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見積

DBを使うとプラントのサイズがだいたい分かります

DB計算例 見積
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DB(Dia inch)は、化学プラントの機電系エンジニアなら、ぜひとも押さえておきたい考え方です。

日々の工事見積だけでなくて、プラント建設レベルのビックプロジェクトの見積、設備の定期的な更新計画など、オーナーエンジニアリングのかなりの範囲で使えます。

急ぎの見積を求められるオーナーエンジニアにとっては、とても重要。

なるはやで見積してください

こういう時に、慌てずに推算するための思考法として、DBを使った見積の具体例を紹介します。

化学プラントのDB(Dia inch)

化学プラントの配管に対してDBの具体的な例を見ていきましょう

屋外タンクのDB(Dia inch)

屋外タンク周りの配管は200DB程度です。

屋外タンク周りのルートは結構かんたんです。

配管のルートや形状は場所によってさまざまですが、

単純なケースとして屋外タンクを考えます。

屋外タンク周り(Dia inch)

屋外タンク周りは200DB

ポンプ吸込み

ポンプ吸込みラインのDBを数えてみます。

ポンプ吸込み(Dia inch)

エルボが4個、フランジが4個付いていると考えます。

屋外タンクとポンプとの間の配管は、口径50A・長さ10m程度を想定しています。

この配管のDBは32DBです。

(エルボ4個×2+フランジ4個×2)×(50A/25A) = 32DB

ポンプヘッダー

ポンプヘッダーのDBを数えてみます。

ポンプヘッダー(Dia inch)

チーズが2個、エルボが1個、レデューサが1個、フランジが4個付いていると考えます。

配管口径は50Aです。

この配管のDBは42DBです。

(チーズ1個×3+エルボ4個×2+レデューサ1個×2+フランジ4個×2)×(50A/25A) = 42DB

循環

循環も同じように確認しましょう。

循環(Dia inch)

この配管のDBは40DBです。

(エルボ6個×2+フランジ4個×2)×(50A/25A) = 40DB

ポンプ吐出し

これは循環と同じ発想でOKです。

1本あたり40DBです。

この考え方はプラントのDB計算でも大いに効力を発揮します。

「装置周り」の配管だけに着目しているので、別の装置までの長距離配管部分は考えていません。

ここは要注意です。

まとめ計算

上の計算のまとめを行います。

  • ポンプ吸込み  32DB
  • ポンプヘッダー 42DB
  • 循環      40DB
  • ポンプ吐出し  80DB(2本)

この合計値を取ると

32 + 42 + 40 + 80 = 194DB

少し丸めて200DBが屋外タンク周りのDBとして考えます。

屋外タンクのDB

200DBが最小

工場内装置のDB(Dia inch)

工場内にある装置周りの配管も200DB程度です。

工場内でも屋外タンクと同じ考え方ができます。

配管1本 40DB

屋外タンクの例と同じように配管1本ベースで見ていきましょう。

50A配管1本 40DB

ポンプ吸込み・ポンプヘッダー・循環・ポンプ吐出しのいずれもほぼ40DBでしたよね。

これと同じ発想で、配管1本40DBで見てみましょう。

装置間の配管

装置間の配管は50A、5mあたり、10DBで考えます。

考え方は屋外タンクのポンプ吸込みと同じです。

下にポンプ吸込み口の図を再掲載します。

装置間(Dia inch)

装置間の配管は、「工場内の空いている空間を通す」という思想です。

配管1本5mを単位として、接続していきます。

接続のために必要な溶接DBは以下のとおりです。

  • フランジで接続 4DB
  • 溶接で接続   2DB

工場内の空いている空間に配管を通すためには、エルボでルート変更をしないといけません。

50A配管1本では3個程度のエルボがあります。

フランジ接続4 + ルート変更2×3 = 10DB

接続ノズル

1つの装置に対して、接続可能なノズル数は限界があります。

ここでは8つとしておきましょう。

1つのノズル当たりに1本の配管がつながるとすると、上の考え方を使って

40+10 = 50DB

がノズル1つあたりの配管DBになります。

ノズルが8つある装置では、

50 × 8 = 400DB

と計算することが可能です。

この値は最小の配管構成のDBと考えてください。

現実にはもっと複雑な例はありますが、それは後で補正します。

バッチ系化学プラントの装置のDB

400DBが最小

1工程のDB(Dia inch)

バッチ系化学プラントの1工程当たり2,000DB程度になります。

考え方を紹介しましょう。

1工程の装置

バッチ系化学プラントでは1工程辺りに約5基の設備を使います。

1工程の装置としてはタンク・熱交換器・ポンプが標準的に組み込まれます。

これで装置数は3

蒸留の場合には熱交換器が1個から2個に増えたり、受器タンクが1~4個追加されたりします。

最小で3、最大で8(3+1+4)と考えた場合に、1工程辺りの装置数は5くらいでまとめて良いでしょう。

まとめ計算

以上の情報をまとめて計算しましょう。

  • タンク1基400DB
  • 1工程5基

400 × 5 = 2,000DB

バッチ系化学プラント1工程あたりのDB

2,000DBが最小

1プラントのDB(Dia inch)

