化学プラントというと、いくつもの大きな塔が並んでいるシーンが思いつきます。
例えば、Grokで「化学プラントのイメージ」で以下のようなイメージが作成されました。

ここにも塔がいっぱい並んでいます。この画像にはいろいろ気になる部分はありますが、塔がいっぱいあるのが化学工場、というイメージは私も同意します、
ところで、私が担当するようなバッチ系化学工場ではこのイメージが逆に全くありません。塔の設計の機会はほとんどなく、あってもすごく簡単な物ばかりです。塔の設計は難しいと思っていましたが、こんなに簡単でも、実運転で使えてしまうという実態についてまとめます。
塔径でほぼ決まる設計
バッチ系化学工場で私が行った塔の設計は、塔径を決めただけです。それもプロセス部門から提示されて、予め設計されたものの妥当性を検証するだけのもの。間違っていたら確かに運転ができないので、ダブルチェック目的で別部門がその部門での考え方を使って検討することは必要かもしれません。これをバッチ系の経験しかない機電系エンジニアとしては、塔径の計算だけでカバーすることになります。
塔径がなぜ大事であるかを、まとめておきましょう。
- フラッディング速度で縛られる設備の最大能力を決める
- 設備の設置環境や可否判断を行う
- 設備の価格を直接左右する
塔径だけで運転能力を決めれると言っても過言ではなく、ガス流量や液流量というプロセス条件(の最大値)を決めることができます。塔の代表仕様というと塔径というくらい大事なものです。
塔径が決まると設備の大きさがある程度決まるので、プラント内に設置可能かどうかを考えることもできます。仮に大きいサイズであれば、架構の増設など別の方法を考えることになります。
塔の設計において塔径が重要であることは分かるとして、それ以外の仕様は必要ないでしょうか?
塔径以外の仕様は実績重視
塔の設計においては、塔径以外にも色々な要素があります。
- 充填物:一般的な不規則充填物
- 充填高さ:実績重視 もしくは プラントサイズで決まる最大値
- 材質:SUS316LもしくはGL
塔と言っても、非常に程度が低いものなので、適当に充填物で埋まっていたらOKという世界です。充填高さも計算するわけでなく、実績値などから判定します。詳細計算を行っても余裕という名のもとにプラントサイズで決まる大きさの物を買ってしまうこともあります。この場合は、他の生産品目が入ってきても使える可能性があり、汎用性が出てきます。材質も、耐食性の高いものを選びます。
ある程度のマルチ性を持たせた設計をすると、どうしても仕様は均一化されてしまい、塔径だけが設計要素となってしまうという展開になります。
本当に必要なら専用の検討をする
バッチ系化学工場では、塔の設計はこのように実績重視や汎用性という名のもとにコピー設備を作っていきます。塔の設計に関する化学工学的な知識が全くなくても、運用できてしまいます。
エンジニアのスキルとしては問題がありそうに見えますが、個人的にはあまり重要視していません。専用のソフトを使ってシミュレーションすることになり、必要になってから使えばいいし誰かに依頼しても良いと思います。それ以上に、学ぶことはもっといっぱいあると思っています。
連続プラントで塔の設計がメインである工場なら、真っ先にスキルとして確保しておきたいですね。
架構内に収めることが大事
連続プラントの塔は、地面から伸びていて架構とは独立した物が多いです。架構は塔へのアクセスのための階段や通路の目的がメインで、たまたま他の設備を同じ建物に置いてしまった、という印象すら受けます。
バッチプラントだとそうも言っておられず、塔は架構内に収めることが最低条件になります。コスト目的ですね。
バッチプラントを外から見てみると、塔が1つもない化学プラントという印象を受けますが、実は架構内に取り込まれていたりします。こうなると、本当に目立ちません。
参考
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最後に
バッチ系化学工場では塔の設計は塔径だけを決めるという簡単なものです。反応槽やガスラインなどの口径でほぼ決まってしまうもので、残りの仕様は実績重視で汎用性を持たせます。コスト目的で架構内に収めることも重要です。
塔に関するスキルは身に付きませんが、それでも20年以上化学プラントの設計者やってこれています。
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