アウトソーシング(outsourcing)について化学プラントの例を紹介します。
化学会社で部門・部署が外出しされることは、珍しくありません。
大企業であれば、1年に1回くらいは何かしらの部門が外出しがされています。
形上は組織再編として見えるでしょうが・・・。
アウトソーシングつまり外出しされるかどうかは、単純作業・付加価値などのキーワードと結びつきます。
アウトソーシングは今に始まった話でなく、多種多様な分野で実施されています。
アウトソーシング(outsourcing)される部門
化学プラントでアウトソーシングされる部門の特徴を紹介します。
機電系エンジニア
外出しされやすい部門として、私が最も意識するのは機電系エンジニア。
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私自身が所属する部門ですからね。
危機感の現れです。
機電系エンジニアは昔は多角的経営のターゲットとして外出しされる傾向にありました。
自社で建設・合理化等を進めていくなかで蓄積されたノウハウを、外に売り出そうという狙いです。
社内での付加価値が低いというより社外での付加価値を高めるという、攻めの姿勢だったと解釈しています。好意的な解釈かも知れません。
社内の仕事が落ち着いてきた割に人材が余っていて、外の仕事をしないと仕事がなかったのかも知れませんね。
外出しした機電系エンジニアはプラントエンジニアリング会社という位置づけになるでしょう。
オーナーエンジニアとプラントエンジニアは機電系エンジニアにとっては大きなテーマです。
いったん子会社化されても、時が経てば親会社に戻ったり合併されたりします。
- 単純作業ではなく知的作業
- メーカーやドラフトマンなど外部に委託できて、付加価値が低い
ドキュメントコントローラー
ドキュメントコントローラーとは文書管理に関するマネジメントをする人のことです。
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一言で言うとエンジニアの総務版です。
化学プラントの機械エンジニアでは膨大な量の書類を扱います。
プロジェクト規模だと、本棚2~3台は制覇するボリュームです。
オーナーエンジニアの個々の仕事でも、エンジニアリング資料はキングファイル1~2冊のボリュームになります。
この量を管理するのは、実際にはかなり煩雑です。
やってできなくはないですが、できれば解放されたい
こういうエンジニアは非常に多いです。
人件費の安い外部の人にアウトソーシングしようというのが、ドキュメントコントローラーという発想です。
ファイル整理やデータ整理は本来はエンジニアの業務です。
- エンジニアにドキュメントを管理する能力や発想がないから
- エンジニアが日々の業務処理能力が遅いから
ドキュメント管理が後回しになっているために、ドキュメントコントローラーが必要というのが現実です。
ドキュメントコントローラー側からすると、良いビジネスチャンスといえます。
- 決まった仕事をこなすだけなので純粋な単純作業
- 単純作業の割合が多く付加価値は低い
ドラフトマン
ドラフトマンはCADを使って製図をする人と言っても良いでしょう。
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図面屋さんという言い方もします。
P&ID・配管図・土建資料などのプラント建設に関わる工事資料を作り、現場で施工会社に説明をし、ラインチェックもする。
設計の補助という位置づけですが、補助という枠組みには収まらないでしょう。
製造部のスタッフとオペレータの関係に対して、機電系エンジニアのスタッフとドラフトマンという位置関係が正しいと思います。
製造部のスタッフとオペレータは社員でありながら、機電系エンジニアのスタッフだけが社員でドラフトマンが外出しされる。
これは、組織上の問題であって個々人の能力の問題ではありません。
というのもドラフトマンの学歴や能力を見た場合に、製造部のオペレータと大差ない場合が多いからです。
同じように高卒・高専卒で就職先が違っただけ。
小さなプラントではオペレータもドラフトマンも同じ高校出身とか同級生なんて話すらあります。
その会社でエンジニアリングの能力を担保するのに欠かせない存在です。
本来なら外出ししない方が良い部門。
- 3次元的な思考が必要で知的労働の側面はある
- 単純作業の集まりだが、成果物の量が圧倒的なため付加価値は高い
施工会社
施工会社はプラント建設やメンテナンスを行います。
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製造部のオペレータではできないような力作業や危険な作業を行ってくれます。
3K作業であって、募集しても人が来なくなってきています。
メンテナンス・仕上屋はプラントの安全安定運転に欠かせない存在です。
外出ししている作業者を社員として抱える動きもあります。
- 指図書に従って作業するので単純作業
- 安全安定運転・人材不足という視点で付加価値が高くなっている
社内SE
社内SEが外出しされる場合があります。
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「SE」という単語自体に外出しという印象が結びついているイメージもありますね。
ITドカタという単語もあるくらいですし。
それくらいSEの仕事を単純作業だと「馬鹿」にしてしまっている人が、経営層にいるということ。
これは経団連のトップがパソコンでメールを使い始めたのが2018年というニュースからも推定できるでしょう。
最近流行りのDXでSEが必要だと見直されて、出戻りするケースもあるようです。
都合がよく振り回しているように見えます。
- 既存システムを流用することが多いので、単純作業に近い
- 業務効率化など得られる付加価値が高い
