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ガラスライニングとPTFEライニング、どちらを選ぶ?プラント設計の判断基準

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腐食性の強い薬品を扱う設備では、材質選定がプラントの信頼性を左右します。中でも「ガラスライニング」と「PTFEライニング」は代表的な選択肢ですが、それぞれの特徴や使いどころを理解していないと、過剰設計や事故の原因になりかねません。
この記事では、両者の違いを実務の視点から整理し、最適な判断基準を紹介します。

グラスライニングとフッ素樹脂ライニングは化学プラントの高耐食性材料として多用します。ところでこの2つをちゃんと使い分けしていますか?どちらでも大丈夫、という使い方をしていることが多いでしょう。

この2つの材料で選択を迫られる状況になったときには、メリットデメリットをちゃんと見極める必要があります。

グラスライニングとフッ素樹脂ライニングの特徴

まずはガラスとフッ素樹脂の特徴を簡単に整理します。ほかにも差はあるでしょうが、メイン部分だけを並べました。

ガラスフッ素樹脂
耐食性酸に強い酸アルカリに強い
耐負圧高い低い
温度範囲広い狭い
故障割れ
剥離
膨れ
浸透
価格安い高い

配管用途での比較と選定ポイント

グラスライニングとフッ素樹脂ライニングはそれぞれ配管・装置に使用できます。ライニングとしての区分は少し違うので、分けて考えます。まずは配管から。

コスト面の比較(初期費用・長期コスト)

グラスライニング配管とフッ素樹脂ライニング配管の比較として真っ先に考えるべきはコストです。

コストグラスライニング配管の方が安いと思います。(厳密には会社によって違うでしょうが・・・)フッ素樹脂ライニングは一般にはとても高価です。

耐食性としてどちらでも良いような場所であれば、グラスライニングを選ぶという感じですね。

耐負圧・温度範囲の確認(負圧運転や低温条件)

グラスライニング配管の方が耐負圧が高く、温度範囲も広いです。

JIS10kを想定しているので、加圧側はどれだけ高くても1000kPaまでで気にするのは負圧側。グラスライニング配管とフッ素樹脂ライニングの耐熱・耐負圧の性能を超簡単に比較します。

ガラスフッ素樹脂
耐熱-15~+150℃100℃ or 150℃
耐負圧OK要相談

グラスライニング配管はAGCテクノロジーソリューションズを、フッ素樹脂ライニング配管はニチアスのカタログから基本的に引用しています。

グラスライニング配管は低温でも負圧でもかなりの範囲で使用可能です。一方でフッ素樹脂ライニング配管は負圧には一般に弱いです。というのも、ライニングというか張り付いてすらいないから・・・。

ライニング配管(glass lining)

スカスカのフッ素樹脂ライニングは耐負圧性能がありません。負圧になるとフッ素樹脂が変形して、配管を閉塞するトラブルを起こします。フッ素樹脂ライニングでも耐負圧性能がある型式は販売されています。

耐負圧性能がない標準品と耐負圧品を比べれば、耐負圧品の方がコストが高いです。耐熱温度も高い傾向にあります。

フッ素樹脂ライニング配管の耐負圧と耐熱温度はメーカーと型式によってバラバラです。フッ素樹脂ライニング配管はこの意味で使う場所の使用条件をメーカーと相談して採用可否を判定しましょう。

長距離配管でのメリット/1ピース長さの違い

フッ素樹脂ライニングは高くて使用範囲も限定されているため、配管として使う意味がないのでは?と思うかも知れません。

使い道としては長距離の直線配管ならフッ素樹脂ライニング配管も可能性が出てきます。というのもライニング配管の1ピース長さの差があるからです。グラスライニングだと1ピース当たり2~4mですが、フッ素樹脂ライニングだと5m越のものもあります。

m当たりの単価で考えれば、フッ素樹脂ライニング配管の方がメリットが出る可能性があります。装置回りなどエルボやチーズで細かくくみ上げないといけない場合、直線部分が短くなるのでメリットは出ないでしょう。

ラック上などの直線部が長い箇所が狙い目です。

装置(タンク・反応器・熱交換器)での使い分け

装置としてのグラスライニングとフッ素樹脂ライニングの比較をしましょう。

配管と比べると装置は故障した時のリスクが大きいという特徴があり、運転・メンテナンスとの比較がより大事になってきます。

グラスライニングが向く場面(槽型反応器・熱交換器など)

グラスライニング装置と言えば槽型反応器でしょう。グラスライニングの耐負圧・温度範囲の広さが反応器にも活かされる形です。ガラスでもフッ素樹脂でもライニングは不連続部があると、難易度が上がると考えた方が良いです。特に、フッ素樹脂ライニングだと撹拌機やバッフルなどのライニングが難しそうなイメージです。グラスライニングは実績も多いですからね。

グラスライニング装置としては、多管式熱交換器も有名です。

最近ではフッ素樹脂ライニングの多管式熱交換器も開発されていますが、金額・能力考えてもガラスの方が無難でしょう。

フッ素樹脂ライニングが向く場面(タンク、アルカリ系、特殊薬液)

