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HAZOPで化学プラントの危険性安全性が高くなる理由

HAZOP 運転
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HAZOPについて解説します。

化学プラントの技術者なら聞いたことがある人も多いでしょう。

難しいのでプロセス設計などの専門家でないと理解できないと思いがちですが、基本の部分は割とかんたんです。

敬遠することなく、地道に考えてみると設備のトラブルなどでも、ちゃんと活用できます。

1人で考えざるを得ない状況に追い込まれたときに、最後の頼みの綱となるかも知れません。

私はそういう機会が多かったです。

HAZOPとは

HAZOPについて簡単に紹介します。

1960年代のイギリスのICI社が開発した、化学プロセスの安全性を評価する手法です。

欧米が先に行っていますが、日本でも徐々に定着しています。

新規剤の開発設計時に行われることが多いですが、既存剤でも見直しのために実施していることもあるでしょう。

化学プロセスは設計意図通りに設計・運転されていれば、安全は確保されると考えます。

逆に言うと、意図から「ずれ」が起きたときに事故が発生します。

その「ずれ」を抽出して対策を取ろう、というのがHAZOPの基本的な考え方。

ずれの数がモードがとても多く抽出に時間が掛かるデメリットはありますが、危険性を徹底的につぶせるメリットがあります。

万が一の事故も起こしてはいけない化学プラントには、ぴったりの手法ですね。

想定するシーンが多すぎるので、とても1人でできるものではありません。

多くの人が異なる目線で意見を言い合って作り上げるのがHAZOPです。

基本的な案を作るのはプロセスエンジニアになるでしょう。

プロセスエンジニアに任せっきりで、自分で考える訓練をしていないとなかなか身に付きません。

それでも機械装置に関してHAZOP的な思考は使えるので、少しずつでも訓練したいものです。

典型的な「ずれ」

HAZOPの典型的な「ずれ」を紹介しましょう。

  • 流量
  • 温度
  • 圧力
  • 液面
  • 組成

バッチプラントではこれらのほかにも様々な「ずれ」が考えられますが、基本的には上の5つでOKでしょう。

ガイドワード

HAZOPでは「ずれ」の典型例に対して、ガイドワードという「ずれ方」を考えます。

  • No(ない)
  • Less(少ない)
  • More(多い)
  • Reverse(逆)
  • Other Than(置換)

