化学プラントの主役はプラントオペレータです。
機電系エンジニアといえどもプラントオペレータに関する知識は知っていた方が良いです。
オーナーエンジニアとしての価値を見出すために必要。
ここを疎かにするなら外部のプラントエンジニアリング会社で十分です。
オペレータの問題は根が深いですが、表面的にでも知っておいた方が良い情報をまとめました。
仕事内容
化学プラントのプラントオペレータの仕事内容を紹介します。
実はSDMがあるかどうかで分かれます。
運転時
運転時はプラントオペレータは交代勤務をします。
化学プラントのオペレータというと、DCSに向かって監視操作しているイメージですよね。
だからこそ楽そうに見えます。
連続プラントやバッチプラントでも自動化が進んだ工場では、その傾向は強いでしょう。
交代勤務という不規則な生活にさえ耐えることができるなら、他の製造業のようなキツさは少ないでしょう。
でもこういう例は上澄み中の上澄み。
大多数の化学プラントは自動化も進んでいなければ、そもそもDCSすら制御目的ではなく監視目的だけだったりします。
人海戦術の手動作業がまかり通っている世界です。
バッチ系化学プラントでは、粉体の仕込みや充填・液体のサンプリングや分液などの現場作業があります。
特に粉体の仕込みや充填作業は3K作業そのもの。
体力のある若いうちならまだ許容できても、年を取ってくると確実に心が折れます。
SDM時
SDMの時はプラントオペレータは運転の仕事がありません。
正直に言うと暇になります。
製造部の管理者はこの人たちに何かしらの仕事をしてもらうことを考えます。
一般的には以下の仕事をするでしょう。
運転のような定常的な作業ではなく、非定常な作業が多いです。
どちらかというと頭脳労働の要素が強いでしょう。
そもそも運転でも手の器用さを使うような技術があまりないのが化学プラントの特徴。
運転時にも電車の運転管理に近いようなタイムマネジメントの部分がありますね。
時間の使い方
プラントオペレータの時間の使い方を紹介しましょう。
SDMでは昼の勤務と同じ扱いなので、特殊な運転時のみ解説します。
90分1コマ
プラントオペレータの仕事は90分1コマ程度の区切りをします。
90分経ったら計器室内の休憩所で数分休むサイクルを4~5回繰り返して、8時間経ったら次の勤務者に引継ます。
90分という時間間隔は工事会社の現場作業も同じ。
夏場は熱中症の問題があるので、少し早く繰り上げることが多くなっています。
大学の授業も同じような感じですね。
昼休みなし
プラントオペレータは昼休みという決まった時間がありません。
交代勤務者の間で時間調整をして、食事を取ります。
食事を取ったらすぐに作業に戻ります。
結構嫌ですよね・・・。
たばこ禁止
休憩所ではたばこのコミュニケーションを想像する人もいるでしょう。
たばこを吸う人が多く、たばこ部屋に人が集まるので会話が盛り上がる。
一昔前まではそうでした。
でも、さすがにたばこ部屋を禁止している会社も増えてきています。
たばこを吸えない以上、休憩と言ってもスマホを見るくらいしかありません。
休憩をしていても無線で運転状況を常にキャッチしているので、そもそも落ち着いた休憩自体ができず会話もしにくいので、辛い休憩になってきています。
シフト調整
プラントオペレータは3交代が基本でしょうが、完全に決まったローテーションをできる会社は少ないでしょう。
というのも、早出や残業で対応しないといけないくらい人が少ないから。
その割に有給の取得を推奨されているので、勤務調整が結構大変です。
毎月中旬~下旬には翌月のシフト調整をします。
全員の希望を聞いて、不公平感が無いように調整する。
日本ならではの光景です。
組織構成
プラントオペレータの組織構成を紹介しましょう。
いわゆる班制度を取っていることが多いでしょう。
班長-副班長-班員
という構成です。
化学プラントの1プラントなら2~4人くらいの班で構成します。
- 自動化が進んでいるプラントほど人数が少ない
- 仕込などの手動作業が多い昼間に人を増やす
- 副班長が1プラントを見る
例えば3プラントを回す課があれば、班長が1人・副班長が3人・班員が3~6人という感じです。
年齢構成
プラントオペレータの年齢構成は極めて大事な要素です。
基本的には全年齢で均一になるようにするのが理想。
でも実態はかなりのバラつきがあります。
- 50歳以上でオペレータをしたいと思わない
- 30歳くらいまでの人でオペレータを辞めたいと思う
- 就職難などの影響で採用人数が偏る
最近は50歳を越えてプラントオペレータをしているケースの方が少ないですね。
50歳を越えて交代勤務をするというのは体力的にとてもつらいです。また、50歳を越えるとその組織の中ではどうしても浮いた存在になってしまいます。そこで工場としては、別の仕事を担当してもらおうと部署や役割を変える方向に行くでしょう。