個人的にはフッ素樹脂ライニングにメリットはないと思っていますが、それでもフッ素樹脂ライニングを使う場合があります。例えばタンクです。

フッ素樹脂ライニングのタンクはFRPタンクとの比較で、FRPよりも設備レベルをアップさせたい場所などに使う感じです。

フッ素樹脂はアルカリにも耐えるし、フッ素が含まれる薬液にも耐えます。こういう特殊ケースではグラスライニング設備よりはフッ素樹脂ライニングにする方が良いです。一方で、塩酸などのハロゲンガスはフッ素樹脂ライニングでは透過するので、グラスライニングの方が良いでしょう。

  • アルカリやフッ素ならフッ素樹脂ライニング装置
  • 塩酸などハロゲンガスならガラスライニング装置

この例はあくまで一般的な性質として紹介しています。かなりの部分がメンテナンスと関連するでしょう。例えばアルカリやフッ素でもグラスライニングを使って定期的に点検・交換することもあれば、塩素ラインでもフッ素樹脂ライニングで定期的に点検・交換するという発想も考えられます。

ガラスライニングタンクは形状が皿型にほぼ固定化されますが、フッ素樹脂ライニングだと皿型以外にも平型でも対応できる場合があります。これももしものために知っておいた方が良いかもしれませんね。

静電気を考えるならガラス

化学プラントでは静電気着火が非常に怖いです。静電気着火のリスクを少しでも抑えようとするなら、グラスライニングを選ぶ方が良いです。

どちらも電気を通しにくく静電気を貯める性質を持ちますが、ガラスの方が体積抵抗率が低く静電気が溜まりにくいです。

ガラスライニングとフッ素樹脂ライニングを比べるときの落とし穴

ガラスライニングとフッ素樹脂ライニングを選ぶ時の注意点をいくつか紹介します。

「耐食性だけ」で判断すると危険な理由

 ガラスライニングもフッ素樹脂ライニングも耐食性が最初のターゲットになることは間違いありません。でもそれだけだと少し問題です。

 例えば温度は典型例。100℃を越える液体を流す場合、フッ素樹脂ライニングは慎重になった方が良いです。カタログスペックでは100℃以上の高温でもフッ素樹脂ライニングは耐えますが、実際に使ってみると、意外と寿命が短かったりします。

故障モードの違い(破損 vs 剥離・膨れ)

 ガラスライニングとフッ素樹脂ライニングは故障モードが違います。ガラスライニングの場合は割れが怖く、フッ素樹脂ライニングは剥離・膨れが怖いです。

 ガラスライニングの割れが起きると製品品質に直結するので、導入コストが安かったとしても後の勉強代が高かったりします。

 フッ素樹脂ライニングは剥離・膨れで、先に膨れが起きます。この段階で気が付けば、ガラスライニングのような品質の影響は回避できるかもしれません。

静電気リスクを見落とさない

 ガラスライニングもフッ素樹脂ライニングも静電気のリスクはあります。どちらかというとガラスライニングの方がリスクは低めです。

 ガラスライニングの方が品質リスクが高いですが静電気リスクは低め、と捉えたときにガラスライニングもフッ素樹脂ライニングも一長一短という気もします。どのリスクを許容するかということは、プロセスや製品の特徴にもよりますので十分な検討が必要ですね。

設計者が押さえるべき選定ステップ

ガラスライニングとフッ素樹脂ライニングのどちらを選ぶか、という点をステップに分けて説明します。

プロセス条件(温度・圧力)

プロセス条件を調べるのが第一ステップです。

以下の条件だとフッ素樹脂ライニングは慎重な調査のトリガーとなるので、まずはチェックしましょう。
・温度が100℃を越える
・負圧

設備用途ごとの適合性(設備と配管)

材質を選ぶ対象が設備なのか配管なのかでも多少違います。

バッチ運転の場合は汎用性を考えて設備はガラスライニング、配管はガラスライニングかフッ素樹脂ライニングかを選ぶという場合が多いです。設備でフッ素樹脂ライニングだと特殊な薬液に限定されます。

配管だけが選択肢があると考えると分かりやすいですね。

保全と運用

ガラスライニングもフッ素樹脂ライニングも保全面では大きな差はありません。
 設備:壊れたりその傾向があれば、メーカーに依頼
 配管:壊れたら取り替える、もしくは一定期間で交換

交換するタイミングでピース数を少なくしてコストを削減するような工夫をして、長期的な運用を意識すればいいでしょう。ガラスライニングだとこれがしやすいです。

参考

関連記事

さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

ガラスライニングとPTFEライニングには、それぞれ明確なメリットと制約があります。どちらが優れているかではなく、「プロセスに合っているか」が判断のカギです。安易な選定は後々のトラブルを招く可能性があるため、慎重な検討が求められます。

グラスライニングの方が安く、耐負圧・温度範囲も広いので汎用性があります。長距離配管やアルカリなどの限定的な場所でフッ素樹脂ライニングを使うという感じでしょう。実際の採用を検討するときはメーカーと打ち合わせをしましょう。

本記事の知識は、その前のアタリを付けるための知識として持っていれば良いと思います。

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