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化学工学

化学プラント向け真空ポンプ運転調整3パターンをわかりやすく解説

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真空ポンプ運転 化学工学
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 化学プラントでは、真空ポンプは不可欠な設備です。熱に敏感な物質や高沸点の物質を扱う場合、大気圧下では処理が難しいため、減圧条件で運転する必要があります。
 本記事では、真空ポンプの運転調整方法を3つのパターンに分けてわかりやすく解説。適切な運転方法を理解することで、設計や運転、保全の効率が向上します。真空ポンプに限らずブロアーなどでも適用できる、ガス系プロセスの基本的な制御方法です。

調整弁で直接コントロール

最初の方法は真空ラインを、調整弁で調整する方法です。

調整弁

プロセスを負圧に保つために、真空ポンプと繋がるガスラインがあります。このガスラインに直接調整弁を付ける方法です。プロセスの圧力計の指示値を拾って、調整弁の開度を調整することで、圧力調整を行います。

圧力指示値が設定値よりも低い → 調整弁を開けて吸引ガス量を増やし到達圧を下げるという制御になります。この方式のメリットは以下の通りです。

プロセス以外の流体が系内に入らない

これだけだと良く分からないと思います。簡単に言うとあまりメリットがないということになります。デメリットは以下の通りです。

負荷が減少したときなど調整弁の開度調整範囲を越えると制御が難しい
調整弁が大型になる

中でも調整弁が大型になるという問題は致命的です。

真空度が高いほど、吸い込みガスの体積は増えるので、配管口径は大きくしないといけないのに、調整弁は大きなサイズだとコストが跳ね上がります。かつ圧力調整範囲を決めるにあたって、配管圧損とのバランスをちゃんととる必要があり、制御は難しい側になります。

シンプルな制御法に見えますが、実際には難しいという化学プラントの典型例のようなパターンです。

空気を取り入れる

2つ目の方法は空気を取り入れる方法です。

空気取り込み

ガスラインを二股に分岐させて、大気である空気を真空ポンプに取り入れます。この空気の取入れ量を変えることで圧力調整をします。

圧力指示値が設定値よりも低い → 調整弁を開けて吸引ガス量を増やし到達圧を下げるという制御になります。

制御方法自体は1つ目の方法と変わりありません。この方法のメリットは以下が挙げられます。

調整弁が小型で済む

デメリットは以下の通りです。

異物が混入する可能性がある
爆発性雰囲気を形成する恐れがある

取り込む空気は大気圧であるため、取り入れる空気体積は吸引ガス体積よりも遥かに小さくなり、取り込みラインの配管口径は小さくすることが可能です。自動的に調整弁を小さくすることが可能です。

一方で、空気そのものを取り入れるので異物が侵入してきて真空ポンプを詰まらせたり、可燃性ガスと混合することで爆発性雰囲気を系内で形成する可能性があります。空気を取り入れずに、窒素でカバーする方法もあります。

窒素の消費量が上がってくるので、窒素と空気を上手いことバランスさせたり、全部を空気で賄えないか検討が必要になります。

バイパスする

最後の方法はバイパスです。高真空向けです。

バイパス

この方法は高真空向けにブースターポンプやスチームエゼクタを、真空ポンプの前段に付ける場合に考えます。高真空で使う生産品目と低真空で使う生産品目を、同じラインで使う場合によく使います。

低真空の場合はブースターポンプを使わない方がむしろ良いので、バイパスに自動弁を付けて自動弁を開けた状態で真空ポンプを動かします。こうするとブースターポンプ側は圧損が高くなるので、ガスがほとんど流れずにバイパス側だけに流れていくことになります。

この例だとプロセスの圧力計の指示値でバイパスのon-offをさせる制御となります。高真空で使うプロセスで、起動直後(停止直前)はバイパスさせて、運転圧力に近づいたときバイパスを閉めてブースターポンプを動かすというシーケンスも可能です。

2の空気取り入れと組み合わせることもあります。

スチームエゼクタの場合はスチームの入り切りにも自動弁が必要になるので、注意しましょう。ブースターポンプだと通常は1段だけですが、スチームエゼクタだと複数段を直列に並べることも珍しくありません。スチームエゼクタが複数個ある場合は、自動弁も複数個となります。

高真空向け

参考

プロセス制御と言えばPIDと言われるくらい、PIDは基本的な知識です。以下のような本で基本は最初に学んでおいた方が良いです。

制御の知識がないけども、運転でどういうことをするか?ということを知る場合には、本記事のようなアプローチの方が分かりやすいと思います。

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真空ポンプについてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

真空ポンプの運転調整には、大きく分けて以下の3つの方法があります。

  1. 調整弁で直接コントロール
  2. 空気や窒素を取り入れる
  3. バイパスを活用する

運転条件や安全性、コストを考慮して最適な方式を選択することが重要です。化学プラントでの効率的な運転や保全のため、各方法の特性を理解しておきましょう。

化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
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