苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)は化学プラントで広く使用される重要な液体です。しかし、強アルカリ性で低温では固化する特性を持つため、設備設計には注意が必要です。
この記事では、タンク・ポンプ・配管の選定ポイントを中心に、安全性と効率を両立させる苛性ソーダ設備の設計方法を整理します。実績がとても多くても増設や更新する機会がなければ、ゼロから設計するときに意外と難しいと感じることでしょう。
フロー
まずはフローを紹介します。

硫酸設備と考えている構成は全く同じです。タンクに苛性ソーダの水溶液を受け入れて、ポンプでユーザーに送る構図です。内容物が違うだけで似たような構図ができる、屋外タンク系の設計は最初にちゃんと学ぶと後はとても楽になります。
苛性ソーダの特徴
苛性ソーダの設備設計をするうえで、その特性は知っておく必要があります。
- 強アルカリ性
- 水溶液の濃度が何種類かある
- 水よりやや重たい
- 低温で固化する(48%水溶液で10℃程度、25%水溶液で-15℃程度)
- 人体に影響を与える(皮膚・眼などに損傷を与える)
硫酸が酸性の代表物質としたら、苛性ソーダはアルカリ性の代表物質です。万が一、触れてしまうととても危ないので、取扱時は慎重にする必要があります。(他の化学物質も似たようなものですが)
極端に言うと内容物の特性を調べずに、既存と同じ設計をしても設備は完成してしまいます。それでは後の設計に活かすことは難しいでしょう。
タンク
タンクは大気圧タンクを使います。鋼製SS400で十分大丈夫です。ユーザー側ではSUS304の小型のバッファタンクで受け入れることもありますが、供給元は大容量のタンクなので、無理してSUS304にする必要はありません。
25%の苛性ソーダなら冬季に固化することはありませんが、48%の苛性ソーダなら固化します。そのためトレースなどの加温設備が必要になります。
SUS304でトレースを付けると局所的な加熱や溜まりが腐食を促進する可能性があります。その意味でも無理する必要はないと思います。
トレースなしの設備で冬季中はずっと循環を続けて、固化しないように乗り切ろうする人もいますが、あまりお勧めはしません。(やって痛い目をみました)
ポンプ
ポンプはキャンドポンプなどの漏れが少ない物を選びましょう。SUS304のキャンドポンプは汎用的ですので、これがおススメ。
人に対するケアが最優先です。渦巻ポンプだとフラッシングをケアする必要があったり、水が必要になって苛性ソーダの濃度が変わったりなど、トラブルのもとになります。無理しない方が良いでしょう。
25%苛性ソーダなら、マグネットポンプも悪くはありません。48%苛性ソーダならジャケット付きにする必要があるので、マグネットポンプは辞めておいた方が良いです。
固化するかどうかでポンプの選択肢を変えることができる点がポイントです。水よりも比重が大きいので、ポンプ設計上は圧損計算など圧力関係は少し注意しましょう。電流値が予想よりも高い・圧力計指示値が予想よりも高いという時は、比重をケアしてなかったという場合が多いです。とはいえ比重が1.2程度なので問題になる確率は高くはありません。
配管
配管は、SGPやSTPGなどの汎用的な鉄製配管が良いでしょう。繰り返しになりますが、ユーザー側ではSUS304の配管にしても良いです。手前にストレーナーを付けておいて、鉄の錆などの異物を系内に持ち込まないようにするためです。
ガスケットはフッ素樹脂がおススメです。とにかく無難です。汎用のジョイントシートでも一部は使用可能ですが、使えない場合もあります。機能性の高いジョイントシートなら苛性ソーダにも使えるものがありますが、単独で選定することは長期的なメンテナンスでは混乱を招きます。
ガスケットの使用種類はなるべく統一させる方がよいので、フッ素樹脂系が良いでしょう。これを言うと、ユーティリティ系も、ジョイントシートではなくフッ素樹脂でも良い気がしてきます。
ボルトナットは普通のSS400で大丈夫です。
参考
特定の液に対してプラントの系列を設計する方法は、プラント建設や大規模プロジェクトクラスでないとなかなか経験することができません。以下のような書籍で少しでも勘所をつかむことが、習得を早めることになるでしょう。
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最後に
苛性ソーダ設備は強アルカリ性・低温固化・人体への影響など、液体特性に応じた設計が不可欠です。タンク、ポンプ、配管の選定を正しく行うことで、安全で効率的な運転が可能になります。化学プラント初心者でも、このポイントを押さえることで、苛性ソーダ設備設計の基礎をしっかり理解できます。
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