バッチ系化学プラントの1プラント当たり20,000~40,000DB程度です。

ここまでの計算を追っていれば、考え方はシンプルです。

工程数が10~20個あるということですね。

反応

バッチ系化学プラントで「反応」は最大でも5つくらいです。

平均すると3反応くらいです。

ここに前処理・後処理工程を含めると、工程レベルでは9個くらいになるでしょう。

ろ過乾燥

ろ過乾燥などの特殊設備がある場合、これをそれぞれ1工程相当で考えます。

ろ過で1工程、乾燥で1工程という感じです。

その他

ろ過乾燥以外にもバッチ系化学プラントにはいろいろな設備があります。

1つ1つの接続配管数は少ないですが、積み重ねると2~10工程程度あります。

ここは変動が大きいですね。

まとめ計算

以上の情報をまとめて計算しましょう。

  • 1工程2,000DB
  • 1プラント10~20工程

2,000 × 10~20 = 20,000~40,000DB

この幅の大小は実際にはプラントの特性によって変わるでしょう。

バッチ系化学プラント1つあたりのDB

20,000~40,000DB程度

DB(Dia inch)とプラント工事費

DBとプラント工事費の関係を類推しましょう。

数合わせゲーム的な要素が大きいです。

建設費

バッチ系化学プラントのを1つ建てようとしたら40億円が1つの目安です。

1DBに対して資材費や労務管理費などの諸経費を入れて計算しても、

40,000DBで4億円程度の配管工事金額になります。

40億円には程遠いですよね。

この50億円には機械・電気・計装・土建などのいろいろな分野が合計されています。

機械工事だけなら12億円くらいになるでしょう。

この中の配管工事だけでも8億円程度。

こう考えるとプラント建設レベルになるとDBだけでは判断できない費用がありそうですね。

屋外タンクの数・屋外タンクとプラントの間の配管数・ユーティリティの配管数などですね。

プラント建設レベルだとこれらの要素だけでも1億円は下らないでしょう。

また、上記の単純計算では収まらない付帯設備なども付加されています。

配管工事だけを考えてみても

プラント建設の配管4億円+付帯配管1億円 = 5億円①

40億円/5=8億円②

5億円① < 8億円②

という関係を導出できます。

ざっと計算するだけでもそれなりの精度になることが分かるでしょう。

DBを使った概算の予算算出はこんな感じで行えば良いと思います。

増改築

すでに出来上がったプラントに新製品を導入するなどの増改築を行う場合、10億円程度が一般的な金額なるでしょう。

これ以上金額が高くなると、メリットのある投資とは言えなくなってきます。

プラント建設の1/4倍程度なので、DBでいうと10,000DBくらいになるでしょう。

これは私の体感値とも結構合っています。

原子力発電所のDB(Dia inch)は?

「原子力発電所で25,000点の溶接個所がある」という話を耳にしました。

25,000点が「DB」を指しているかどうか判別できません。

おそらくDBではありません。

仮にDBだとして配管を適当に500Aで考えてみると、500,000DBです。

「原発が500,000DB」と仮定することで、原発の工場規模を推定する訓練をしてみます。

配管1本

原子力発電所の配管1本の5mあたり120DBという計算です。

計算の詳細を以下に示します。

配管は平均500A程度

原子力発電所の平均配管口径を500Aと仮定します。

原子力発電所を見たことがありません。

文献を調べて推測しています。

メインの配管は冷却水のはずであり、最低でも400Aはあるようです。

ポンプ周りなどは1000Aくらいでしょうか。

ここまでくると50Bという表現の方が正しいですね ^ ^

平均値が推定しにくいですが、500Aで考えてみます。

バッチ工場の平均50Aとは次元が違います(笑)

直管

直管は1本5mを基本とします。

なぜ5mかというと、「道路を運搬できる限界長さ」だからです。

これは配管工事の大前提です。

1本5mということは、5mごとに配管を接続しないといけません。

原子力発電所では溶接接続が多いでしょう。

化学プラントなら増改築が多いために、フランジ接続が多いです。

原発は配管ルートが大きく変わることはないので、溶接の方が安く・寿命も長いです。

5mごとに500Aの配管の20DBが発生します。

フィッティング

原子力発電所のフィッティング部で5mに40DB使うと考えます。

フィッティングでも圧倒的にエルボが多いでしょう。

化学プラントよりも口径が大きいため曲がりの数は少なくエルボは5mに1個くらいしかないでしょう。

500Aの90°エルボの面間は840mm程度なので、840 / 1000 ×5 = 4.32m

エルボ5個並べるだけで5mですね。

エルボ5個だとかなり多いです。1個でも多すぎるくらい。

まとめ計算

上記の計算をまとめます。

  • 直管  5m20DB
  • エルボ 5m40DB
  • 溶接回数 3回

(20 + 40)×3 = 180DB

配管口径が大きく溶接が1回で終わらないと考えて、3層溶接をする倍を考えています。

5mごとに180DBという結果ですね。

原発サイズ

原発サイズを考えて、DBの妥当性を検証してみましょう。

配管長さ

原子力発電所の配管長さは42km程度という試算結果になりました。

  • 500,000DB
  • 5mごとに180DB

これらの情報から以下のように計算します。

500,000 / 180 × 5 /1000 = 14km

原発サイズ

原発を縦横それぞれ70m・高さ30m程度のプラントとみなして考えましょう。

空間容積は70×70×30=147,000m3。

この中で配管が占める割合はせいぜい1%程度。

配管容積は147,000×1% = 1,470m3。

配管口径が500Aの場合、断面積は0.19m2

プラント内の配管m数は

1,470 / 0.19 = 7.7km

14kmのうち半分くらいがプラント内部の配管となるでしょうか。

あとはユーティリティ関係などの外部接続配管ですね。

参考

DBはプラント建設でよく話題になる考え方で、オーナーエンジレベルではあまり話題になりません。

プラントエンジ会社と仕事をする機会はどんどん広がっていくので、知っていても損はありません。

合わせて、以下のような書籍でも勉強しましょう。

関連記事

DBについてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

DB(ダイアインチ)の具体的な例を解説しました。

化学プラントを例に屋外タンク・工場内を個別に考えていき積み上げていくと、1プラント20,000DBくらいになります。

ここからプラント建設や増改築に発展させることが可能。

原子力発電所など他業種の類推もある程度できてしまいます。

化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)

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