粉体取り出しを行うプロセスでは、晶析(と濾過・乾燥)が最終工程に入ります。
プロセス的には温度をとにかく下げることが要求されます。
製品の形状が液体なのか固体なのかを知っているだけでも、化学プラントの設計で1つ重要なことが見えてきます。
初めて担当するプラントでは、特殊な工程の特徴をいくつかを早く理解するだけでも、理解しやすくなるでしょう。
溶解度が低い
晶析で温度を下がる理由は、結晶の取り出し量をできるだけ多くしたいからです。
晶析とは、液体の中から固体が出てくる現象、というくらいのざっくりした定義で良いでしょう。
塩水は塩が水に溶けている状態で、そこから塩を取り出すことも、晶析です。
水の温度が高いほど塩は溶けやすいので、逆に温度が低いほど塩は水に溶けにくく、溶けきれなくなった塩が水から出てきます。
これと同じことを、化学プラントの操作として行います。
晶析で出てきた粉体が製品であるとして、同じ原料から製品の量が多いほど効率的な運転となります。
そのため、晶析ではできるだけ温度を下げるという操作を行います。
また、晶析を行ったときの、液体側には固体分が残っています。
これを廃棄してしまうと製造としてはロストなります。
晶析から濾過・乾燥という工程を経る中で液体側へのロスを少なくするために、系統全体の温度を下げることが大事になります。
大量のブラインで
温度を下げるという操作は、プラントでは冷却水を使って行います。
バッチプラントではジャケット付きの反応器を使います。
このジャケットに低温の液体を通します。
0℃以下のブラインを使うことも多いです。
液体で冷却するのは効率的ですが、温度分布が付きやすいという欠点があります。
例えば冷却ブラインを反応器の下から上に流して、内部を冷却する場合、ジャケットの下部は冷たく上部は暖かくなります。
この温度差が大きいほど、せっかく大量の結晶を取り出したいという狙いが阻害されます。
そのために、冷却に使うブラインは大量に流して、温度差を付けないようにする工夫が必要です。
設備面での注意
晶析を行うために、ジャケット付き反応器の設計で注意することをまとめました。
循環ポンプ
ジャケットに大量のブラインを流し込むための、循環ポンプが必要です。
ジャケットに温度計と調整弁も付けましょう。
設定温度を与えて調整弁の開度を変えて、ジャケットのブライン温度をコントロールします。
ポンプが無い場合でも、ある程度の制御は可能です。
ただし、他にブラインを流している設備との流量バランスが取りにくいので、制御は難しくなるでしょう。
強制的に一定の流量を確保するために、ポンプを使うという考えです。
ブラインの種類によっては、材質の制限を受けやすい物もあります。使用するブラインをよく確認しましょう。
耐食性のある材質
低い温度で運転する場合、材質は耐食性が重要になります。
鉄の材質でもSS400は危険です。SM400Bなど低温材が必要となります。
シール材でも0℃以下だと壊れるものもあります。
設備の一部が、0℃以下の低温となるので、注意しましょう。
反応工程などで0℃以下で運転するということは、そこまで多くなくても、晶析だけは低温という条件は起こりえます。
断熱
低温下で運転する場合、設備や配管の断熱が重要です。
断熱厚み自体も重要ですが、結露したり雨が侵入してこないようにする施工上の工夫が大事です。
さらに、長期の運転中にそれらの施工が悪くなったりしますので、定期的なパトロールによる確認と早期の修理が大事です。
人の手によるメンテナンスが欠かせませんね。
参考
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最後に
晶析を行う時は温度をとにかく下げることが大事です。
温度を下げて溶解度を下げないと固体が析出しません。
低温のブラインで大量に冷やす必要がありポンプは欠かせません。材質のチェックや断熱の定期的な確認も大事になります。
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