法律法規は日常生活でもあらゆるところに関わっていますよね。
法律を意識する機会は少ないでしょうが、法律での規制だらけ。
規制は悪いものではなく、良いものです。みんなを守るためにあります。
化学プラントも公衆の利益のためだけでなく害悪となる可能性を秘めているからこそ、規制をしないといけません。
法律なんて知らない!
なんて言えません。
機電系エンジニアとして化学プラントに関する法律でも最低限知っておくべき基本について解説します。
バッチ系に限定して、しかもエッセンスだけを相当絞り込んでいます。
保安3法とその他法律
さっそくですが、化学プラントの設計・建設・運転等で関わりが深い法律を並べていきます。
- 消防法
- 労働安全衛生法
- 高圧ガス保安法
- 石油コンビナート等災害防止法
- 工場立地法
- 建築基準法
- 環境基本法
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
- 毒物及び劇物取締法
- 電気事業法
- 計量法
- 航空法
いっぱいありますよね。
これだけではありません。もっとあります。
これらの法規には下位に様々な規定や規則があります。
一度に全部を覚えようとせず、重要なものから理解していきましょう。
特に保安3法と呼ばれる消防法・労働安全衛生法・高圧ガス保安法は大事です。
消防法
まずは消防法から。
化学プラントの機電系エンジニアが最も関りのある法律です。
製造部にとってもとても大事。
他の法律はさておき消防法だけは詳しくなっておいた方が良いです。
いろいろな区分はありますが、以下の3つは特に重要と思います。
消防法は化学的に危険なものを規制しようという思想で見れば、分かりやすいと思います。
危険物製造所
化学プラントのは基本的に消防法において危険物製造所という位置づけになります。
この危険物製造所に関して、消防法では様々な制約が課されています。
製造所・取扱所・販売所という区分や設置申請・変更許可申請というような申請方法など体系も複雑ですが、危険物製造所という基本ワードは最初に押さえておきたいところです。
実務をこなせばこなすほど、危険物製造所という意識を持たずに仕事を進めていきがちなので・・・。
20号タンク
消防法の中でも20号タンクは機械エンジニアが最も関わる部分です。
消防法の危険物を取り扱う機器は一般に危険物機器という制約を受けますが、それよりもさらに高い制約として20号タンクという制約があります。
この20号タンクや危険物機器という基本ワードも押さえておきたいところ。
これらを意識することなく20号タンクばかり取り扱うので、徐々に忘れがちです。
20号タンクでは例えば以下のような制約があります。
- 材料
- 板厚
- 計器
- 保安装置
他に色々な制約があり、地域の所轄官庁によってさらに細かい制約を加えられることもあります。
消防法に詳しくなるだけでも、機電系エンジニアとしては相当仕事がしやすくなりますよ。
消火設備
消火設備も機電系エンジニアの腕の見せどころ。
水噴霧消火設備などの直接火を消すための消火設備そのもの、火報などの電気設備、避難はしごなどの付属設備。
いろいろな消火設備が消防法の制約を受けます。
設備の増改築を行うたびに消火設備の見直しが必要になりますが、プロセスには直結しないためにプロセスエンジニアが見落としやすい設備です。
ラング係数で適当に見積をしていて詳細見積をしたときに金額がアップした場合は、消火設備を疑うと良いでしょう。
ラング係数では消火設備まで含めていなかったりしますからね。。。
労働安全衛生法
労働安全衛生法は化学プラントに限らず製造業や一般の会社でも労働が発生する場所で適用されます。
化学プラントの機電系エンジニアにとってはちょっと認識が薄いでしょうが、世間一般には大事。
消防法と同じように区分が多いですが、重要なものを3つ取り上げます。
労安法は化学に限らずとにかく危険なものを規制しようという思想で見れば、分かりやすいと思います。
圧力容器
機電系エンジニアに最も関連が深いのが圧力容器です。
第1種圧力容器・第2種圧力容器と言えば気が付くけど、それが労働安全衛生法の中の制約だったとは意識していなかったりします。
以下の定義は押さえておきましょう。
- 第一種圧力容器:大気圧を越える気体が発生する設備
- 第二種圧力容器:200kPaを越える気体を保有する設備
第二種圧力容器はともかく、第一種圧力容器はできるだけ少なくしたいものです。
製作・検査などいろいろな部分にコストが掛かるので。
第一種圧力容器は消防法よりも厳しい規制だと理解しておけば基本的にはOKです。
バッチ系化学プラントでは第一種圧力容器の適用を受ける機器は非常に少なく、だからこそ一度も関わることなく会社人生を終える人もいます。
おそらく私はそうなります。
化学設備ほか
機電系エンジニアとしては労働安全衛生法では圧力容器以外の設備も触れることがあるでしょう。
例えば、化学設備・ボイラー・クレーンなど。
化学設備は、労働安全衛生法の危険物を扱う設備です。
労安法危険物は消防法危険物より包含種類が多く、気体も含んでいると考えれば良いと思います。
消防法の危険物機器と似たような位置づけで考えればいいでしょう。危険。
ボイラーは蒸気を発生させるもの。
高圧高温であり事故が起こりやすいのでとにかく危険。
蒸気を大量に扱う化学プラントでは、おなじみのもの。
クレーンも事故が起こりやすいので危険。
バッチ系化学プラントではクレーンというよりホイストの方が身近。
原料や製品に粉体が多く、フレキシブルコンテナでの取り扱いが多いからこそ、重たいフレキシブルコンテナを吊り上げるためにホイストを使います。
吊り荷の下に人が入って吊り荷が落下して事故が起こった、という例は非常に多いです。
死亡リスクが高い環境を一瞬で作れてしまうのがクレーン類。
工事
労働安全衛生法では工事関係の規制もされています。
当たり前と言えば当たり前。
重たい物を取り扱う、高い場所で作業する、暑い場所で作業する、火や電気を取り扱う・・・
いずれも事故が起こりやすい状況です。
規制を掛けるのは当然。
規制の網を掻い潜って省略作業をする人が後を絶ちません。
一度大きな事故を起こして反省しても時が経てば忘れ去られてしまうもの。
設備と違って規制や制御がしにくいのが工事でしょう。
工事に関わる人は消防法よりも労働安全衛生法に詳しい方が良いかも知れません。
それくらい労働安全衛生法の重要度が上がっていっています。
高圧ガス保安法
高圧ガス保安法は高圧ガス設備という意味で大事。
とはいえ・・・
バッチ系化学プラントではほとんどお目に掛かりません。
1MPaを越える圧力のガスを取り扱う設備
こんな条件はほぼありません。
1MPaを越える条件で反応することがほとんどないからこそ、バッチ系化学プラントではレアな設備です。
高圧ガス設備は消防法よりも厳しい規制があると思っておけばOKです。
第一種圧力容器と同じ程度でしょうか・・・。
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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
バッチ系化学プラントの機電系エンジニアが知っておくべき法律について解説しました。
法律体系でも基本的な部分を絞り込んだ内容ですので、初心者が知っておくべきことです。
とはいえ、実務をこなしていくとこの基本が忘れ去られがちなので、中級者も今一度見返してみると良いかも知れませんね。
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