カートリッジフィルタは、化学プラントでよく使う設備です。
ハウジングも含めてそれなりに設計する要素はありますが、メーカー任せになってしまう部分もあり、設計思想が残しにくいことが1つの課題です。
多くの場所で使うフィルタだからこそ、機種の統一化・予備品の適正化・代替品の調達可能性などメンテナンスを意識した設計をしたいところ。
どこに注意すれば良いのかをまとめてみました。
濾過精度
濾過精度はフィルターの最も大事な指標です。
公称精度で議論することが多く、例えば1μmの公称精度なら、1μm以上の大きさの個体をキャッチできるフィルターを想像すればいいです。
実際には、公称精度と実際にキャッチできる径は1:1で対応しませんが、大体このくらいまでは可能という目安になります。
実際に使ってみて処理液の分析をしたうえで良くなければ、1サイズ細かいフィルターを選ぶという方法で良いでしょう。
こういう選定をするためにも、汎用的なフィルターサイズにしておくことが望ましいです。
逆に、事前テストをするなど濾過精度を細かく選定する時は、長特殊な例だと考えましょう。
そういうテストをメーカーでするのが嫌だから、ユーザーで何通りも試せるようにしておいた方が安心です。
材質
材質はカートリッジフィルタの重要な要素の1つです。
カートリッジとハウジングに分けて考えましょう。
カートリッジ
カートリッジの材質はポリプロピレンが一般的です。
金属フィルタやPTFEフィルタもありますが、特殊な例です。
水や腐食性が高くない液体のゴミ取り用にはポリプロピレンが大活躍します。
いつでも交換できるように予備を持っています。
ハウジング
ハウジングの材質はSUS304やSUS316Lが一般的です。
Oリングの材質はFKMが世間的には一般です。
化学工場ではFKMが使えない薬液が結構ありますので、できるだけPTFEを選びましょう。
長さ
カートリッジの長さは設計上の重要な指標となります。
inch単位で、10″(250mm),20″(500mm),30″(750mm)の3パターンが有名です。
一応、他のサイズも存在します。
inchとmmで数mmの差があっても使えますので、心配しないでください。
カートリッジ長さは、使用流量と濾過精度で決まります。
使用流量が多いほど濾過精度は小さいほど、長さを増やすか本数を増やさないといけません。
カートリッジ1本あたりの圧力損失が一定以上にならないようにするためです。
本数を増やすにはハウジング寸法を大きくしないといけないので、注意が必要ですね。
端面
カートリッジの端面形状はいろいろあります。
最もシンプルなのがDOE(ダブルオープンエンド)という形状です。
汎用性を考えると、よほどの理由がない限りDOE一択です。
いろいろな場所でフィルターは使うし、メーカーも型式を変えるので、長く使えるものが良いですね。
固定
カートリッジフィルタの固定方法は設計要素の1つです。
金具個数
カートリッジはハウジング内部にある仕切板と上部金具とで固定をします。
仕切板から上部に向かって棒が伸びていて、棒の先端部がねじ切りされていて、ナットなど固定金具を付けれるようにしています。
カートリッジを仕切りの棒に差し込んで、固定金具で挟み込んで固定完了。
金具の個数で2パターンあります。
金具1つで大きな蓋を締め付けてフィルター全数を固定する方法と、1つの金具で1つのフィルターを締める方法があります。
私は後者の1金具1フィルターのタイプしか使っていません。
確実に固定できる方法を好むからです。
漏れがあまり気にならない場合には1つの金具で全数固定しても良いでしょうが、フィルター本数が多くなるほど固定する力が弱くなるので注意しましょう。
金具
固定金具も2パターン程度あります。
左のタイプはフィルター端面に対して円周上の線で金具を押しつけます。
設置面積が小さいのでシール性は上がります。
再利用しようとしても、すでに変形してしまったフィルターの円形の溝部に金具を再セットするのが意外に難しく、再利用は難しいと考えましょう。
右のタイプは、同心円の面で金具を押し付けます。
再利用しやすく、私はこのタイプが好みです。
取出
取出方法を考えるのはカートリッジフィルターにとって大事です。
作業台
フィルターの取外しは危険な作業です。
というのもフィルターにはプロセス液が付着している可能性があり、薬傷などのリスクがあるからです。
安全に作業ができるようにできるだけの対策を取ります。
作業台は、フィルターを取り外し終わるときに、フィルターが顔よりも低い位置になるようにしましょう。
フィルターはプロセス液を吸って重たい場合がありますので、吊り上げレールを検討しましょう。
チェーンブロックが付くレールなら何でも良いと思います。
ハウジングの蓋も重たいので、チェーンブロックで上げ下げできると良いですね。
蓋をヒンジで固定できる場合もありますが、フィルター取り外しがかえって難しくなるかもしれませんので、私はヒンジ固定は使っていません。
ボルト
カートリッジを取り外すには、本体フランジを外さないといけません。
フランジを固定するのはボルトナット。
何も考えなければ普通のボルトナットを使いますが、私はスイングボルトを基本にしています。
というのも落下してハウジング内部に入ったりしたら、後で面倒だからです。
スイングボルトでナットも完全に落ちないようにして、ナットをある程度緩めたらボルトが外せる構造が良いです。
ハウジングノズル
ハウジングノズルの典型的なパターンを示しましょう。
液抜きと圧抜きができる構造なら、基本的には問題ありません。
ドレンやベントをフランジ接続にするかねじ込み接続にするかは、会社の思想によって分かれるかもしれませんね。
液入口や出口を工夫して、液抜き口を付けないで済む場合もあります。
参考
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最後に
カートリッジフィルタとハウジングの設計の考え方を紹介しました。
濾過精度・材質・長さが重要な要素ですが、端面形状・固定・取り出し方法など意外と考える要素が多いです。
プラント内で多く使う設備なので、できるだけ思想を統一させて、長いこと使いたいですね。
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