化学プラントでは多種類の液体やガスを使い、流量を一定に制御しながら安全に運転する必要があります。電磁流量計はこの中でも特殊な場所で使うため、意外とその使いわけが難しかったりします。
本記事では、化学プラントで電磁流量計を使う場面をいくつか紹介します。
この記事は、流量計シリーズの一部です。
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電磁流量計の位置づけ
化学プラントで使う様々な流量計の中で、電磁流量計がどういう位置づけかをまずはおさらいしましょう。

| 種類 | 用途 | 直管長 | 圧力損失 | 価格 |
| 電磁式 | 水 | 要(短) | 0 | 高 |
| 渦式 | スチーム | 要(中) | 小 | 中 |
| コリオリ式 | 油 | 不要 | 中 | 高 |
| 面積式 | 油・ガス | 不要 | 小 | 安 |
| 容積式 | 校正 | 不要 | 大 | 高 |
水系
電磁流量計はその原理から電気を通す液体向けです。ということで真っ先に思いつくのは水系。工業用水などプロセスで水を使う場所は非常に多いです。ここに電磁流量計を使うことは可能です。
複数の反応器を並べてバッチ式で運転するプラントでは、水の投入タイミングが大事で、流量計+ヘッダーの組み合わせで、それぞれの反応器に投入する水の量を制御します。流量計の積算値を使って自動弁を閉めることで、投入量を決めます。

直管長が不要
配管ヘッダーを組むと水平配管の距離がその分だけ長くなるので、直管長が必要な流量計だと、プラントの多くのエリアを流量計周りで占めることになって、プラントの動線や拡張性を悪くしてしまいます。切替配管を基本とするバッチプラントでは、多くの配管が混在するので、できるだけ配管による空間占有率を下げるためにも直管長が不要な電磁流量計は、ニーズがあります。
ヘッダーは複数個必要
水は反応器全数で必要となる可能性があり、ヘッダーで全反応器に接続することは安定運転上大事です。ただし、1つのヘッダーで10~20の配管に接続しようとしたら、1反応器当たりの流量計の占有時間が課題になります。お客さんである反応器に対して流量計が少ない状態です。
これを避けるためには、ヘッダーを複数に分岐され、それぞれのヘッダーに流量計を設置します。運転方法にもよりますが3~5個くらいのヘッダーになるでしょう。だからこそ、直管長が要らない電磁流量計はメリットが出てきます。
酸系に大活躍
電磁流量計の最大の使いどころは酸系だと思っています。流量計で耐酸系の材質を探すのは少し難しいです。動く部品がある場合、腐食性は一般に高くなると思った方がよく、故障の確率が増えます。
電磁流量計だと内部に動く部品を持たないため、流量計そのものの寿命は安心感があります。一般的な酸以外にも酸性の液体を多く扱うプラントでは、腐食性が予測しにくく少しでも耐食性があるものを選ぶという思考になります。この点で電磁流量計は有利です。
分液ラインはNG
電磁流量計は適切に使えば非常に強力ですが、使用場所に注意が必要です。その典型例が分液。

分液で流量計を使う際に、水層も油層も同じラインで同じ流量計を共用していると、油側は当然測れないとしても、水側でも適切に表示されない可能性があります。このフローのような共用パターンではなく、水側にだけ流量計を設置していたとしても、油が入ってくる可能性があるので、やはり誤差の原因になります。
分液で流量計を使う場合には、精度を求めるのではなく凡その目安を決めるためという場合が多いのですが、それでも使えない可能性があることは認識しましょう。
参考
最後に
電磁流量計は「使える場所では非常に強いが、使えない場所は明確」という特徴を持つ流量計です。
- 水系・酸系ラインでは最適
- 狭いスペースでも配置しやすい(直管長不要)
- 多系統ヘッダーとの相性が良い
- 分液ラインでは誤差が大きく実用的でない
化学プラントの運転特性を理解したうえで、電磁流量計の特性を踏まえた適切な配置を行うことが、安定運転にも直結します。
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