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なぜ液体ではなく粉体?化学プラントで粉体原料が選ばれる理由

粉体を扱う理由 運転
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化学プラントでは、液体原料よりも「粉体原料」が選ばれることが意外と多くあります。一見、取り扱いやすそうな液体より、あえて粉体を使う理由とは何なのでしょうか?

この記事では、粉体原料の採用が多い理由を、安全性・保存性・設備設計などの観点からわかりやすく解説します。

一般的なプラントの中には液体だけで完結する場合もありますが、粉体を取り扱っているプラントも意外と多いです。粉体を取り扱った瞬間にマテハンなど人手が必要となってきます。

プロジェクトでもエンジニアリングの難易度が上がります。

すでに当たり前に扱っているので、気にしていない人も居ると思いますが、粉体を扱う理由をいくつか考えてみました。

対象となる粉体は、溶媒に溶かすことも不可能ではないけど、粉体として扱うことも可能という条件を付けます。液体でしか取り扱えないものはもちろん存在します。それでも粉体で取り扱う方が良い物が意外と多いですね。

運搬しやすい

粉体は運搬しやすいという特徴があります。

プラント内の配管移送では粉体は不向きですが、会社間を跨ぐような長距離輸送には粉体は向いています。

漏洩しにくい

粉体は漏洩しにくいという特徴があります。これは運搬性に影響を与えます。

液体の方が固体よりも漏洩したときに、拡散する範囲は広くなります。(パウダーなどの細かい粉体は除くとして)

目的となるものが粉体など固形分だけど、運搬のために液体として扱うか固体として扱うかを考えるとしましょう。

この場合に、液体で運搬するためには固体を溶かす種類を選ばないといけません。

水に溶けるような一般的な物ならまだ良いのですが、化学プラントで扱う製品では有機溶媒・酸・アルカリにしか解けない物も割とあります。

仮に有機溶媒に溶けるとしても、温度が高くないといけないなど、制約があったりします。

特殊な条件下にした液体をローリーで街中を走らせようとしたら、結構怖いです。

交通事故などで漏洩したときが大変です。大火事になります。

有機溶媒でなくて酸やアルカリでも被害は大木です。

粉体であれば漏洩のリスクは少ないですね。

詰まりにくい

例えばローリーで運搬する場合で、粉体を液体に無理矢理溶かせることを考えましょう。

この時に、温度を上げる必要があったのに、温度調整を間違えて冷たい状態になりました。

そうすると、ローリーの下部には粉体が析出して固まってしまうかも知れません。

せっかく運搬したのに、固形分は取り出しができずに不要な液体だけを回収することにもなりかねません。

取引しやすい

粉体は取引しやすいという特徴があります。

重量が分かりやすい

ほぼ純粋な液体だけで構成された製品であったとしても、液体中に必要な成分は100%ではありません。

濃度が決まっています。

1,000Lの液体の中に98%分だけ成分があったとしたら、980L分が目的の成分

体積は温度に依存するので、どの温度で測定した体積であるかも考えないといけませんね。

面倒なので、取引上は重量で考えます。

1,000kgの液体の中に98%分だけ成分があったとしたら、980kgが目的の成分

こういう風に温度に依存しない指標で取引をします。

液体中に固形分を溶かせた場合、濃度が均一であるかどうかが論点になります。

サンプリングしても代表する濃度になっているかどうか疑わしいです。

部分的に蒸発して重量が変わっていたりしますからね。

粉体だとこの辺りの揉め事が1つ減ります。

重量測定は液体より簡単で、仮に蒸発などが起こったとしても重量が変わるため分かりやすいですね。

もちろんサンプリングの問題は液体と同じように残ります。

重量の話だけなら、完全に乾燥した粉体とするべきですが、必ずしも全ての粉体に当てはまるわけではありません。粉体の発塵を抑えるなど特殊な目的で、一定の水分を含ませた粉体として運搬する場合もあります。この辺りの取引は問題となりやすいです。

取り出しロスがない

液体中に溶かせた粉体を取り出そうとしたとき、必ずロスが起こります。

これはユーザーのプラント能力や生産状況によって変わるかも知れませんね。

そうするメーカー側で1,000kgの液体中に980kgの粉体を入れていたとしても、ユーザーでは950kgしか取り出せずに残り30kgは廃棄せざるを得ない場合もあります。

粉体で取引すれば、こういうもめ事は一般には無くなります。

安定しやすい

粉体は安定しやすい方向にあります。

「運搬しやすい」という理由の1つに「詰まりにくい」という特徴を紹介しました。

これも安定という意味で当てはまります。

また、粉体が溶媒・酸・アルカリに溶けた状態で居ると、反応が進んでしまうかも知れません。

もちろん粉体で運搬しても温度条件による変性はありますが、液体よりは条件が緩めです。

リスクを覚悟して液体として運搬にするには、他のメリットが無いと難しそうですね。

設備上は面倒

粉体は運搬や取引などに大きなメリットがあります。

逆にデメリットは、設備が複雑になること。

遠心分離機・乾燥機・秤など特殊で高価な設備が必要になります。

購入も高ければメンテナンスも高いです。

壊れます。

生産技術系のエンジニアとしては粉体設備はなるべく扱いたくありません。

このデメリットよりも、運搬や取引のメリットの方が勝っているということですね。

参考

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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

粉体原料は「扱いにくい」というイメージがある一方で、実は多くのメリットを持っています。化学プラントにおける原料の選定では、安全性・設備費・運用効率を考慮し、粉体の特性をうまく活かすことが大切です。

化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)

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