コスト削減はあらゆる業界で取り組むものです。
プラントの工事も全く例外ではありません。
ところが、工事の見積をするときに、いくつかのパターンを真面目に検討しようとしたら、膨大な時間が掛かります。
一見してシンプルな工事方案を1つ選び、精見積をしていくことでしょう。
それが最適か?ということを考えるには、先にラフな検討をして選択肢を絞り込むことが大事です。
キーワードは土建です。
具体例を紹介しましょう。
小さな装置
プラント内の小さな装置を付けたり外したりする工事を考えましょう。
化学プラントの場合、一般に大きな建築物の中に設備を入れています。
そこに設備を入れたり出したりしようとしたら、設備の大きさが重要ポイントとなります。
まずは簡単な例として小さな装置を考えましょう。
今回は4階建ての建物を考えます。
装置を建築物から取り出すには、上から取り出すか横から取り出すかの大きく2択となります。
小さな装置といえども人間の手では持ち運びできないので、クレーンなどの重機を使います。
重機で設備を吊るには、上部に空間が必要。
そこで上から取り出すという選択肢が出てきます。
小さな設備で人が何人協力すれば取り出せる設備なら、横から取り出すという選択肢も出てきます。
上からと横からのどちらが安いでしょうか?
答えは一般には横からの方が安いです。
かんたんに判断するには土建工事の量を数えましょう。
上から取り出すときには床を3枚はがさないといけませんが、横から取り出すときには0枚です。
この差でコストがほぼ決まってきます。
この場合なら、上から取り出す検討はせずに、横から取り出すことで精見積しましょう。
大きな装置で障害なし
大きな装置を取り外すときを考えましょう。
上部に障害がほとんどないケースを考えます。
この場合、設備を上から取り出す方が有利な場合が多いです。
上から取り出すときには床2枚、横から取り出すときには床1枚をはがす必要があります。
床1枚分の差があります。
この差は、設備を取り出すときのコスト差を考えることになります。
設備を取り出すためには、横から取り出す方が多くの準備や労力が必要です。
設備の大きさにもよりますが、床1枚分くらいの差があってもおかしくありません。
先に設備の取り出し・取り付けの難易度から見ずに、床の枚数などの土建工事を先に考えるということがポイントです。
機械エンジニアだとどうしても設備側を主体に考えてしまいますから、全体バランスを考えるときには注意しましょう。
大きな装置で障害あり
大きな設備を取り出し・取り付けするときに、障害物がある例を考えましょう。
プラントの場合には、各階に設備が所狭しと配置されがちです。
上から設備を取り出そうにも、上部には障害物があってもおかしくありません。
この場合でも、上から設備を取り出す方が安くなるケースが多いです。
床の枚数については障害なしのケースと差はありません。
上から取り出すときには、障害物である設備を取り除かないといけませんよね。
この分だけ上から取り出す方が高いと勘違いしてしまいます。
ところが、横から取り出す場合でも、上部障害物を取り外さないといけない場合が多いです。
障害物は上からでも横からでも邪魔になってしまって条件は同じとなると、上から取り出す方が安いと判断できます。
土建工事を少なくするコツ
大きな設備を付けたり外したりするプラント建設では、土建工事を少なくするコツが重要です。
すぐ上にも記載している吊り耳もそうですが、例えば以下のような例があります。
- 吊り耳を梁に付けておく
- 床をワンタッチで取外せるボルトにする
- 床でなくてマシンハッチにする
- 中間脚を活用する
ちょっとした工夫で建設時には気が付きにくいですが、更新をするときに限られた日数で工事をしようとしたら大きく効いてきます。
設備が壊れたときに慌てても遅いです。
建設時や改造時にしっかり考えましょう。
参考
関連記事
最後に
化学プラント工事のコスト削減は土建から考えましょう。
床の取外し枚数をターゲットに、設備の取外しのコストを粗く見積する時の考え方を示しました。
結果的に上から取り出す方が安いというケースが多いですが、床を基準に考えると比較の軸ができあがるでしょう。
化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。