フッ素樹脂ライニング設備(Fluororesin lining)について解説します。
高耐食性の設備として、グラスライニング設備に次ぐ重要設備。
フッ素樹脂ライニングの設計で気を付けるポイントは、グラスライニングとは違いますので、特徴をまとめました。
特にメジャーなタンクを想定した書き方をしていますが、タンク以外にも基本的イな部分は当てはまります。
できるなら使いたくないというのが、率直な意見ですね。
材質
フッ素樹脂ライニング設備は母材にフッ素をライニングしたものです。
当たり前ですね。
フッ素樹脂の種類としては大きく以下があります。
ETFE
PTFE
PFA
いずれも薬液に対する耐性はとても高いです。
腐食環境が厳しいなら、PFAなどを選ぶと良いでしょう。
長期的にはETFEでも差があまりないケースが多い印象です。
フッ素樹脂ライニングならライニング材側だけをケアしがちですが、母材もチェックしておきましょう。
SS400
SUS304
SUS316L
母材は設備の強度を持たせることが主目的のため、コスト削減を重視してSS400とするのが一般的でしょうか。
寿命を少しでも持たせるために、SUS304やSUS316Lにするのは1つの手です。
というのも、フッ素樹脂ライニングはガスの透過の問題が厄介です。
プロセス液のガス化したものが、ライニングと母材の間に入って腐食を続ける。
もしくはガスケットからの漏れたガスが液化して、母材外面に付着していきます。
施工方法
フッ素樹脂ライニングの施工法はいくつかあります。
シートライニング
回転成型
塗装
化学設備向けにはシートライニングが古典的ですが、最近では回転成型が流行っています。
化学設備は比較的単純な形状が多いので、回転成型向きです。
たまに特殊な形状でライニングを考えることもありますが、この場合はタンクアクセサリとして別途手配する方が良いでしょう。
良い例が、挿入管です。
このような感じで挿入管だけアクセサリーとするとタンク本体は回転成型がしやすくなります。
仮に施工可能とメーカーが言っても過信しない方が良いでしょう。不連続部の施工が上手くいかなかった時に、寿命が短くなって困るのはユーザーです。
化学設備は無難・シンプルな構造が一番です。
圧力
フッ素樹脂ライニング設備の耐圧は、加圧側は気にならないレベルで、負圧側は注意が必要です。
ライニングなので加圧側は強いですし、耐食性が求められる設備で極端な加圧が求められる場合には、そもそもフッ素樹脂ライニングを使わない方が良いです。
高級金属の方が無難です。
負圧側で使う場合には、やや注意が必要です。
ライニングが剥がれてしまう可能性が否定できません。
使用可能な条件をメーカーと相談することになります。
温度
温度は100℃を越えると危険領域だと思いましょう。
PTFEなど260℃まで可能と言われますが、実際の使用条件を想定したものではありません。
クリープなど何が起こるかは実際の条件で確認しないといけません。
新しい設備でいきなり冒険するわけにはいかず、既存製品でも試しに行うにしては失敗したときのリスクが大きいです。
耐熱温度が100℃~200℃と260℃より低いものなら、さらに注意が必要。
フッ素樹脂ライニングで高温となるような状況を作ること自体が、やや疑問です。
耐食以外の性質
フッ素樹脂の最大の性質は耐食性です。
他にもいくつかの性質があります。
代表的な物が摩擦が少ない・帯電するという性質。
摩擦が少ないという性質は、化学工場でも粉体系などに使える可能性があります。
粉塵爆発の可能性があるため、選定はかなり気を使います。
帯電しやすいという性質は、化学工場ではとても注意が必要です。
静電気着火の可能性は減らせるものなら減らしたいですね。
これらの性質を利用したフッ素樹脂ライニングもあります。新しく導入するときは気を使いますが、一度導入すると抵抗感が薄れていくでしょう。
熱交換器は?
フッ素樹脂ライニングはタンクだけでなく熱交換器などにも最近は使われているようです。
私は使ったことがありません。
伝熱性が悪く、耐熱温度も疑問があり、剥離などの可能性もある設備を使うくらいなら、リスクの少ないガラスライニング設備を選ぶ方が無難です。
フッ素樹脂ライニングならではの、異物を発見しやすくしたりや付着がしにくかったりといった性質に期待する場合は、選択肢に入れても良いでしょう。
参考
フッ素は耐食性を持たせるためにとても大事です。
ユーザーとしてはフッ素の細かな差を知らなくても良いでしょうが、参考知識として以下の書籍でも勉強になります。
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フッ素樹脂についてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
化学設備としてのフッ素樹脂ライニング設備について解説しました。
高耐食性の設備として活躍します。
フッ素樹脂としてはETFE/PTFE/PFAなどの種類があり、母材もSS400以外にSUS系など選択可能です。
耐熱温度はあまり期待せず、静電気の問題もありますので、使いどころが限定的になるでしょう。
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