若い頃はモチベーションに満ちていたはずの仕事も、年齢とともにやる気を失っていく──。化学プラントで20年以上働いてきた技術者の私も、50代を目前にしてその現実に直面しています。
本記事では、私自身の経験から「なぜやる気がなくなってしまうのか?」を掘り下げ、化学プラントに特有の“変わらなさ”が技術者のモチベーションを奪う実態をお伝えします。
1位:規制が強すぎる
化学プラントで機電系エンジニアをしていて、最もモチベーションが下がったのは、規制が強すぎるということ。
特に防爆規制は有名ですね。
世間では新たな技術がいっぱい開発されていても、化学プラントでは一世代以上遅れてしか新たな技術が導入されません。
最近になってようやくカメラが導入される世界。
このほか、消防法などの法規による規制も少なからずありますし、作業者の使い方で変わる部分・コスト最小化とのバランスなど、とにかく思い通りにならないことだらけ。
若い時の自分はゼロベースで考えたいという想いはあったけど、答えは近くにあって類似設備から流用するのが最適。
そうして工場の考え方に染まっていきながら、より最適な案を見つけたとしても、若い製造課からは「既設と同じで」と否定されたりします。これも規制と言えるでしょう。
品質を変えるような設備はトライアル中なら1日ベースでいくらでもできても、いったん商業運転に入ると10年経っても変えれなかったりします。
とにかくガチガチに規制で固まっているイメージです。
機電系エンジニアとして完成するのはかなり時間が掛かり、40歳になるかどうかでやっとこの領域でした。
40歳になるまではモチベーションが維持できていたと思います、多分。
2位:変わらない仕事環境
規制が強いからという理由と関連していますが、仕事環境も変わりません。
とにかく本質的な部分は変わりません。
仕組みを変えようとしても、上司は面倒だから変えたくなく、部下は経験年数の問題からか変えたくないという風潮。
誰もが現状維持で良いと思っているような環境では、私のように変えたいという想いがある人はモチベーションが下がってきます。
同じ部署に長いこといると強く感じるもので、10年上も居ると駄目になりますね。出戻りも含めて。
3位:昇進しない
昇進しないことは意外とモチベーションに効いてきました。
特に管理職に上がるタイミング。
こう言われるのは確かですが、管理職と非管理職では扱いや持っている情報の違いなどがあり、事象に対するモノの見え方が違ってきます。
仕事環境が変わらないことに近いですが、昇進しないことは変わらないことに近い意味で、モチベーションが下がります。
給料とは関係なく、「同期のこの人は管理職なのに私はまだ管理職でない」などの数年程度の差を勝手に意識してしまいます。
学歴による昇進スピードの違いは、露骨なモチベーション低下ですよね。あとは転入者とか。
逆に早く昇進しても、「自分より頑張っていないはずの後輩が、自分と同じ時期に管理職になった」などの意識はしてしまいます。
気にしても意味がない・気にしないのが普通、と思っていましたが頭の中では出てきてしまうものですね。
あの人は何年入社で学卒だから、入社何年目で、そろそろこのポジションのはずだ、という話ばかりされる環境だと自ずと意識してしまうのでしょう。
4位:給料が上がらない
昇進しないと関連しますが、給料が上がらないこともモチベーション低下の1つです。
数千円しか給料が変わらないなら、どれだけ頑張っても意味がない。無難に仕事をしていればいい。
こんな風な思いが出てきても仕方ありません。
私の職場は、昇進したときに給料が一気に上がる仕組みで、昇進を伴わない昇給は額がすくないという精度。
昇進での給料の増額量を一度経験してしまうと、数千円程度の額では何も響かなくなってしまいます。
給料が上がっても、税金でたっぷり引かれるので、昇進してもしなくても同じことなのですけどね。
モチベーションが上がらなくなる理由としては十分でしょう。
5位:調整が多すぎる
社内の仕事で調整ばかりしていると、モチベーションが下がります。
誰でもできる標準化をして、人によって仕事が変わらないようにするためには、組織の役割や権限を明確にしないといけません。
調整業務を主にしている人にとっては、これが不満の1つになります。
全体が見えている人が調整業務をするのですが、見えているからこそ依頼先の人が細かい点に拘って仕事が進まなかったり、返事をしなかったり。
結果、とにかく面倒という感想になります。
6位:ハードルが高すぎる指示
ハードルが高すぎる指示は、モチベーションが下がる要因です。
私の場合、これはあまり大きな理由にはなりませんでした。
ハードルを徐々に上げてもらっていたのか、そもそも自分が勝手にハードルを上げ過ぎていたのか。
今の中堅~若手にとっては、これが最大の理由になってもおかしくありませんが、私はなぜか違いました。
それでも、ハードルが高すぎることはモチベーションを下げます。

ここは○○の設計思想を当てはめてね。あと、△△についてもちゃんと検討して。××についてはすぐにメーカーに確認。□□部にもついでに確認。あと・・・・

分かりました。▽▽します。

いや、だから、そうじゃなくて・・・時間が掛かるから、▼▼の方がよくて・・・・

あ~もう、無理。
個人の能力・経験に左右される部分が大きいですが、誰でも起こりえることですね。
参考
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最後に
化学プラントで20年働いてわかったことは、モチベーションを奪う最大の要因は「変わらないこと」でした。規制や組織文化に縛られた職場環境では、新しいことに挑戦する気力すら削られていきます。
それでも、変えられることがあると信じて、小さな改善から始めてみるしかないのかもしれません。同じような悩みを持つ方の参考になれば幸いです。
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