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化学機械

インナーフィンチューブが冷凍機で多用される理由

インナーフィン 化学機械
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インナーフィンチューブ(inner fin tube)について解説します。

インナーフィンチューブは冷凍機で登場するチューブです。

フィン付きのチューブで、伝熱面積を増やす機能を持っています。

モーターなどにも同じような放熱機構がありますね。

少しでも装置サイズを小さくする工夫をしたいメーカーにとっては、よく使われます。

割と目立たないかもしれませんが、実はとても重要な要素です。

インナーフィンチューブ(inner fin tube)の構造

まずは構造を解説しましょう。

インナーフィンチューブとはインナー(内側)にフィンが付いたチューブです。

例えば以下のような構造をしています。

インナーフィン(inner fin tube)

銅製のチューブの内側にアルミニウム製のフィンが付いた構造をしています。

フィンを付けることで伝熱面積を増やして、熱交換の効率を上げようとしています。

1種冷凍機などの世界では、インナーフィンチューブの有効内外伝熱面積比mという表現をします。

上の例の5本脚フィンなら、チューブ内径が15.9mmでm=2.2です。

このほか8本脚フィンなら、チューブ内径18.8mmでm=3.4となります。

mが大きいほど伝熱面積が大きくなり効率がアップすると考えれます。

インナーフィンチューブ(inner fin tube)が使われる場所

インナーフィンチューブは冷凍機の蒸発器に使用されます。

特に乾式の蒸発器に対して使います。

蒸発器(inner fin tube)

乾式の蒸発器の場合、管内がフロン・管外が空気の場合が多いです。

ここで熱交換の性能を少しでも上げたいと思う場合、フロン側の熱交換の効率を上げようとして管内にフィンを付けます。

インナーフィンチューブは乾式の蒸発器に限りません。

例えば、液体ブラインを冷却するための湿式の蒸発器でも、管内がフロン・管外がブラインという使用をします。

一方で、管内がブライン・管外がフロンという管内と管外が逆の使い方をするケースでは、管外側にフィンを付けます。

こういうチューブをローフィンチューブと言います。

メリット

インナーフィンチューブのメリットは装置サイズを小さくできるという1点に尽きます。

装置サイズが小さいと購入コストも安く、必要な設置面積も小さくできます。

敷地面積が小さい工場では重宝するでしょう。

例えばm=2.2だと、フィンなしチューブに対してチューブ本数が1/2にできるとしましょう。

熱交換器のチューブ本数は、熱交換器の断面積に比例するので、熱交換器としての径が1/√2=1/1.4にすることが可能なはずです。

実際には熱貫流として管外側の伝熱係数を考える必要があり、m=2.2だからチューブ本数が1/2も下げることはできないでしょう。

それでもインナーフィンが必要ですか?ということを設計者は考える必要があるでしょう。

デメリット

インナーフィンチューブにはデメリットがあります。

それはメンテナンスができないという点です。

冷凍機のチューブは使っていくうちに劣化していきます。

これは熱交換器でも同じこと。

チューブは強度を保ちつつ、熱交換の疎外とならないようにするために、肉厚を限界まで小さくします。

そのために、使っている間の劣化によってチューブが破れるかもしれません。

これを検知する仕組みがインナーフィンチューブではありません。

フィンなしチューブ(ただのパイプ)の場合は、渦流探傷試験である程度予測が可能です。

劣化していけばチューブを抜いて(抜管)、再度新しいチューブに交換する(リチュービング)を行います。

そのためにも、通常の熱交換器のチューブのように、拡管+溶接ではなく拡管だけを行うことが多いです。

念のため、チューブシートとチューブを溶接で繋ぐ場合の絵を紹介します。

チューブ溶接(inner fin tube)

拡管だけで止まっているチューブは溶接で固定するチューブに対して、漏れのリスクを抱えます。チューブは運転時に管内と管外の流体の流れで振動をして、チューブとバッフルの間で擦れて劣化していきます。溶接をしない分だけチューブの両端の固定力は弱く振動がしやすい方向です。そういう特性を持つ設備だという認識でメンテナンスをしなければいけませんね。

インナーフィンチューブだとチューブの劣化傾向が分からないので、時期を決めてリチュービングをすることになります。

過剰メンテとなる可能性を秘めているので、いつ交換するかを見極めるのが保全スキルとなるでしょう。

参考

最後に

冷凍機のインナーフィンチューブについて解説しました。

乾式蒸発器などで使用します。

1本のチューブ当たりの伝熱面積を増やすことができて、装置サイズを小さくできます。

その代わり、過流探傷試験などの非破壊検査ができません。

購入コストとメンテナンスコストのどちらを取るかという判断になるでしょう。

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