合わせて、心線といいます。

心線まであれば電気を通すための機能は成立します。

心線の外周部である絶縁体を傷つけないようにするための保護カバーとして使うのが「シース」です。

昔はポリ塩化ビニルを使うことが多かったです。

今では環境面でより安全なポリエチレンを使うことが増えています。

芯数

私が所属する会社では4芯を使うことが多いです。

4芯とは、裸線・絶縁体・シースの組み合わせを1芯として4本を合わせたものです。

なぜ4本でしょうか?

三相かご型誘導電動機には、少なくとも3本の線が必要です。

これに+1本。

アースのために使います。

三相の3本+アースの1本4本ということです。

電気保護

機械系エンジニアにはなじみがないかも知れませんが、電気配線も保護が必要です。

配管と同じく長期的に使っていく上で劣化していく配線。

故障するとプラント運転に致命的な問題を起こすので、保護はしっかりしないといけません。

配線としての保護ターゲットとなるものは、具体的には過電流・地絡・雷・断線です。

上で述べた配線自体の仕様としても、システム全体としての保護対策はできません。

配線に関する情報としてシステム全体でカバーしようとしています。

過電流継電器・地絡継電器・避雷器などの部品が保護器として機能します。

変電所詳細(electronic cable)

過電流

設備の運転に電流を流そうとするといくらでも流せると思って良いです。

ポンプで水を送る時に、水を送る量は自ずと限界があります。

揚程10mのポンプで100mも送ることはできません。

これはポンプの能力に限界があるからです。

電気で設備を動かすときに、予想していた以上の電流を流すことは可能です。

ところがそこで火災が発生します。

なぜかというと電気配線のキャパを越えるから

電気配線に電流を流すと発熱します。

ポンプで水を送る時も配管中の摩擦で多少の熱が出ますが微小です。

電気配線に電流を流すといくらでも流れようとしますが、配線サイズから決まる能力以上の電流を流すと、熱を逃がすことができずに発熱します。

ポンプでは何も安全対策を取らなくても自ずと限界がありますが、電気回路は安全対策が必要となります。

電気がいくらでも流れてしまうのを防ぐ装置が過電流保護装置です。

装置が大きすぎる、配線が細すぎるということが過電流と繋がります。

地絡

地絡は、電線が樹木などの自然物と接触したり、絶縁が壊れたりして電流が流れ過ぎる現象です。

過電流と同じで、電流が流れ過ぎてしまう問題です。

これを防ぐために地絡保護装置を付けます。

雷を考えれば分かりますが、天から地に向かって電気は流れます。

電気回路は、この天からも地からも遮断して電気を流すという点が特徴です。

地絡「地」から保護する目的と考えれば良いでしょう。

電気のエネルギーが、装置に使われずに、地面に逃げ続けます。

非効率であり、過剰に電流が流れて火災が起きます。

雷は上記の例の「天」側の話です。

天から過剰なエネルギーが注がれて、火災が起きます。

これから装置を守るために、電気を逃がす装置として避雷針を付けます。

断線

上記3つの例は、電気が過剰に流れてしまう例です。

逆に線が切れると電気は流れません。

これを保護する場合があります。

電圧変動

システム全体として最悪の条件に対する保護を、1つ上の項目で説明しました。

システム停止というような大きな問題ではないが、微妙な問題に対してもケアをしています。

その具体例が電圧変動

電圧が多少変わるだけでも運転には多少の影響がでます。

その影響を極小化するためには、電圧をできるだけ一定にしようとしたいですね。

そのための方法を紹介します。

電圧を上げる

電力損失が電流の2乗に比例するため、電流を低くすることが対策になります。

このためには電圧を上げれば良いです。

電力 = 電圧 × 電流 の関係どおりです。

昔の工場は200Vで供給していることもありますが、今はほとんどが400Vです。

これは電圧変動の意味からも効果がありますね。

力率を改善する

力率という単語くらいから、嫌悪感が出始めます。

オームの法則は学校で学びますが、力率は学ぶ人が多くはありません。

力率というとき、cosθという三角関数が出てきます。

詳細の説明は省略しますが、交流の場合は電流と電圧の間に遅れが発生します。

学校のオームの法則では直流を相手にしています。

遅れは交流ならでは問題です。

その遅れを改善することがある程度は可能で、具体的にはコンデンサを設置します。

コンデンサは高校の物理で出てきますので、機械エンジニアは当然知っていることでしょう。

ケーブルを太くする。

ケーブルを太くすると、電力抵抗が下がります。

抵抗とは、学校のオームの法則ではRという記号だけでしか紹介していないと思います。

同じ電流でも、ケーブルが太い方が、ケーブル内の各銅線に流れる電流が少なくなります。

そうすると抵抗は少なくなります。

これはポンプと配管口径の話と全く同じです。

ただし、電力とケーブルサイズは、会社ごとに規格値を決めていると思います。

これを逸脱するためには、かなりの例外でないとダメでしょう。

ポンプと配管口径の関係なら、配管口径を変えることにあまり抵抗はありませんが、電気ではそうはいきません。

ポンプの場合は内容液の物性により、例えば粘度が高い場合には、口径を上げるしか方法がない場合も多々あります。

