化学プラントの建設をするときは、大きな仕事をしているという目の前の事実にやりがいを感じやすいです。
建設では往々にして立ち上げまでの短い期間(2~3年)の部分しか見えておらず、以降の何十年と続く保全の部分を見ない人だらけ。
連続プラントなら問題にならないような問題でも、バッチプラントなら問題になりやすい点があります。
どんなことが困るのかまとめて見ました。
設備の標準化かできない
プラント建設の設計では、目的のプラントの運転条件を最適化するための、設備設計がなされやすいです。
昔は、プラント建設では担当者のエゴを1つは盛り込むこと、というようなことまで言われていました。
これはプラント設備の技術が時々刻々レベルアップしていた時代で、新しいものを取り込まないと時代に遅れてしまうという危機感があったからでしょう。
今ではで設備の技術なんてほとんど変わりません。
保全のことをもっと真剣に考える時代。
設備の仕様(タンク容量・伝熱面積・ポンプ流量など)を揃えてしまうことは、非常に重要です。
プラントライフサイクル的な思想です。
プラントでトラブルがあった時、仕様を統一化していたら近くにある使っていない設備や、倉庫に確保している設備を使える可能性があります。
建設時にオリジナリティを出し過ぎていると、能力が足りなくて使えないなんてリスクが発生してしまいます。
立ち上げのリスクを考えてそのプラントだけに適した設備にするのと、運転のリスクを考えて設備の仕様を統一化させること、オーナーエンジニアの立場だと後者が重要なことは明らかです。
しかし、実行段階になると視野が狭くなって前者に偏ってしまい、後の保全が困ります。
連続プラントの場合、世間で広く知れ渡っている製品など限定されたものだけが、標準化の対象となるため、標準化という思想はあまりないはずです。
バッチプラントの場合、立ち上げたときは特定の製品でもすぐに他の製品が入ってくる可能性があります。類似プラントの数が多ければ多いほど標準化のニーズは高くなります。
1プラント単位の将来性しか考えない
プラント建設の場合、そのプラントを建てる場所で将来用地として空地を考えたりします。
プラントを建てたときには、次の増産計画があるから段階的に投資しようとして、とりあえず空地を確保するという考え方です。
短期的には問題ありません。
何も考えずに空地がなく、ギシギシに配置されているよりは。
しかし、これはそのプラントのことだけを考えた狭い思想。
事業所レベルで考えた場合の最適化にはなっていません。
古いプラントが立ち並んでいてスクラップアンドビルトをしたいのに、その場所がプラント建設側に取られてしまう可能性があります。
早いもの勝ちで空地を確保するものではないはずですよね。
プラント建設だとなぜか、早い者勝ちが許される雰囲気があります。
連続プラントだと標準化という流れに持っていきにくいので、将来計画はプラントとそこに紐付く製品だけを見れば良いでしょう。
バッチプラントだと、新たに建てたプラントの他の製品を持ってきたり、逆に他のプラントに新プラントの製品を持っていったりと流動的です。
変に空地を確保しなくても、結果的に何とかなってしまうという場合もあります。
何をもって将来性とするか、連続とバッチではちょっと違いますね。
設備の交換ルートを考えない
プラント建設だと設備の交換ルートは軽視されがちです。
交換コストが掛かるので、それなりにルートを考えたとしても、現実にはそのルートを採用しないで別のルートから交換したりします。
結果的にコストも時間もかかってしまいます。
プラント建設の時に、工事を良く知る人が紙面上でしっかりイメージを持ち、それを言語化して設計に反映させるということは、かなり難しいでしょう。
かといって、設計者が工事の実態を知るにはかなりの経験年数が必要です。
そうして、交換コストを考えないプラント建設ができあがります。
10年20年経つまでは問題視されません。その時になって初めて恨みの声がでてきます。
連続プラントでも交換コストの話は出てきますが、標準化を考えないで済むため、交換にかかるコストや費用も、運転継続のために不可欠と認められやすいかもしれません。
バッチプラントの場合、他のプラントでも生産できてしまうので、メンテナンスの費用が高いプラントは後回しにされます。
バッチは難しい、というか面倒ですね。
他プラントのトラブルが反映されにくい
プラント建設をしている間、他プラントのトラブルの情報が一時的に入りにくくなります。
大きなプロジェクトに付きっきりになることを許されるので、外乱となる情報をシャットアウトしてしまいます。
この意味で気楽に仕事ができます。
他プラントの類似設備で起こったトラブルを、プラント建設側にも反映させることが、安定運転のために大事なことですが、忘れ去られます。
もしくは時間がないと早くに諦めてしまって、後で改造すらできなくなる悲惨なことも起こりえます。
結果的に困るのは運転部門や保全部門。あとは、フォローする間接部門。
そう考えるとプロジェクトの担当エンジニアは抜擢されて気分がよく周りから注目されていると思いがちですが、実は周りからは白い目で見られているかもしれませんよ。
情報の蓄積とアピールを
建設担当をする人が気が付きにくいこれらの困りごとを、保全はどこかでアピールする仕組みが必要です。
事業化決心の少し前の検討段階で関わるべきです。
1担当に任せずに、多くの担当者の知見をまとめたデータベースを作り、都度アップデートすることも大事。
これらがない状態だと、建設担当者に一任することになって、結局は困ることになります。
その苦労を仕事だと割り切っていられる余裕は、どんどん無くなっていくでしょう。競争力のあるプラントほど、運転保全を楽にしようと改善しています。
同じように、建設段階の困りごともエンジニアは集めるべきです。
立ち上げたら終わり、次の仕事、とすぐに移るとノウハウが伝承されません。
参考
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最後に
バッチ系化学プラントの建設設計だけを考えると、設備の標準化ができなかったり、1プラントの将来性だけを考えたり、設備の交換ルートを考えなかったり、他プラントのトラブルが反映されなかったりします。
情報の蓄積とアピールが大事ですね。
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