ほかにもガイドワードは考えられますが、この5つがあればかなりの部分はチェックできるでしょう。

今回はHAZOPそのものというより、1人でHAZOP的な思考ができるということを考えますので、全部を網羅しようと思わなくて良いでしょう。

因果関係の整理を

HAZOPで重要なことは、因果関係の整理をすることでしょう。

AだからB

という関係です。

例えば、液体の温度が上がれば密度が下がる、というような関係です。

物理化学や化学工学の基本的な部分を抑える感じです。

細かい数式は理解していなくても良いでしょう。

「ずれ」がどういう風に起こるかに気が付ければOK。

その「ずれ」が危険であるかどうかは個別に考えればいいわけです。

トラブルが起こったときにも、「ずれ」ベースで考えることができます。

ポンプの冷却水が入っていなかった → メカニカルシールが壊れた

これだと「ポンプ冷却水」の「流量」が「No」という状況を考えることになりますね。

他にも

ポンプの冷却水の温度が高すぎた → メカニカルシールが冷却されず壊れた

というモードも考えれます。

これだと「ポンプ冷却水」の「温度」が「More」という状況を考えることになりますね。

冷却水の温度が多少変わったくらいでメカニカルシールが壊れることは少ないでしょうが、可能性としては考えれます。

HAZOPの例

さて、例えば下のようなケースを考えましょう。

反応器に危険物が入っていて、蒸気で単蒸留する例です。

U値フロー

流量

流量に関しては、蒸気がターゲットになります。

発生するガスも流量という意味では考えれなくはないですが、省略します。

蒸気についてガイドワードを見ていきましょう。

No

蒸気が流れないというケースです。この場合熱が加わらず、危険な状態にはなりません。

Less

基本的にはNoと同じです。

More

蒸気の流量が多いというケースです。

これは危険

蒸気が流れすぎると、危険物の蒸発量が多くなります。

その結果、熱交換器で危険物ガスを凝縮できなかったり、ガスが適切に外部に放出されずに反応器が高圧になります。

とても危険なので、このずれに対しては対策が必要です。

対策としては例えば以下が考えられます。

  • 流量計で一定値以上を検知すれば、蒸気弁を閉める。
  • 反応器に安全弁を設置する。
  • 反応器の圧力計が一定値以上になれば、蒸気弁を閉める。
  • 熱交換器周りの温度が一定値以上になれば、蒸気弁を閉める。

いろいろ考えれます。

蒸気弁を閉めるだけが正しいというわけではなく、代わりに冷却水を自動で投入するという対策を取っておきたいです。

対策例で取り上げた、安全弁や圧力計はこのフローには記載していません。

必要に応じて追加するイメージです。

Reverse

逆流というモードですが、送り先が1つである場合には考えなくていいでしょう。

複数の送り先があって、バルブだけで遮断している場合にはバルブの内通が考えれますね。

Other Than

別のものに置き換わるというモードです。

Reverseと同じように、蒸気以外の何かに置き換わる例です。

例えば蒸気と冷却水が切り替わりでジャケットに入る例を考えましょう。

冷却水が蒸気の代わりに流れたとしても、温度が低い側なので危険性は少ないと判断するでしょう。

温度

温度は蒸気内容物の2つを考えれますが、ここでは蒸気に限定しましょう。

蒸気の温度は飽和蒸気を考える場合、圧力と同じ意味で考えれます。

内容物は蒸気の条件によって決まると考えることにしましょう(簡単化するためです)

No,Less

蒸気の温度がない・少ないというのは、蒸気の流れがないと同じ発想になります。

More

蒸気の温度が高いという意味で、流量が多いのと同じく危険です。

熱暴走という意味で温度の方が流量よりもむしろ危険側ですね。

対策もほぼ同じようなものです。

蒸気の圧力が高いことが温度が高い原因なので、蒸気に安全弁を付けるというのが基本となるでしょう。

Reverse,Other Than

温度ではこれらのガイドワードはマッチしないでしょう。

圧力

圧力は蒸気の圧力と内容物の圧力が考えられます。

蒸気の圧力は蒸気の温度の内容と同じです。

内容物の圧力は、内容物の温度と同じく蒸気側に引っ張られます。

  • 蒸気の供給量が高くて、発生ガス量が多いと内容物の圧力が上がり、
  • 蒸気の供給量が低いと、内容物は大気圧で落ち着く。

という感じで、化学や化学工学の基本的な因果関係を考えていけば、整理しやすいです。

液面

液面は反応器の内容物に対して考えます。

No,Less

内容物が少ない側だから基本的には安心側です。

空焚きになると例えばグラスライニング設備だと破損する恐れがあります。

More

内容部tが多いと、危険側です。

  • 伝熱面積が多く発生ガス量が多い
  • 沸騰による液面上昇でガスラインまで液が上がっていく(液が外部に溢れる)
  • 撹拌動力が足りずに、均一に混ぜることができない(内容物が局所加熱される)

対策として液面計をセットしたり、受入量の制限をしたりします。

Reverse,Other Than

液面ではこれらのガイドワードはマッチしないでしょう。

組成

組成では内容物がターゲットになります。

化学的にいろいろ考えれますが、低沸分が多い組成だと危険ということだけ記載しておきましょう。

このプロセスの手前の内容物で組成が決まっているという前提ですので、検討対象外として整理しておいた方が良いですね。

参考

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最後に

HAZOPの基本について解説しました。

流量・温度・圧力・液面などについて「ずれ」を設定して、No,Less,Moreなどの「ガイドワード」に従って、危険性を考えます。

計算式は使わず、物理化学や化学工学の概要が分かれば整理しやすいです。

設備トラブル時など1人で思考するときに活躍します。

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