内容物に対する配管設計のグレード分け(pipe grade)をしてみます。
配管製作上のグレードというわけではなく、設計上の分け方の話です。
配管内容物に対してどういう仕分けをするかは、業界だけでなく工場でも分かれます。
○○の内容物に対して、どういう配管だったの良いの?
と製造部門などから問い合わせを受けたときに、分からない・・・では問題です。
こんな考えで判断すれば大きくはズレないだろう、という指針の1つになれば幸いです。
ランク分けの思想
配管内容物でランク分けをするとき、いくつかの指標を組み合わせます。
- 圧力
- 温度
- 危険物
これくらいの指標は配管設計者であれば、すぐに思いつくでしょう。
他には以下のような指標も考えられます。
- 毒劇物
- 長期的に人に影響を与える物質
- 環境に影響を与える物質
配管設計の基本にある圧力・温度という機械的な性質よりは、化学的な性質の方が配管設計的には大事です。
とはいえ、機電系エンジニアとしては化学的な知識があるわけではないし、化学l物質の種類に個別設計するわけにもいきませんので、汎用的な設計をしてどんな内容物でも腐食性さえ考慮すれば大体OKという考えになります。
配管設計でランクを分けるという時は、漏れに対する耐性を上げるという捉え方でおおよそOKです。
耐食性を上げるというだけではないシステム全体でレベルを考慮することになります。
一方で運転の取り扱い上はこのランクとは異なるので、製造部とは意思疎通でズレる要因になりえます。
例えば低濃度の苛性ソーダは取り扱い上は危険ですが、配管設計上はランクは高くないでしょう。
高ランク
高ランクの配管設計が要求されるのは以下のようなケースです。
- 1MPaを越える圧力で取り扱う配管
- 150℃を越える温度で取り扱う配管
- 燃えやすい内容物を取り扱う配管(一石など)
- ガスを吸ってしまうと致命的になる内容物を取り扱う配管(毒物など)
ランクの高低の閾値は工場の考え方によっても、変わってきます。
バッチ系は連続系に比べても低い条件で、ランクを高く設定します。
ランクの低い配管なら汎用性やコストを重視しますが、高ランクになると性能重視(安全性重視)にしたいです。
例えば、肉厚を上げる・フランジではなく溶接接続にする・高耐食性の材質にする・口径を上げる・・・などの方法です。
私の担当プラントでは全配管中の5%以下くらいしか該当しない、という程度の高ランクとして考えています。
中ランク
中ランクは高ランクと低ランクの間のほとんどが該当します。
- 危険物
- 劇物
- 長期的に人や環境に影響を与える物質
- 40℃以上の、火傷する可能性のある配管
- 50kPaを越える、人がケガする可能性のある配管
危険物や毒物劇物という見るからにアブナイもの(一般的には良く分からない内容物で、不気味と言われそうなもの)や、人がケガをするような分かりやすいものは、ランクを上げようという気になります。
すぐには影響が出ない長期的に影響がありそうな内容物が、ケアされにくいです。
配管ではありませんが、アスベストもそういう経緯がありましたね。
中ランクをこれよりも細かく分けるかどうかは、会社や工場によって分かれる部分があります。
例えばガスケットやフランジとネジのどちらの接続にするか、という部分で差を作れてしまいます。
化学系のエンジニアは、化学的に危険度が違うから分けて当然!と力強く言う印象を持っています。
差をあまり設けないと設計をしている場合には、言い方を注意しましょう。
同じ中ランクでも高危険度側の物質に対応できるような設計にしていると言わないと、中ランクの中危険度という平均に合わせた設計と捉えられる可能性があります。
低ランク
低ランクはこれは安全と分かりやすいく言える部類に限定されます。
- 水
- 大気圧
- 常温
この辺りは無条件で低ランクに入ります。
漏れても基本的には問題ないと言えるものです。
もう少し条件を緩くするとしたら、以下のようなものも低ランクに入れる場合があります。
- 微量のガスを吸引する配管
- 引火点が高い危険物
- 薬剤処理をした水
この辺りは人や環境への影響も少ないと判断して、低ランクと捉える場合があります。
漏れても補修を急がないで運転を継続する選択をするようなものです。
施工性を考えてフランジ接続ではなくねじ込み接続にしたり、ボルトナットはほぼ交換しなかったり、異種金属接触が起こっても気にしなかったり・・・。
悪く言うと雑に扱ってしまう配管です。
個人的には危険物は低ランクにしない方が良いと思いますが、三石や四石であれば可能性はあります。
参考
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最後に
バッチ系化学プラント向けに内容物に対する配管設計のグレード分けをしてみました。
高・中・低の3ランクにしましたが、大多数は中ランクです。
仕分けの判断基準はいっぱいあります。
会社や工場で思想が分かれると思いますが、何を重視して選んでいるかは意識しましょう。
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