化学プラントでは消火設備は必要不可欠の設備です。どこの国の化学プラントでも求められますが、特に日本は厳重な構成になっていると思います。特に化学プラント内の固定消火設備はとして、水噴霧と泡の2つが良く使われます。どちらの設備も第4類や第5類の危険物に適用でき、液体で取り扱えるので、化学プラントでは重宝します。
本記事では、水噴霧と泡の2つの固定消火設備の違いを、実務面だけを視野に入れて解説します。使用環境による差はありますが、化学プラントならかなりの場面で適用できると思います。
水噴霧
化学プラントで水噴霧消火設備を選ぶ際に着目するポイントを解説します。
使用量
水噴霧は泡に比べて、使用量の制限が少ないです。水噴霧は工場の水貯槽にある水そのものを使用できます。泡は水と泡を混合する必要があり、泡のタンクの容量の制限を受けます。
化学プラントでは十分に必要な量の水や泡を準備しておくことになりますが、量の制限を受ける項目が1つでも少ない方が安心した運用が可能です。
水噴霧か泡かどちらを選ぶかという選択を迫られたときに、量の制限が少ない水を選ぶという可能性は高くはありませんが、頭の片隅では考えておきたいことです。
全面消火
水噴霧はスプレーノズルの方向を任意に設定できるので、複雑な形状の機械設備でも全面に降らせることが可能です。例えば、機械設備の底面を下から水を降らせるということも可能です。逆に泡だと上から下に降らせるというのが限界です。
いざ火災が起きた時、例えば溶媒が漏れて火が付いたとして、溶媒がタンクの側面を伝って底面まで流れながら火がついていたら、水噴霧は泡よりも早く消火液が火源に接触することが期待できます。全面消火は一定の安心感がありますね。
泡
化学プラントで泡消火設備を選ぶ際に着目するポイントを解説します。
設置コスト削減
泡は水噴霧に対して設置コストを削減できます。これは機械設備への噴霧量が水噴霧に比べて少ないから。消火設備の必要散水量は床面積と機械設備表面積の2つでほぼ決まりますが、機械設備表面積は泡の場合は上面にほぼ限定されます。このため、必要な噴霧量が少なくなり、配管施工費を削減することが可能です。
昔は水噴霧でも良かったのですが、昨今はプラント新設時は泡を選ぶ傾向にありますが、コストが理由だと思います。
泡タンク
泡消火設備は、水と泡を混合させるために泡タンクが必要です。泡タンクそのものがコストになるだけでなく、周囲にはプラントなど設備を置けないことから設置面積を圧迫する要因にもなります。
洗浄廃棄
泡は洗浄廃棄がとても大変です。消火時に使用した消火液は工場の環境処理設備で処理した後、工場外に廃棄します。泡の入った消火液はBT処理などが難しく、処理に時間と手間が掛かります。
プラントによっては水噴霧と泡で一部のライン(例えばポンプなど)を共有する場合があります。消火設備の性能確認のために定期的な使用をしますが、水噴霧ラインを使うときは泡ラインを切り離して万が一でも泡消火液が間違ったラインに到達しないように、ケアをすることになります。
最後に
水噴霧消火設備と泡消火設備は、どちらも化学プラントで広く採用される固定消火設備ですが、実務上の特徴は大きく異なります。
水噴霧は設備全体への散水や運用の自由度に優れ、泡消火設備は施工コストを抑えやすいというメリットがあります。一方で、泡消火設備は泡タンクの設置や消火後の排水処理など、運用面で考慮すべき事項も少なくありません。
実際の設備選定では、消防法への適合だけでなく、建設コスト、保守性、運用性まで含めて総合的に判断することが重要です。設計段階でそれぞれの特徴を理解しておくことで、長期的な設備運用にも大きな差が生まれます。
この記事の内容を、あなたの職場・キャリアに合わせて整理したい方に技術・キャリア相談を行っています。海外プラント、製造管理、組織の病理、キャリア停滞など、あなたの状況に合わせて具体的にアドバイスします
→ 技術・キャリア相談はこちら
【著者:ねおにーーと】
化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら
コメント