定期採用
プラントオペレータは定期的に採用をします。
就職情報誌で「毎月のように募集を出している会社はブラック」という意見もありますが、
化学プラントでは必ずしもそうでもありません。
年齢構成を均一にするためには定期的な採用が必要な面があるからです。
臨時採用
化学プラントでは臨時採用をする場合があります。
これは新プラントを建設するという場合。
プラントを建設すると管理者・オペレータともに必要となります。
他のプラントと同じレベルにすることが求められるので、結構難しい問題があります。
- 現在のプラントから人を集める
- 外部から人を募集する
この2つの作戦で、他のプラントと同じような一定のレベルの組織を構築しないといけません。
頭数が揃っても組織としてまとまるには相当の時間が掛かります。
5年では足りず10年くらいは掛かるでしょう。
学校の学年が変わってクラス替えをしたり、中学から高校に上がったときに人が大きく変わりますよね。
あれがもっとシビアになったパターンと思えば良いです。
学校レベルなら1か月2か月もあれば新たな集団ができますが、年を取った集団はなかなか変わりません。
5年経っても、「○○は△課出身だから、自分とは考えが会わない」という意見が出てきます。
学歴
プラントオペレータの学歴を紹介します。
ほぼ高卒です。
地域の技術系の高校から採用することが多いです。
プラントオペレータは勤務地が固定化されているので、地元の高校のマンパワーを使うのは合理的です。
班構成の組織で定年まで同じ仕事をするので、同じ学校で学んだ人ほど仕事がしやすいです。
学歴自体はあまり重要でなく、学校の勉強ができるかどうかもあまり重要ではありません。
重要なのはチームワーク・コミュニケーション・言語化。
一般にプラントオペレータは口下手です。(失礼な表現ですが・・・)
ここで自分の意見をちゃんと言える人は相当目立ちます。
言語化ができる人は、その班をまとめようとする傾向が強く、意見を上司に上げることもできます。
上司から見ると相当ありがたい存在になります。
オペレータがどんな風に思っているか知りたい、と上司は思いますからね。
ということと、オペレータの仕事の優劣をつけるのが難しいからこそ言語化能力で差をつけるのは分かりやすいからです。
実際の運転が得意か不得意かという面だけを見てはいけません。
オペレータレベルではコミュニケーション力よりも現場の作業を考えがちですが、チームワークが大事な化学プラントではコミュニケーション力が相対的に重視されます。
だからといって技術力を疎かにするという意味ではありませんよ。
キャリア
オペレータのキャリアを簡単に紹介しましょう。
課長まで昇進
プラントオペレータとしての成功例は課長まで昇進することです。
課長まで昇進するためには、オペレータとしての技能以外にコミュニケーション力や調整力などさまざまな素質が必要です。
現在では、就職氷河期で大卒だけどもプラントオペレータをしていた、という人が課長になる可能性があるでしょう。
昔は、コミュニケーションに多少の難があってもプラントオペレータから課長に上がるというケースはありました。
頑固おやじみたいなイメージで、関係部門からするとやりにくいですが、オペレータには評判が良いという例です。
主任止まり
最近のプラントオペレータで優秀な人は主任まであがることがゴールとなるでしょう。
管理職にはならずに、オペレータを取りまとめる係です。
学校でいうと管理職が先生で、主任が学級委員長みたいなイメージです。
交代勤務をするわけでは無いので手取りは下がりますが、健康面ではメリットがありますね。
班長止まり
プラントオペレータは普通は班長までは上がります。
年次だけで無条件で副班長までは上がり、大きなミスがない人は班長まで上がるでしょう。
人数が少ないプラントオペレータだからこそ。
役職が上がったら給料があがるので、モチベーションになりやすいですね。
班長以降は給料が上がらない割に責任が増えたりするので、意図的に班長で止まろうとする人もいるくらいです。
出向・転籍
プラントオペレータで出向・転籍するケースは多いです。
これは50歳以降のオペレータに多いです。
主任になれなかったオペレータで一定年数を過ぎたという例。
肉体労働はきつく、組織の中では年寄りということで浮き気味になり、居づらくなります。
過去の経験を活かした仕事を探す人事が出向や転籍というルートを提案します。
中でもオペレータからエンジニアという例は結構あります。
最後に
化学プラントのオペレータの情報をまとめました。
勤務形態・時間の使い方・組織構成・学歴・キャリア
急速に世代交代を行っているので、ちょっと前の考え方がすぐに廃れる分野です。
オーナーエンジニアとしては非常に大事な知識。
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