電力消費(power consumption)について考えます。
製造業で設備を導入する場合、ランニングコストは1つの検討対象になります。
メーカーの最終的な選定基準になることも。
この場合に、メーカーからこんな風に言われることもあるでしょう。
弊社の製品なら、ランニングコストデメリットが出ますよ~
メーカーが言っていることが正解の場合もあれば、間違っている場合もあります。
そんな時に自分の頭で考えられるようになるために、電気のランニングコストについて機械系エンジニアの範囲で知っておきたい基本を紹介します。
当たり前のことですが意外と考えていないので、知っているだけで有利になると思います。
合わせて、バッチプラントの消費電力が高い設備のランキングを独断と偏見で作ってみました。
電気容量が全て
化学プラントの電気料金やランニングコストを考えるときに、複雑な計算は不要です。
電気容量(kW)が全て
この通りです。
その装置の電気容量の大小だけでランニングコストを比較しても、ほとんど影響がありません。
検討している設備の電気容量を積み上げるだけ。
簡単です。
電気容量と電気料金とは実際には1:1の関係ではなく、例えばポンプのインバータで回転数を落としていたり、減速機などでのロスがあったりします。
これはプロセス運転では、実は大勢にはほとんど影響がありません。
ポンプのインバータで劇的に回転数を落とすくらいなら1サイズ小型の設備を使った方がいいし、減速機などの効率はほぼ無視可能なレベルだからです。
とにかく、電気容量の単純足し算で現場レベルではOKです。
具体的な例として、バッチプラントで電力消費の高い設備トップ5を紹介しましょう。
1位:冷凍機
バッチプラントレベルでは電気容量が最も大きい設備は、冷凍機です。
個人的には37kWを越えると要注意設備と認識していますが、冷凍機はこの壁をあっさり越えてくれます。
冷凍機のサイズが1つでも減ると、電気料金的にはメリットがすぐに出ます。
これはユーザーの熱負荷にそのまま直結するので、基本的には難しいでしょう。
電気容量×成績係数 = 熱負荷
という簡単な式で、成績係数は冷凍機ごとの差がほとんどないので、電気容量と熱負荷はほぼ1:1の関係になります。
冷凍機の能力をkWベースでみることは、設備という意味では分かりやすいです。
一方で、熱負荷に対する冷凍機能力を議論する時には、kWベースだと多少ややこしくなります。冷凍機の能力設計をするときはkcalベースが多いですが、これはプロセス物質の比熱がkcalの方が理解しやすいからですね(例えば水は1cal/g/Kとか)
冷凍機の電気容量については、kWとkcalのどちらかだけの議論にならないように、複数の目で見れるようになりたいですね。
2位:エアコン
バッチプラントレベルで電力消費が高い設備の2位に、エアコンがランクインします。
冷凍機が第1位ならエアコンは第2位と、結びついた人も居るかもしれませんね。
エアコンも冷凍機の1つと考えて良いものです。
熱負荷が、プロセス液なのか部屋の空気なのかの違いだけです。
液よりも空気の方が比熱が低いのですが、体積は反応器内の液と室内の空気では空気の方が多いので、
熱容量 = 比熱 × 質量
の関係から、空気を冷やす熱容量は相当高いことが伺えます。
化学プラントだと、省エネとしてはプロセス液側に注目が行きがちで、エアコンは必要だから削減余地なし。
という判断をされがちです。
エアコンの効率が少し上がるだけでも、電力消費が下がる可能性があるため、実は優先順位は高いです。
20年~30年前のエアコンを使い続けるくらいなら、新しい物に変えたいですね。
エアコンは24時間365日動くというわけではなく、春や秋は使いません。
この分だけ電力消費としては冷凍機よりも少なくなりやすいです。
3位:用役ポンプ
用役ポンプは電力消費がとても高いです。
これは単純に流量が大きいから。
バッチプラントレベルでは、プロセス液のフィードポンプは小型で済みますが、連続的に供給しないといけない用役ポンプは大型となります。
簡単に37kWを越えるポンプが出てきます。
24時間365日動かすことになるので、ポンプ効率が高くて電気容量が小さいほど有利です。
用役ポンプは更新機会も多いので、要チェックですね。
4位:ブロアー
ブロアーは意外と電力消費が高いです。
比重が水よりも空気の方が圧倒的に小さいから無視可能だろうと思うかも知れませんね。
ところが、風量が多くなりやすいので、電力消費としては高くなってきます。
ブロアーは騒音と合わせて電気容量もちゃんとチェックしましょう。
用役ポンプと同じように更新機会は高めなので、設計デメリットを出しやすいです。
5位:照明
照明も、実は相当電力消費が高いです。
これは数が圧倒的に多いから。
例えば10Wの照明でも1000個集まれば、10kWです。
大きな工場になれば、かなりの数の照明を使うので、積み上げると意外と高くなります。
とはいえ、これは削減代がほとんどありませんね。
プロセス設備が入らないのはなぜ?
今回のランキングでは、プロセス設備が実は全く入っていません。
電気容量的には22kWや30kWに到達する反応器はあります。
反応器はおそらく第6位になるでしょう。
というのも、運転時にその容量分100%で運転していることがほとんどないからです。
撹拌機を回していなかったり、インバータで速度を落としていたり。
インバータはポンプの場合ならほとんど効果がなく、電気容量の積み上げが電力消費となります。
撹拌機の場合は逆にインバータで速度を落としてしまうと、電力消費が少なくて積み上げ対象から外れてしまいます。
動かす時間が短く数も少ないというのが、ポイントですね。
参考
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最後に
化学プラントで電力消費が高い設備を5つ紹介しました。
電気容量で見ればほとんどOKで、冷凍機・エアコン・用役ポンプ・ブロアー・照明が該当します。
プロセス設備などは電気容量としては高いけども、消費電力としては意外と高くないものもあります。
現場レベルで省エネや効率化を考えたり、メーカーと検討したりするときの、最初のアプローチとして使える考え方でしょう。
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