カーボン熱交換器は、化学プラントのような腐食性の高い薬液を扱う場所で重宝します。金額は安く、伝熱性も良く、耐食性も高いからですね。
ところが、この設備を過信していると、思わぬところでトラブルに出会いかねません。しっかりしたメンテナンスや更新計画を立てて使うようにしましょう。SDMなどで分解して内部を見ないと、外見だけを見たら気が付かないかも知れませんね。
樹脂で持っている
カーボン式の熱交換器は、カーボンというよりも樹脂が性能を決めます。
腐食性が重要な化学工場では、カーボンという耐食性の高い材質に目がいきがちです。実際にはカーボン熱交換器のカーボンは気密性はなく、ガスや液が漏れる構造です。この微細な穴を埋めるために樹脂を含侵させています。
見た目は黒いカーボンで覆われていて強固そうに見えますし、外部を鉄でガードすることも可能なので、一見すると強度が高くて信頼性が高いように見えてしまうのがカーボン熱交。
実際には樹脂だけで作り上げた設備と言っても、おかしくはありません。フッ素樹脂ライニングタンクとFRPタンクの違いとニュアンス的には似ていると言って良いでしょう。
このギャップの違いを正しく認めるかどうかが、ポイントでしょう。
劣化に気が付きにくい
カーボン熱交換器は劣化具合が分かりにくいです。
漏れたら気が付くのですが、その漏れの前に異常を検知したいから定期的な開放点検を行うもの。その点検をしても劣化度を3段階程度で分類するくらいが限界で、いつまで持つかを定量的に判断するのはかなり難しいです。
樹脂補修などの方法もありますが、それで何年持つかも疑わしいもの。納期もそれなりに掛かるので、問題が起きて補修してから更新計画を立てていたら遅いかもしれません。更新タイミングを見図ろうとして、気が付いたら壊れてしまったということもしばしば。
こういう特徴があるから、特に重要な工程では予備を常時確保することが求められるのがカーボン熱交換器です。
樹脂の異物リスク
カーボン熱交換器は樹脂が含まれていて、樹脂が無くなると漏れるという特徴があります。
これって樹脂が最悪はプロセスに混入しているということです。プロセスに混入しない自信がある場合なら問題ありませんが、そうでもないのにリスク評価をしていない場合は要注意です。
製品に含まれてはいけない成分としてカーボン熱交の樹脂があって、それを評価してなかったから気が付いたときには含まれていた、という品質リスクは十分に考えられます。樹脂に合わせて微細なカーボンも混入してしまうかも知れません。この辺り、いつか問題になるかも知れないと思っていて怖いです。
割れる
カーボンはちょっとしたことで割れる特徴があります。
素人が金属材料と同じ感覚でボルトを締めたら、パキッと割ってしまいかねません。他にもこうぐをぶつけたり、周囲設備とぶつけたりしたら割れる可能性があります。
一見すると固そうに見えますが、意外にも割れやすいので扱いは慎重にしないといけません。
作業者の技能を疑うわけではありませんが、何かあった時のために予備を持っていた方が健全な運営になるでしょう。
漏れる
カーボン熱交の種類によっては、ちょっとしたことで漏れる可能性があります。
特にブロック型のブロック間を止めるテフロンシールは怪しいです。仕方なく使う場合でも、漏れたときの影響を正しく把握する必要があります。場合によっては、長期的な問題になることもあります。
導入時のコストが安いから、と飛びついてしまうと後で高い出費となりえるのがカーボン熱交換器です。
参考
関連記事
最後に
カーボン熱交換器は強そうに見えて意外と弱く、樹脂で持っているという構造は変わりありません。樹脂が漏れても気が付きにくく、異物ともなりえます。
取り扱いも注意が必要で、割れたり漏れたりするリスクがあるので、予備を確保しておくことが好ましいでしょう。
化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。
コメント