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保全

将来用途を含めないプラントを建てた後の悲劇

将来用途 保全
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新設プラントの案を決定する前には、いろいろな検討します。経済性を検討して最終決心をして、プラント設計や建設をしてきます。この段階になってしまったら、もう引き戻せないプラントの一生に影響を与える話を考えようと思います。

プラントエンジニアなどそのプラントの設計工事に関わる機会が少ない場合には気が付きにくいですが、長年そのプラントを担当しているユーザーエンジニアが感じる負の遺産の部分です。

特定の生産品目に特化

プラント建設は膨大な費用が掛かるため、できるだけ投資金額を最小にしたいと考えることは普通です。

この場合、建設対象の品目に対して、最低限の設備や建物でプラントが構成されます。投資が厳しい場合には、さらに設備を削れないか、安価な設備にできないか、自動化を削減できないか、といった「先送り」の設計変更がなされます。

生産品目が決まっていて他の品目が入らない連続プラントではなく、いろいろな品目を入れないといけないバッチプラントでは、実は後々大きな問題を抱えます。

最小の設備投資は、例えば以下のようなイメージです。

新設

これはバッチプロセスで5つの工程から構成される生産品目で、それに合わせたプラントが建設されるイメージを示しています。5つの工程に必要な設備だけがプラントに含まれます。

プラント建設が終わって商業生産を行いしばらくしていると、その生産品目が売れなくなってきます。この場合に、別の生産品目を導入することが考えられます。

例えば以下のようなイメージです。

改造

工程は5つであることは変わりありませんが、2番目と5番目の工程だけが既存生産と同じ使い方をします。1番目と3番目は新しい工程となり、新しい設備が若干必要になります。6番目の工程は完全に新しい工程です。

こういうツギハギの改造を続けていくと、プラントとしてはどうなるでしょうか。

各段階での投資を最小限にして得をしているように感じるでしょうが、長年続いていくと結構悲惨なことになります。

改造ができなくなる

改造を繰り返していくと、法的要求の範囲内で安価で無限に改造ができるように錯覚します。ところが何かしらのポイントで改造ができないという限界点を迎えます。

  • 敷地面積が足りない
  • 配管や配線を通すスペースがない
  • 電気容量が足りない

限界点を迎えた場合、急に大きな投資が必要になります。見定めをしないまま都度改造していると、こんなはずじゃなかった・・・という大問題になります。

最悪なのは、実行段階で予算が足りなくなってプロジェクト中断。このレベルになると、エンジニアの存在価値を疑われます。その一歩手前で、FS段階で気が付いて中断するということが現実的でしょう。本当なら、プラントの能力をしっかり評価して常時見える化をしておくべきでしょう(例えば、敷地は○○%、配管は△△%を占有などと)。

配管や配線はその気になれば、撤去すれば余裕が出ると思うでしょう。ところが、ツギハギを続けていくと、どの配管が今は使っているかを把握することが極めて難しくなります。この瞬間に、取捨選択にコストが跳ね上がり、誰も検討できなくなります。プラントの首が回らなくなっていきます。

外部委託へ

既存プラントに改造をするために費用が掛かるとなれば、外部に委託することが現実的になります。

自社もしくはグループ会社以外の第三社の外部会社に委託します。これはコストを下げることに有効です。外部委託では、いろいろなメリットが出てきます。

  • (当然)費用が安い
  • 社内の過剰な品質や安全の活動に巻き込まれない
  • プラントの将来性、設計保全、安全安定な運転などを考える必要が無い
  • プラント稼働率を確保したり、作業員を確保したりする手間から解放される

自社工場の技術者の存在意義を否定してしまいますね。

自社プラントの競争力を高めるためには、外部委託と勝負しているという危機感が必要です。

初めから複数の生産品目を導入

1つの生産品目のためにプラントを設計すると、後で首が回らなくなることを述べました。

であれば、最初から複数の生産品目を入れる場合はどうでしょうか?この場合は、被害度は減少する方向です。

ただし、複数といっても工程がほぼ同じであったり、グレードが少し違うという程度であれば、あまり意味がありません。それぞれの品目で共通設備がありながら、専用設備もある、という状態が好ましいです。

その代わり、プラント建設は大変になります。特に切替のための配管構成を練るのが大変になるでしょう。

できるだけ余裕を

生産品目が1つでも複数でも、余裕がないプラントというのが結局は問題になります。

バッチの化学プラントであれば、例えばタンクや反応器を最低限にすることでしょう。これらが後々で足りなくなり追加設備が必要となります。プラントの建物そのものが足りなくて、設備を設置できず、建物から増築しないといけないことになるでしょう。

ここはしっかりと場合分けをして考えましょう。

  1. 最低限のプラント → 必要なプラントや設備を追加
  2. プラントに余裕場所を設けるが設備は最低限 → 必要な設備を追加
  3. プラントに余裕場所を設け、余裕設備も設置 → 追加投資が最低限

「プラントのサイズ」、「設備の数」という2つだけを要素としても、初回に(100%,100%)で建ててしまうか、(120%,100%)、(120%,120%)とするかで3パターンできます。それぞれ追加のコストが変わります。

コストがどんどん上昇するこのご時世では、追加投資を後に回せば回すほど不利になります。中途半端に余裕を持たせてしまうと、結局は二重投資が発生することも考えられます。

投資のタイミングとその内容を考えるという意味で、まさに戦略が求められる世界。プラント建設はこの世界で考えるべきでしょう。

参考

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最後に

将来用途を含めないプラントを建てると、後で改造しようにもツギハギだらけになり、最後は首が回らなくなります。そして外部委託を検討することになるでしょう。

ある程度の余裕を持たせたプラントは、初回投資としては目立ちますが、長期的には有利に働きえます。投資のタイミングとその内容を戦略的に考えることが大事だと思います。

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