流体力学の層流境界層と乱流境界層について解説します。
大学で学習したときは何となくしか理解しておらず、式変形だけを追っかけていた記憶があります。
化学プラントのような流体力学を良く使う分野のエンジニアとしては、層流境界層と乱流境界層がイメージできている方が良いでしょう。
ところが、教科書では結構わかりにくい感じがします。
層流境界層と乱流境界層の違いがパッとイメージで分かるように解説しようと思います。
層流境界層
まずは層流境界層について解説します。
下の図のような壁面の上部に流体が流れている状況を考えましょう。
イメージとしては排水溝の中を水が少量流れている状況を、横から見た感じです。
この流れは高さ方向に、壁面・層流境界層・層流という3つの部位ができます。
壁面は動く物がないので速度ゼロの状態です。
一番上部の層流は、均一な速度v1で横方向に流れている状態です。
層流状態では、横方向の流れはあっても上下方向の流れはない(流体の交換がない)と考えます。
速度ゼロの壁面と速度v1の間が不連続に変わることは一応は存在しないので、何らかの繋ぎ目が存在すると考えます。
これが層流境界層。
層流と壁面の境界にある層だから、層流境界層。
そのままです。
乱流境界層
層流境界層があれば乱流境界層もあります。
考えている状況は層流境界層と同じです。
乱流境界層の場合は速度が違います。
一般に層流か乱流かの分かれ目は、同じ流れの環境なら速度で決まります。
速度が遅い方が層流、早い方が乱流です。
乱流状態では、壁面・乱流境界層・乱流という3つの部位からなります。
乱流と壁面の境界層だから乱流境界層。
そのままです。
上下の交換
乱流では層流とは違って液体は上下にも動こうとします。
実際に日常生活で水の流れが観察できるような場所では、ある点から別の点に向かって直線的に綺麗に流れるようなことは少なくクネクネ曲がって流れようとします。
横方向にも上下方向にもクネクネ。
これが乱流のイメージです。
むしろ、層流の方が遥かにレアケース。
境界層厚み
乱流境界層の場合には、境界層の厚みを少し考えます。
境界層は乱流と壁面の状態が変わる(遷移する)部分です。
いきなりですが、乱流の平均速度v2が大きいほど、壁面速度ゼロとの差が大きくなるので、遷移するために必要な厚みも増えそうな感じがしますよね。
速度が急に不連続に変わることはありえないからです。
これが境界層厚みとして効いてきます。
つまり、乱流境界層は層流境界層よりも厚みが大きいです。
配管内を液が流れるときに速度を無限に上げようとしても実際にはできません。
これは乱流境界層が存在するからで、配管内が乱流強化層だけで占められている状態がその配管の流量限界となります。
乱流で速度が速い部分があるときに、壁面速度0との差を埋める形で流体が壁面方向にも回っていこうとするイメージで考えても良いと思います。
実際にはもっと複雑な流れですが、速度差が大きいために上下方向の流れが起きるということをイメージするためには、こういう簡単な状況を考える方が分かりやすいと思います。
この上下流れやによる交換という部分は、粘度の概念と深い関係があります。
層流でも境界層厚みは流速による差が出てくるはずですが、そもそも層流の流速自体が小さいので、変わらないとみても実用上はOKです。管内の流れなら、境界層を無視して均一に同じ速度として計算することが実務では普通です。
境界層はいろいろ
層流境界層と乱流境界層は、単に速度の違いの境界層を示したものとして考えても良いでしょう。
たまに計算式を解くような大学院入試の問題もありますが、そればかりをしていると大事なことを見失ってしまいます。
それが「境界層はいろいろな物性に適用できる」ということ。
層流境界層と乱流境界層は流体の速度という点に着目します。
例えば温度も境界層という概念があります。
U値など伝熱計算時に境膜伝熱係数という概念が出てきます。
これは温度の境界層そのものです。
流体の境界層とかなり似たイメージで捉えていればOKですが、温度と流速が同じ関係にあるわけではないので別物として把握した方が良いでしょう。
同じように流れがある場所では、物性に関わる境界層の概念がいくつも出てきます。
全部を理解する必要はなく、むしろ速度と温度くらいで十分ですが、境界層という考えが広く使われるということを知っていれば十分と思います。
参考
境界層の勉強は流体力学でも少し応用的な部分です。
プラントエンジニア的には知らなくても実際にはほぼ仕事ができてしまいます。
圧力損失を深く考える時に、境界層のイメージがあれば多少便利かもしれないという程度でしょう。
勉強をさらに深める場合には、以下のような本を参考にしてください。
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最後に
層流境界層と乱流境界層の違いをイメージするための解説をしました。
層流と乱流は速度によって決まり、速度ゼロの壁面との間の境界層が、層流と乱流で違うという話です。
乱流の場合は上下方向の流れを考えたり、境界層厚さが変わっていくなど少し考慮が必要です。
速度に関する境界層以外にも、さまざまな物性で境界層という概念が実は登場します。
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