自動化がどんどん進んでいき、人が何もしなくても勝手に製造できることを理想として、いろいろな取り組みをしている昨今。
自動弁をとにかくつければ解決するのだ、という結構危ない意見もあります。
私は手動弁ですら危ない部分があるのに、そこに目を向けている人がどんどん少なくなっていることに、不安を感じています。
自動弁・手動弁問わずバルブの何が怖いのかを解説します。
開閉の状態をすぐに切り替えられる
バルブというのはとても便利なもので、開いた状態と閉じた状態をすぐに切り替えることができます。
仮にこの目的をバルブ以外で実践しようとしたら、配管を都度付けたり外したりと、漏れることを覚悟したり時間が掛かることを予想しないといけません。
この手間を解決するための画期的な方法が、バルブです。
便利なものは当然弱点があるもの。
その弱点を見ていきましょう。
内通
バルブのトラブルで最も多いのは内通です。
バルブの弁体と弁座の間に異物が入るなどして、本来閉まっているべきものが空いている状態と同じとなってしまうことです。
使っているうちに一定の確率で起きてしまうもの。
この問題は根深いので、バルブを信用しすぎないように不使用ラインは遮断板や配管の切り離しをします。
開け忘れ・閉め忘れ
バルブは開け忘れや閉め忘れという問題が起きえます。
特に怖いのは手動弁。
開けるべきラインが閉めていたり、その逆だったり。
危険な反応を行うところでは、大事故にもつながりかねません。
そうでない場面でも、品質が悪くなったりなど、影響範囲は広くなります。
内通がない正常なバルブでも、人が操作する場所は間違いが起きえます。
自動化が進めば進むほど、手動弁の怖さを認識を疎かにしがちなので、本当に注意したいです。
動かない
自動弁が動かないということと、手動弁が固着して動かないという、2つのパターンがあります。
どちらも弁として正しく機能しない意味では同じです。
使用頻度が高すぎる自動弁や、長期間使用していない手動弁など理由はさまざま。
運転中に起こる問題としては自動弁のトラブル側でしょう。
自動弁が壊れても運転や処理ができるように手動弁を付けておきましょう。
バルブのリスクに対する対策
バルブは便利な物ですが、その便利さが危険を生む要因にもなっています。
怖い反応が起きてしまったり、温度制御ができなくなってしまったり、プラントを危険な方向に持っていきかねないので、しっかり対策を取りましょう。
チェックリスト
SDMなどプラント停止状態から運転を再開する前と運転停止してSDMに移行する前の2つに対して、チェックリストで確認することは基本です。
手動弁の開け忘れ・閉め忘れを防ぎます。
現地で判断に悩まないようにするため、バルブに表示を付けて目視確認したり、P&IDをチェック用に加工して開閉確認の記録を取ったりします。
バッチプラントの場合は、手動弁の開閉条件が運転品目によって変わるので、現地表示はあまり有効ではなく、P&IDを用いたチェックが有効です。
水運転
バルブに内通があった場合の対策として、実運転前に水運転で確認するという方法があります。
バルブを閉めているのに出口のタンクの液面計が増えている、というような異常を察知できます。
このためには、使用する全ラインの状態確認が必要です。
バッチプラントだと反応器やポンプなどの液体系の分かりやすい部分は、結構この方法で解決しますが、ガスラインなど分かりにくい部分は見過ごされがちです。
内通以外にもバルブの開け忘れ・閉め忘れの対策としても、一定の効果があります。
失敗覚悟
バルブの内通や開け忘れ・閉め忘れが一定確率で起こることを覚悟することも、1つの方法です。
バッチ運転の場合なら、1stバッチは失敗品になるかも知れない。その場合は廃棄処分する。
こういう考え方を取れなくはないです。(普通は取りません)
内通などで危険な状態になってもすぐに察知して止める仕組みは絶対に必要なので、インターロックなどしっかり組みましょう。
プロセス反応として問題が無くても、例えば環境中に漏洩したり被液したりという環境衛生や安全の問題は起こりえるので、やはり舞シリーズ立ち上げ時は特に注意したい時期ですね。
参考
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最後に
バルブは当たり前のように使っていますが、開閉が簡単にできるという装置は化学プラントでは非常に怖いものです。
内通のように一定確率で起きるものもあれば、忘れというヒューマンエラー、動かないという故障など装置であるがゆえに考えないといけないことがあります。
身近な手動弁こそ、しっかり考えておきましょう。
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