でも、電気はそんなことはありません。

銅線に電気を流すという点だけを対象にすればいいので、規格として決めやすいのです。

電動機の始動方法を変える。

これは電気容量が一定以上の場合に、考えることになります。

普通は直入れ起動です。

起動時には通常よりも大きな電流が必要です。

そのため電圧変動も出ます。

大きな電気容量なら、電圧変動も大きくなるので、起動方法を変えることで対応ができる可能性があります。

私も、直入れでなければ、スターデルタ起動。

というくらいしか知りません。

電波障害のノイズ

これまでは、外部要因によって電気配線に対して与える影響を見てきました。

一方、電気配線自体が外部に与える影響も考えないといけません。

それがノイズ

ノイズというと雑音という日本語訳が一般的です。

私は振動や音を少しかじっていますので、ノイズと聞くと騒音という音そのものにリンクします。

ところが、ノイズは雑音というよりも外乱に近いイメージであり、

ここでは電気に関する外乱としてのノイズを考えます。

EMI(Electro-magnetic Interference)を電波妨害の略語として

EMS(Electro-magnetic Susceptibility)を電波妨害耐性の略語として

それぞれ使っているようです。

電気ノイズの発生源

携帯電話が普及してから、20年以上。

ペースメーカーの方に配慮して、電車内で携帯電話の使用を禁止する場所があったり、

飛行機の離陸着陸に影響が出ないようにするために、機内モードにしたり、

電気ノイズについてはかなり一般的な知識として定着していると思います。

このノイズは自然に発生するものと人工的に発生するものに区分されます。

自然ノイズ

自然ノイズとしては雷、太陽光、静電気などがあります。

雷と静電気は分かりやすいですね。電気そのものです。

光はというと、理解に少し抵抗があるでしょうか?

光は電磁波そのものなので、電気系統に影響を与える可能性があります。

その量がどれくらいかは、私は分かりません。

この他に熱が電気に及ぼす影響も考えられますが、それも省略します。

自然界から起こるノイズが一定量あるということが大事です。

人工ノイズ

ただでさえ、自然界からノイズが起こり得るのに、

電気ノイズは人工的にも発生します。

主に電気機器、通信機器の作動です。

特に接点の開閉により電流や電圧の変化が起きる場合には、ノイズが発生します。

通信機器には例えば無線・携帯電話などがありますが、

これらの電波情報が電気ノイズとなり得ます。

化学プラントで電気ノイズはなぜ良くないか?

電気ノイズは、自然にも人工的にも発生しうることがわかりました。

これが、化学プラントでどういう悪影響が出るでしょうか?

電気よりも制御信号に影響が出る可能性があります。

特に重要なのは制御室のDCSです。

工場の頭脳であるDCS。

頭脳からの信号が電気ノイズにより間違った情報として発信されたらどうなるでしょうか?

開けてはいけない弁が開いてしまい、内容物が漏れたり、危険な反応が促進して火災爆発が起こったり。。。

これだけでも十分にアウトですね。

ノイズ対策

ノイズが化学プラントで避けなければいけないことが分かりましたので、

今度はノイズの発生を抑えるための方法を紹介します。

シールド

信号ケーブルの周囲を金属板で覆うという方法です。

信号ケーブルに流れる微弱な電流(4-20mA)へ影響を与えないようにするために、

外部からの電気ノイズを金属板で吸収しようという発想です。

電気ノイズは金属板にぶつかると、そこで電気信号として金属板中を伝播します。

この辺は電磁気学の世界になります。

化学プラントでは、電気ケーブルと信号ケーブルが同じダクトに入っている場合に、

間に金属板をつけて、遮断することが多いです。

もちろん、継目や接合部から多少は漏洩しますので、シールド効果ちゃんと評価する必要があります。

金属板の代わりに、ケーブルそのものにシールド線を巻くという方法もあります。

金属板と発想は同じ。

装置内の配線用に装置メーカーが施工してくれる場合もあるようです。

接地

いわゆるアースをとるという方法です。

これは静電気対策として化学プラントでは極めて一般的に行われること。

ただし、高調波ノイズは除去効果が低いです。

接地は必須だが、それでは十分ではない。

ということです。

フィルタ

フィルタは本来は電気回路のフィルタが一般的です。

それを電気ケーブルや信号ケーブルに使うという方法です。

フィルタと聞くと、私は振動シミュレーションの高振動数除去が真っ先に思いついてしまいます。

化学プラント的には異物除去用のフィルタが一般的です。

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最後に

機械エンジニアも関係がある配線ケーブルの知識を解説しました。

電気ケーブル仕様・保護器・電圧変動・ノイズ

電気配線も配管と同じように安定的に使うための対策を考えてあります。

考えるべき対象がプロセスではなく電気系統というクローズ系なので、電気エンジニア以外には体系が分かりにくいかも知れませんね。

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