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受注生産と見込生産の生産方式|化学プラントの場合

受注生産・見込生産 運転
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生産方式(production system)として受注生産見込生産について、化学プラントに関連する範囲で解説します。

製造業にいる人の共通知識と言っていいくらい大事なことですが、大手会社に居たら分業化されていて意識することは非常に少ないです。

化学プラントのオーナーエンジニアもしかり。

調達部が何とかしてくれるから大丈夫!という視線でいたらとても危ういです。

原料の調達以外にも、資材の調達や人の手配なども同じ考えでケアすべきこと。

この目線が養われてきたら、マネジメント層への昇格が見えてくるでしょう。

「私たちが作りました」のフレーム(農家)

受注生産

受注生産は、下記のいくつかの要因を含みます。

  • 顧客の注文に応じて生産
  • 都度設計するため繰り返し性は低い
  • ロットは小さい
  • 在庫を持たない
  • 汎用設備を使う
  • 納期管理・生産資源の管理が大事

化学プラントで受注生産が当てはまる部分を見ていきましょう。

化学プラントの機械設備

化学プラントの設備ほぼ全てが受注生産に該当します。

典型例がタンク

タンクは標準仕様というのがあって無いようなもの。

JIS B 8265の圧力容器の計算などで基本的な思想は規定されていますが、詳細部分は個別設計となります。

型式指定ができず仕様書・データシート・スケルトンなどをもとに、設計図面を起こしていきます。

まさに一品設計

この業界では設計者の仕事が非常に大きなウェイトを占めます。

熱交換器もタンクに近いですが、相対的に自由度は低いです。

ブロアーも同じように受注生産に近いです。物によっては型式指定ができるので見込生産をしている場合もあるでしょう。

ポンプなどは型式指定していることが普通で、個別設計はもはや望めませんが見込生産をして在庫管理しているケースはなぜか少ないです。

金型だけ確保しておいて、モーター手配後にゆっくり作る印象です。

プロジェクト

プロジェクトも受注生産そのものです。

工事の内容が毎回変わるので見込みで生産できるはずがありません。

工事設計も現場工事もともに受注生産。

着工前後に設計者を手配するのも受注生産。

個別の工事のために膨大な時間をかけて配管図を作るのも受注生産。

資材から必要な部品を作り上げ、工場に組み上げていくのも受注生産。

機電系エンジニアリングそのものが受注生産と言っていも良いでしょう。

オーナーエンジニアの場合、設計者や図面屋さんを抱えていて毎年安定的に仕事をしています。

会社が設備投資にかける金額が安定していたら、最低水準の人員は確保しておこうとしますよね。

これは見込生産的な考え方です。

オーナーエンジニアリングで受注生産とか見込生産とか意識することはないですよね。

見方を変えて図面会社やプラントエンジニアリング会社にとっては純粋な受注生産です。

一部のエンジニアで意識しないのは、誰かが代わりに手配してくれるから。

せっかく製造業に勤めているのに生産という意識を持たずに長年過ごせてしまうのは、良いことばかりではありませんね。

骨格原料

原料でも骨格となる原料は受注生産になりがちです。

というのも受注者も発注者も少ないから。

バッチ生産で使う骨格原料はこの宿命を背負っています。

メーカーが数社もしくは1社しかなく、そこが駄目だったら生産できないというリスク。

自社で作っていた製品のプロダクトライフサイクルを考えて、中間体などを外部委託するというケースもこれに当てはまります。

研究

研究やも受注生産です。

研究は事業ニーズを受けて取り組むため受注生産。

工場の合理化や原因解析分析なども受注生産です。

見込生産

見込生産は、下記のいくつかの要因を含みます。

  • 不特定多数の顧客
  • 繰り返し性が高い
  • ロットは大きい
  • 在庫を持つ
  • 専用設備が多い
  • 需要予測・在庫管理が大事

化学プラントの生産

化学プラントの生産方式が見込生産になるでしょう。

見込生産量が増えるからプラント建設をしたり、減るから別の製品を導入しようとします。

需要予測・販売予測はまさに見込生産。

汎用設備部品

設備の中でも汎用部品は、見込生産となります。

  • ボール弁、ストップ弁などのバルブ
  • 鉄やステンレスの配管資材
  • フレキシブルチューブや圧力計などの汎用配管部品

これらは基本的に見込生産です。

プラントエンジニア的には「在庫に期待できる」資材です。

在庫が切れやすくなった現在では、見込生産の見込みが立っていなくて大慌てしている会社も多いでしょう。

現在でものんびりエンジニアリングをしている会社は結構問題です。

どこの組織かは具体的に言いませんが・・・。

汎用原料

汎用原料は見込生産です。

ペトロケミカル系の連続生産品が見込生産の対象になりやすいです。

アセトン・メタノール・硫酸・苛性ソーダなどは典型例ですね。

事務系業務

事務系の業務は基本的に見込生産です。

時期によって行うことは違っても、定型業務は見込生産。

突発的な依頼は受注生産ですが、普通は少ないでしょう。

事務系で突発依頼があるということは、結構な問題が起こっているということなので。。。

社員採用

新入社員の採用は見込生産と同じ考えです。

定年退職する人が毎年何人いるから、その分を補充しよう。

これを長期的なスパンで計画します。

見込生産ですね。

人材情報誌などで急に募集する場合は、見込生産ではなくて受注生産の可能性があります。

急なリストラ・退職・トラブルなどの可能性もありますが、プラント建設によるオペレータのニーズ増加もありえます。

保全は?

保全は真面目に考えれば考えるほど難しいです。

杓子定規に言うと受注生産

でも理想的な姿は見込生産

  • 製造部の注文にのみ従うという意味で受注生産
  • 設備の修理・保全という意味では繰り返し性が高く、見込生産
  • 設備が壊れた時のために予備品を持つため、見込生産
  • 汎用機械や消耗品を使うという意味で受注生産

かなり微妙な位置づけです。

TBMやCBMによって傾向監視をして、平準的なメンテナンスをできる見込生産スタイルを目指したいところですね。

参考

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関連情報を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

受注生産と見込生産という生産方式を化学プラントに当てはめてみました。

プラントエンジニアリング・製缶設備・バッチ製品・研究などは受注生産です。

汎用原料・連続生産・汎用設備・事務系業務は見込生産です。

保全は受注生産が多いですが、見込生産を目指したいですね。

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