化学プラントでのプロセスエンジニアと機械エンジニア(engineer)の違いをまとめました。
化工系はプロセスエンジニア、機電系は機械系エンジニアと一言で表現されますが、就職前に理解するのは割と難しいと思います。
私も機械系出身ですが、学生時代に化学系の人と積極的にコミュニケーションを取っていたわけではないので・・・
化学工学って何?
っていうくらい素人丸出しの状態で就職しました。
いざ実務を始めると、
- 「これくらい知っていて当然でしょ?」というようにプロセスエンジニアから圧を受ける
- プロセスエンジニアに何をどこまで説明すればいいか悩む
- プロセスエンジニアにすべてを見透かされている感がある
というような状況に陥りました。
この状況を脱するのに、5年は掛かったでしょう。
時間を掛けても良いことはなく、劣等感を抱く時間が増えるだけなので、早く脱した方が良いです。
そのためには、プロセスエンジニアと機械エンジニアの違いをしっかり理解するべきです。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」ですね。
プロセスエンジニア(engineer)
プロセスエンジニアについて仕事・スキル・環境の3つの視点で解説します。
仕事
プロセスエンジニアの仕事は、工場内での新製品導入・既存製品の合理化が中心です。
工場内ではプロジェクトと位置付けられています。
プロジェクトが多い工場では、多忙感が非常に強い仕事です。
直接の仕事としては、以下のようなものがあります。
- 経済性の検討
- 生産フロー作成
- 研究開発・実験の依頼
- 各種法申請
- 設備の基本設計
- シーケンスの作成
- 生産開始時の交代勤務対応
- 各種図書のチェック
- 対外部署への説明
なんというか、プロジェクトを仕切る部門として何でも屋というイメージです。
実務的にも手が掛かる仕事がありながら、他部署への依頼・チェックなどの業務もこなさないといけません。
化学プラントが激務というとき、工場の運転部門かプロセス開発部門が最初に上がることでしょう。
スキル
プロセスエンジニアに求められるスキルはとても幅広いです。
- 化学工学
- 物理化学
- 無機化学
- 有機化学
- 実験
- 分析
- 機械工学
- 制御工学
- 材料
- 経理
- 管理
プロセスエンジニアとして化学工学の知識は必須です。
会社に入ってからある程度習得することもできますが、やはり学生時代に習得しておくことが相当有利に働きます。
他にも学ぶべきことがいっぱいありますからね。
学問的な知識として知っておくべきことも多いですが、さらに大事なことは「管理」だろうと思っています。
他部署のことを考え・適切に依頼し・フォローする
機電系エンジニアが関わる部分だけでも、設備の設計書・P&ID・配管図・DCS作動チェックなど、図書として膨大な量があります。
これらの業務が適切に回っているかを、定期的にチェックすることになります。
「○○ができていませんが、まだですか?」
みたいな言い方ばかりをしていると、角が立ってしまいます。
そういう意味での管理能力も求められます。
プロジェクトマネージャーとしてのスキルが大事ですね。
環境
プロセスエンジニアも機械エンジニアも工場で仕事をすることが普通でしょう。
プロセスエンジニアの場合は、多くの人と関わるためにも工場の管理部門の近くに配置されます。
かつ、製造現場にもかなりの頻度で通うことになるでしょう。
所内での会議や事務所での実務が大半となり、仕事量はとても多いですが計画を立てやすいでしょう。(機械系エンジニアに比べて)
機械エンジニア(engineer)の仕事
機械エンジニアについて仕事・スキル・環境の3つの視点で解説します。
仕事
機械系エンジニアの仕事は、設備の設計・調達・現地の工事が中心です。
プロジェクト的にはEPCという位置づけで、外部プラントエンジニアリングにも親しみがある業務です。
主な業務を紹介しましょう。
- 設備の詳細設計
- ベンダーへの見積仕様書作成・査定
- ベンダー図面のチェック
- 製作機器の立会検査
- P&IDの作成
- 配管図の作成
- 現地工事の工法立案
- 現地工事の管理
- メカコン・試運転の調整
いわゆる保全の部分は省略しています。
保全を機電系エンジニアリングの部門においているか、運転部門においているかの差が会社によってあるからです。
機械に関する仕事が大半です。
化学プラントの立場からは、「機械のことは良く分からないから任せた」というポジションにあるでしょう。
そのため、対外説明をすることもあまり少なく、ポイントごとにプロセスエンジニアや製造部と話をするという限られています。この辺りはプロセスエンジニアとの大きな違い。
スキル
機械エンジニアに必要なスキルを解説します。
- 化学工学
- 機械
- 制御
- 電気
- 建築
- 配管
- 材料
- 工事
- 管理
機械エンジニアだから機械の知識は必須ですね。
いちおう、機械の知識と言っても材料力学・熱力学・流体力学・機械工学など学問的には広げることは可能ですが、収拾がつかなくなるので記載しません。
書いてある知識のどれも、つまみ食い的な扱いで対応できてしまいます。これはプロセスエンジニアも同じですが・・・。
機械エンジニアも管理のスキルがある程度求められます。
プロセスエンジニアとは違った点での管理です。
例えば・・・
- 土電計への仕事の依頼・フォロー
- 調達への依頼・査定
- ベンダーへの図面の催促・チェック
- 工事会社との工程の確認
社内や同じ部署内の人と仕事をするというよりは、他社とのやり取りが多いイメージです。
土電計は自部門として持っている場合の方が多いでしょうが、調達は子会社・グループ会社等に委託している場合もあるでしょう。本社に集約している場合もあります。
この辺の問題で、依頼先の動きが遅くなりがちなので、催促的な管理が多くなります。
環境
機械系エンジニアも工場内で仕事することが普通です。この意味で、プロセスエンジニアと同じです。
社外とのやり取りが多いので、管理部門と場所を事務所を分けている場合もあるでしょう。
例えば工事会社とのコミュニケーションでは、工事会社の事務所に移動したりします。
頻度を考えると移動コストが相対的に高いです。
社内とは違って、社外の人はこちらの都合は考えずに「訪問」「電話」をする傾向が高く、突発的な対応に振り回されがちです。
メールや会議の設定がしにくく、人によってはストレスが溜まります(私もそうです)
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最後に
化学プラントのプロセスエンジニアと機械エンジニアの違いを解説しました。
プロセスエンジニアは化工系、機械エンジニアは機械系の出身者のフィールドです。
プロセスエンジニアの方が前工程の部門で、社内での幅広いやり取りをします。
機械系エンジニアは後工程部門で、社外とのやり取りが多いでしょう。
どちらも第三者から見ると大変そうに見える部門です。お互いに相手は忙しいと思いやって仕事をしていきたいですね。
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