ガントチャート(Gantt chart)の話をします。
化学プラントのオーナーエンジニアでの、工程調整でガントチャートは使います。
工事の日程を決めることは、エンジニアとしてはとても大事なこと。
この日程が数日違うだけでも、工事が安全にできるかどうか変わります。
製造部と調整するうえでは、関連する作業の内容を理解していた方がやりやすいです。
ところがエンジニアとしては、会社から与えられた日程ありきでスケジュールを議論しようとしてしまい、その背景を考えようとしない人が意外と居ます。
視野を少し広げましょう、という意味ですね。
工事前後のスケジュール
バッチ系化学工場を前提として工事前後に関係するスケジュールを、ガントチャート的に示しましょう。
結論として以下のような形になります。
エンジニア的には黄色の工事の部分だけに着目しがちです。
例えば、工事が3/1~3/31と提示されていたら、その日程内で何とかしようと考えます。
基本的にはそのスタンスで良いのですが、少し調整できる部分は残っています。
それが生産や洗浄のスケジュールの空きの部分。
上のチャートで赤と青の部分が生産と洗浄ですが、工事前に空いている部分がありますね。
そこが狙い目。
これを理解するためには、生産と洗浄の実態を少し知らないといけませんね。
生産工程
生産工程は、エンジニアにとってみれば興味が薄い部分でしょう。
生産では反応を1日単位で進めて、次の反応にどんどん送っていく、階段を下りていくような流れで構成します。
1バッチ目の反応Aを1日目、1バッチ目の反応Bを2日目・・・と流していきます。
このとき、2バッチ目の反応Aは2日目にスタートしています。
電車の運転と同じような発想です。
工事のために生産を止めようとすると、この逆の流れを行います。
反応Aの最終バッチが終わっても、その日は反応Bはまだ最終バッチに到達していません。
次の日に反応Bの最終バッチを迎えます。
洗浄工程
生産が終わった反応から洗浄の工程に移行します。
最終バッチを迎えた反応装置から順番に洗浄ができます。
生産と同じ流れで洗浄することが基本。
生産と同じように洗浄でも反応と同じ順番で、完了していく予想ができます。
そうすると、初期に行う反応装置ほど工事に着手できる可能性があります。
逆に、後期に行う反応装置ほど工事完了期限を後に延ばせる可能性があるということになるでしょう。
工事は明確に分断する
生産や洗浄の都合を考えると、杓子定規な工事期間以外の日程で工事が可能そうであることは分かります。
しかし、これは基本的には止めた方が良いです。
生産は生産、工事は工事。
しっかり分割する方が無難です。
というのも工事は一般に外部の工事会社に依頼することになり、運転オペレータのように現場を熟知しているわけではありません。
オペレータや製造部の管理者とコミュニケーションが取れるわけでもありません。
一方で洗浄しながら他方で工事をするとなると、錯綜工事となって事故を起こす元です。
安全に作業をするためにも、生産と工事は分割した方が良いです。
関連工事の位置づけ
生産と工事は完全に分割するのは理想的ですが、完全に分割するのは難しいでしょう。
とはいえ全ての工事内容を生産や洗浄とラップさせることも無理。
できる工事の選別が必要となります。
安全性を考えるなら、できる工事はあまり多くはありません。
- 足場工事
- ホットボルティング
- 保温の後付け
- 工事前の配線の取外し
- 工事区画整備
どこまでの工事が許されるかは、会社やプラントの環境によっても違います。
安全性を考慮して製造部と調整できるネタを集め、交渉することが大事でしょう。
参考
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最後に
オーナーエンジニアが工事のスケジュールを調整するために、生産や洗浄の内容で知っておくべきポイントを紹介しました。
生産の流れや洗浄の流れを、ガントチャートで理解することが大事です。
安全に工事をするうえで与えられた期間以外にできる作業を、少しずつ増やしていけると良いでしょう。
無理をしないことが最優先ですが、それでも考えていきたいですね。
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