- とにかくDXで目立っている
分析
化学プラントでは分析も外出しされやすいです。
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化学プラントで生産される各バッチの工程分析・製品分析などの作業です。
品質保証の意味で製造部と組織を分けるべきです。
とはいえ品質保証の社員が、決まりきった分析作業をするのはちょっともったいないです。
少しでも人件費をカットするためには、単純作業要素を外出しするというのはありがちなこと。
これは今に始まったことではありませんね。
- 作業方法が固定化されているので単純作業
- 品質保証として価値がはあるが付加価値は低い
物流
工場内の物流部門も外出しされやすいです。
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原料・資材の敷地内への入出庫、プラントへの運搬などの物流業務ですね。
生産スケジュールに合わせて発注計画を立てて納期管理をする仕事なので、単純作業と言い切るのは難しいですが、
付加価値が高いわけではありません。
経理や調達と同じような感覚で扱われる可能性もありますが、現場作業がある分だけ外出しされやすい部門です。
- 生産計画に従って作業するので単純作業に近い
- 生産安定上欠かせないが付加価値は低い
事務系全般
事務系全般も外出しされやすい部門です。
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経理・人事・調達あたりが工場ではターゲットになります。
これらの部門のうち「低付加価値」の部分ですね。
経理なら固定資産管理、人事なら給与計算、調達なら汎用品関係
外出しできる部分は積極的に外出ししているイメージです。
海外に子会社を作って外出しするケースが一時期流行りましたが、これはそろそろ逆転現象が起きるでしょう。
日本の価値が下がってきていますからね。物価も労務費も相対的に低くなってきて、外出しするメリットが少なくって来ています。
DXなどで○○システムの導入などが叫ばれていますが、DX以前からシステム化と外出し化が進んでいる部門でしょう。
- 情報を集め持つ管理者は知的活動の割合が高い
- 単純作業の割合が多く付加価値は高くはない
アウトソーシング(outsourcing)される人の特徴
社員として採用されたけども、アウトソーシングされる部門に出向する人の特徴を紹介します。
複数人の例を見てきましたが全体的に当てはまる特徴です。
言語化が苦手
アウトソーシングされる人はたいてい言語化が苦手です。
言語化は物事の本質を見極める作業とも言えるので、極めて大事。
何を話しているか分からない・要領を得ないアウトプットしか出せない人は、外出しされやすいです。
言語化ができず、単純作業や図面などで成果を出すことになるでしょう。
外出しされるかどうかは運の要素が大きく、外出しを検討する事業環境にあったときに相対的に言語化能力が低いということが理由になります。
子会社に出向した50歳の人が言語化はそんなに悪くないのに、30歳の言語化が苦手な人が親会社に残っているなんてケースはありますね。
この場合で30歳の言語化が苦手な人が運よく60歳まで親会社で勤めれる場合もあります。運ゲーですね。
目の前のことしかしない
外出しされる人は目の前の仕事しかしません。
これは中長期的な視点に立って物事を見れない、視野が狭い、全体を見ようとしないという言い方もできます。
知的労働には欠かせない視点ですね。
単純作業の場合、日雇い労働と同じくその日に行う作業が決まって対応することが多いです。
機電系エンジニアリングでも振り回されてばかりで受け身の仕事をする人は、要注意です。
1年先2年先のことを考えるのは、それだけで高度なスキルでしょう。
独断で進める
外出しされる人は独断で仕事を進めがちです。
そこにちゃんとした判断根拠があって説明ができて覚悟もできるのであれば、許されるかも知れません。
でも良い印象は抱かれないでしょう。
というのも化学プラントでは失敗したらダメージが大きいから。
人は間違うものです。
複数の人のチェックをすることでミスの確率を下げることを基本としています。
そんな中で、言語化もせず独断で危険な作業をされるとチームへの悪影響が出ます。
- 運転ならバルブの開閉だけで危険な状況になります。
- エンジニアリングなら安易な回答が、成果物の質・予算・工期などに影響を与えます。
アウトソーシング(outsourcing)で本来業務に特化する
アウトソーシングをする目的は、社員にとって価値の低い仕事を外出しして、高付加価値の仕事に特化して欲しいからです。
考えることに全力を費やしてほしいからです。
ロボットではできない知的活動に集中して欲しいからです。
ただでさえAIなど知的活動っぽい成果を出す機械が出ようとしている現在。
考えることを止めた人は単純作業をしてもらうしかないでしょう。
これはユーザー系エンジニアリングに向けた言葉です。
考えもせずに来た仕事を外部に流し、上がってきた仕事を上に上げる。
これでは何の付加価値も生まれません。単なる窓口です。
依頼先の人が依頼主よりも言語化能力の高い場合は、役割が交換することもあり得ると思います。
その危機感を私は持っています。
それくらいオーナーエンジニアの質が低下しているということです。人材不足。
最後に
化学プラントでアウトソーシングされる部門や人材について解説しました。
機電系エンジニア・ドラフトマン・ドキュメントコントローラー・施工会社・社内SE・分析・物流・事務系
時代によって部門の価値が変わり、出向や出戻りなど意外と激しく動きます。
個人としてはスキルを高めて付加価値を作り出す方向で努力するしかないでしょう。
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