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配管材質を設備材質よりもあえて1ランク下げる理由

配管材質の考え方 材料
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設備材質と配管材質(pipe material)の選定・使い分けの思想について解説します。

腐食性の高い薬液を多く扱う化学プラントでは設備の耐食性はできるだけ高くしたいもの。

耐食性のランクを上げれば上げるほど、イニシャルコストは上がっていきます。その代わりランニングコストは下がります。

どちらを選ぶかは会社の思想が出てきます。

とにかく最高級のスペックを選ぶ会社もあるでしょうが、多くの会社は最低限のスペックを選ぶでしょう。

弊社もそうです。

今回の記事はどちらかというと後者側の発想で、配管材質を落とそうとするときの考え方について解説します。

フロー

設備と配管の材質を解説するにあたって、具体的な例を挙げます。

設備配管材質(pipe material)

バッチ系化学プラントではよくある反応器とそこに接続する配管を示しています。

材質を検討するときに設備配管で同じ材質を選ぶべきかどうかということが今回の課題です。

設備と配管の材質

設備と配管の材質を同じにするかどうかという中途半端な表現を、少し細かく見ていきましょう。

作り方が違う設備と配管。

完全に同じ材質にすることはできなくても同等とみなせる範囲が存在します。

グレード設備配管
1SS400SGP,STPG
2SUS304SUS304
3SUS316LSUS316L
4グラスライニング
フッ素樹脂ライニング
ハステロイ
カーボン
磁器
FRP
グラスライニング
フッ素樹脂ライニング
ハステロイ
FRP

ざっくり4段階に分けてみました。

私の中での材質の区分はだいたいこんな発想です。

基本的には同じグレードどうしの設備と配管は同等の耐食性を持つという考え方です。

タンク底バルブは設備と配管を同じ材質

タンク底バルブまでは設備と同じ材質を選ぶと無難でしょう。

タンクがSUS316L配管がSUS304という場合を考えます。

ここでタンク元バルブはSUS316Lにしておくという考えです。

そもそもタンクと配管の材質を分けるのはなぜでしょうか?

いくつかの理由があります。

設備と配管の材質を分ける背景
  • 腐食環境に晒される時間設備は相対的に長い
  • 取扱温度設備の方が相対的に高い
  • 設備は配管より費用が高い
  • 設備が故障すると修理がとても大変

メンテナンス性を重視して設備交換頻度を極小化したいという思想です。

タンク上部ヘッダー・ガスライン

タンク上部ヘッダーガスラインなど配管はタンク設備と同じ材質にしておく方が無難です。

運が良い場合はこれらの配管材質のグレードを落とすことも可能です。が、これはレアケース。

蒸留などタンクとガスラインが同じ腐食環境下に晒される場合が多いからです。

逆に配管材質グレードを落とせるケースというのは以下のような受器の扱い程度でしょう。

グレードを落とす(pipe material)

薬液を設備に受け入れて、条件分岐によって液を送り出すというような簡単な使い方。

この場合には液と気体の腐食環境下が違い、液の方が圧倒的に腐食しやすいという思想にします。

タンクそのものタンク元バルブ設備と同じ扱いで、周囲配管上部バルブ配管と同じグレードを落とした材質です。

これを達成するためには一定の条件が必要です。

  1. 液の受入ラインは受入バルブを開閉する
  2. 窒素のラインは常時流通させている
  3. ガスラインは大気に開放されていたり集気されている

受入バルブを開閉する場合、受入バルブを元バルブと同じ発想で設備と同じ材質にします。

この結果、1次側の配管設備とは独立させてグレードと落とした材質にすることが可能です。

窒素ライン

一方、窒素は扱いが多少厄介です。

というのも、窒素は常時流通させることが基本だからです。

窒素配管自身はSUS304などの低グレード材質で対応できますが、設備本体がグラスライニングにする場合、どこまでをSUS304配管にすべきでしょうか?

私の職場では、設備ノズル配管の接続部で切り分けしています。

液の受入・払出が起こるたびにタンク内での圧力バランスは微妙に変化します。

ここに窒素を流通させるとき、窒素配管内にプロセス液が逆流しないような圧力バランスを保っておかないと、窒素配管は腐食する可能性があります。

窒素だったらまだ良いのですが、水配管をSGPで同じようにタンクと直結するように構成して、SGP配管が腐食したという例は結構あります。

汎用性を持たせるなら同材質

今回の思想は配管材質をコストダウンさせるために出てきた発想です。

でも、これって本当にコストダウンにつながるでしょうか?

短期的な設備投資という意味では確かにコストダウンします。

しかし、製品の切替が多い工場では二重投資になりかねません。

いったんSUS304設備配管で構成した場所を、たった数年で別の製品が入ったためにグラスライニングに一式交換したなんて例はあります。

設備だけは最初からグラスライニングで組んでいたけど配管はSUS304にしていて、数年後にはグラスライニング配管にしたという例なら山のようにあります。

それなら最初から配管もグラスライニングで組んでいたらいいのに・・・って思いませんか?

結構増改築が多いプラントなら注意したいですよね。

真剣に考えているエンジニアリングでも意外と短期目線で議論されることがありますよ。

というのも異動が多くて、プロジェクトに関わったメンバーがすぐに別のプラントに担当が変わるからです。

短期目線で処理をしようとするのはプラントエンジニアリング会社だけに限りません。

参考

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最後に

バッチ系化学プラントで設備と配管の材質を分けるときの考え方についてまとめました。

SS・SUS304・SUS316L・高耐食性の4グレードくらいに分けて、一部の例外的な場面で配管だけを低グレード化できることを示しました。

設備投資の機会が多いほど、二重投資になりかねません。

プラントエンジニアリングの思想としてオーナーエンジが持っておきたい部分ですね。

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