化学プラント向けの配管接続方法としてフランジ接続(flange)と溶接接続(welding)があります。
この2つの特徴を幅広く理解して、使い分けることはエンジニアとしてとても大事です。
例えば、フランジ接続を基本としている工場で、「溶接接続はとにかくありえない!」って頭から否定してしまうと、かえって自由度を無くします。
もちろん逆も成立します。
できるエンジニアは違いが分かる、ということでしょう。
この記事を読むと、フランジ接続と溶接接続の違いが理解できます。
フランジ接続(flange)
フランジ接続を溶接接続との比較としてメリットを考えましょう。
フランジ接続のメリットは項目数としてはあまり多くはありません。
配管の取り付け・取り外しができるという最大のメリットが、圧倒的に効果的だからです。
取り付け・取り外しが簡単
一度プラントに取り付けた配管もしばらく使っていると劣化します。
この時に交換のための配管取り付け・取り外しは絶対に発生します。
増改築の多いプラントでは、フランジをあえて切り込むことで、改造コストの増加を抑えるという意味もあります。
バッチ系の化学プラントでは、この思想を強く持っていると有利でしょう。
現地で溶接できないような狭い場所でもフランジ接続なら接続可能な場合もあります。
火を使わない
フランジ接続は溶接接続をしないために、現地で火を使いません。
引火爆発するプロセス液を扱う化学プラントでは、その近くの配管で溶接のために人を使うことはとても慎重になります。
時には、はっきりと嫌と断られる場合も。
防炎シートで周囲を囲って、携帯用ガス検知器を常備して、溶接をするくらい手間を掛けます。
溶接は交換作業そのものも時間が掛かりますし、運転を考えたメンテナンスの意味ではフランジはとても有利です。
点検清掃に使える
フランジ接続は、配管内部の点検口の代わりにも使えます。
スラリー系など閉塞のリスクが高い工場では、特に好まれます。
洗浄を重視するプラント、例えばバッチ系の切替工場でもフランジは有効でしょう。
溶接接続(welding)
溶接接続のメリットを考えましょう。
ここでいう溶接接続は、フランジ接続をせずに溶接で繋ぐという意味で、特に突き合わせ溶接を対象にしています。
高圧ライン向けの差し込み溶接だと若干の差があるでしょう。バッチ系化学プラントだとほとんど出番がありません。
溶接工数が少ない
溶接接続は溶接工数が少なくなります。
溶接をするのだから工数が上がって当然だろう!
と言われそうですが、一般には違います。
フランジをパイプと溶接しようとすると、一般にはパイプの内側と外側の両方を溶接します。
溶接でパイプを直接つなげる場合に比べると、これだけで単純に2倍。
フランジで接続するためには、フランジユニットが2組必要なので、2×2=4倍。
溶接接続はフランジ接続の4倍必要という概算となります。
もちろん、内側外側の溶接回数を考えると単純な4倍とはなりませんし、スタブエンドを使うと溶接数そのものは少なくなります。
そういう例外は除いて、一般的にという位置づけです。
漏れのリスクが少ない
溶接接続は漏れのリスクが少ないです。
ガスケットからの漏れがないからです。
化学プラントでも大気に漏らしたくない・空気や雨と接触したくないというプロセス液の場合は、溶接接続が対策の1つとなります。
ただし、腐食性が少ない液に限定されるでしょう。
腐食性が高い液体の場合は、グラスライニングなどのライニング配管を選択する場合があるからです。
腐食性は関係なく、ユーティリティ向けの鉄系の配管で長期間使う場合にも溶接接続をしていると安心感が違います。
ガスケットやボルトの劣化を気にしない
溶接接続はガスケットやボルトの劣化を気にしなくて済みます。
プロセス液の漏れを気にしなくていいということが、そのままガスケットやボルトナットの話に繋がります。
ガスケットは定期的に交換が必要ですし、ボルトナットは放置していると錆び切ってしまって取り外しがとても難しくなったりします。
軽い
溶接接続は軽いです。
当然です。
フランジという重たい部品がないからです。
切替配管が多い工場ほど、配管の取り付け・取り外しの重さに悩まされます。
フランジ接続をできるだけ少なくして軽くしようという思想が、ブレイクスルーとなる課題を経験したこともあります。
安い
溶接接続は結果的に安いことが多いです。
溶接工数が少ない・フランジやガスケットなどが少ないという点が、溶接の難しさなどを考慮した労務費に勝つ場合においてです。
作業現場に依存する部分が多いので、必ずとは言えませんが確率は高めでしょう。
参考
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最後に
化学プラント向け配管のフランジ接続と溶接接続の比較をしました。
私の担当工場ではほとんどフランジ接続ですが、増改築や火の話が重視されています。
それでも溶接接続はちゃんとメリットがあり使い分けを意識しています。
どちらが良い悪いと完全には言い切れないので、特徴を正しく理解したいですね。
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