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配管

P&ID記号の基本|機器・配管・バルブの見方と実務での使い方を解説

P&IDシンボル 配管
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プラント設計や保全に携わるエンジニアにとって、P&ID(配管計装図)の読解は基本スキルのひとつです。しかし、「記号が多すぎてどれが何を指しているのかわからない…」と感じたことはありませんか?

この記事では、P&IDでよく使われる「機器・配管・バルブ」記号の読み方や意味を初心者向けに解説します。現場で実際にどう使われているかも交えながら、実務で迷わないためのポイントを紹介していきます。

設備記号

P&IDの設備記号を解説します。

タンク

タンク類の記号です。

バッチ系化学プラントで使う記号は以下の5つくらいでしょう。

タンク類

個別に解説します。

コーンルーフ

コーンルーフタンクの記号は次のとおりです。

コーンルーフ

コーンルーフってコーン上の屋根という意味ですよね。コーンだから三角錐。円筒形のタンクの天板が三角錐になっています。

これはシンプルに液を溜める貯槽として使います。天板をコーン上にしているのは強度を確保するため。

容量が小さいタンクなら、平天板つまり円盤状になっているものもあります。10m3~20m3くらいまでは平天板のものもあります。

ホッパー

ホッパーの記号は次のとおりです。

ホッパー

ホッパーは粉を貯めるタンクです。

コーンルーフが液を溜めるタンクなら、ホッパーは粉を貯めるタンク。粉は自重落下させて排出するために、底がコーン上になっています。

コーンルーフでなくてコーンボトムですね。

耐圧槽

耐圧槽の記号は次のとおりです。

耐圧槽

耐圧槽は言葉通り圧力に耐える槽です。

バッチ系化学プラントでは加圧側で使うことはなく、負圧側で使うばかり。コーンルーフやホッパーが大気圧下で使うのに対して、耐圧槽はFV~大気圧下での使用を考えています。

FV下でもタンクが変形しないようにするために、タンクの構造を強化しています。

撹拌槽

撹拌槽の記号は次のとおりです。

撹拌槽

撹拌槽をタンクと表現するのは若干の抵抗があります。

ただし、バッチ系化学プラントでは撹拌槽がメジャーな設備なので、化学プラント3大設備であるタンク・ポンプ・熱交換器というグループの中ではタンクに分類した方が良いという判断をしています。

撹拌槽は耐圧槽に攪拌機を付けて、ジャケットを付けたもの。攪拌機を付けて各種の化学反応をさせます。化学反応で発生する温度変化を制御するために、タンクの外側にジャケットを付けて冷却水やスチームを通します。化学反応は大気圧下だけでなくて負圧下でも取り扱いますので、タンク形状は耐圧槽と同じ構造にします。

塔の記号は次のとおりです。

塔

塔も連続プラントなら別のカテゴリーに当てはめるでしょう。バッチ系化学プラントでは塔の種類が極めて少ないので、タンクに分類しても良いと思っています。

塔も専門的には色々な分類がありますが、バッチ系化学プラントでは規則充填物・不規則充填物の違いがある程度です。記号としても単純な形状でほぼOK

ポンプ記号

ポンプ類の記号です。

バッチ系化学プラントで使う記号は以下の3つくらいでしょう。

ポンプ類

渦巻ポンプ

渦巻ポンプの記号は次のとおりです。

渦巻ポンプ

汎用的な液移送ポンプの記号として使います。

渦巻ポンプだけでなくキャンドポンプやマグネットポンプなども使います。

円と台形だけで書けるので、簡単に書けますよね。

横型ポンプをイメージしていますが、竪型ポンプなら記号を変える時もあります。

真空ポンプ

真空ポンプの記号は次のとおりです。

真空ポンプ

水封式真空ポンプをイメージしています。

水封を意識してインペラの形状を記号に表しています。

系内を真空にするための装置として各種設備がありますが、水封式真空ポンプが圧倒的です。

記号もほぼ水封式だけを使います。

エゼクタ

エゼクタの記号は次のとおりです。

エゼクタ

エゼクタをポンプのカテゴリーにするのはあまりにも横暴ですね。

水封式真空ポンプに対して、別の真空源としてエゼクタがあるという程度の理解でOKです。水封式真空ポンプでも前段にエアーエゼクターやスチームエゼクターを使いますし、微負圧を発生させるための水エゼクターなどもあります。いずれも同じ記号を使います。

熱交換器記号

多管式熱交換器

多管式熱交換器の記号は次のとおりです。

熱交換器

多管式熱交換器もバッチ系化学プラントでは極めて記号。

標準形のみを使用します。

管内・管外の差がある程度でしょう。

連続プラントなら色々な記号を使いますよね。

熱交換器の数自体はバッチ系化学プラントでもそれなりにあるのですが、

そのほぼ全ては、この記号な形状です。

プレート熱交換器

プレート熱交換器の記号は以下の通りです。

プレート

四角形ですね笑。

複雑に書いても意味がないので、これくらいで十分でしょう。

入口出口の配管をしっかり描いていれば、誤解もおきません。

配管付属品記号

P&IDのルールはJISでも一応決まっています。

JIS Z 8209 化学プラント用配管図記号

P&IDのツールは世の中にいろいろあります。

この図を使っても良いのですが、社内の独自ルールだけでもかなり仕事ができます。ルールが各社で違い過ぎるので、LEGENDという記号の意味を示す説明書きが必要になるくらいです。この辺は、ラインスペックなどと同じです。

記号はツールを使っても良いですが、CADで自作しても良いですし、何ならExcelなどでも容易に作れます。付属品記号のリストを数が多いので、見る気になりません。

これを頻度の高い順に適当に並べてみました。

ボール弁

一番初めはボール弁です。手動です。

ball

ボール弁はバッチ系化学プラントに限らず使用頻度が極めて高いですよね。真ん中の〇の部分がボールを表しています。〇の左右には△を横に並べています。○が付いていない形状がゲート弁を表します。

というより、ゲート弁が記号の基本でしょう。

△を2つ並べるのはゲートで仕切る部分を細くしたケーシングをイメージするからでしょう。

なお、自動弁は以下のような記号が一般的です。

自動弁

シリンダをイメージした長方形を付けます。ボールに相当する〇はありませんね。面倒だからです。〇を書かないと自動弁の型式が分からなくなるので、意図的に書いている会社もあるでしょう。この辺は本当にバラバラです。

逆止弁

次は逆止弁です。

逆止弁

逆止弁は使う場所は限定的です。

逆止弁は△を1つだけ使います。△の相手方には|を付けます。これで片側にしか流れないというイメージを示します。逆止弁は他にもN形に記載するルールもあります。N型の方がExcelで書きにくいですよね。

ダイヤフラム弁

バッチ系化学プラントで大活躍のダイヤフラム弁

記号は以下のような感じです。

ダイヤフラム

上にある円弧状の形状。何でしょうか?

多分、ダイヤフラム膜をそれっぽく表現しているのだと思います。

厳密には違いますよね。

でも記号上はそんなことはどうでもいいのです。

膜っぽく見えればそれでOKです。

グローブ弁

グローブ弁の記号は以下のとおり。

グローブ弁

ボール弁の〇を●に中塗りしただけ。ボール弁と区別をつけるためですね。グローブ弁の弁体を意識して□にしてもいいですが、P&ID上では判別がしにくいです。ここは、判別のしやすさを重視した方がいいです。グローブ弁の方がボール弁よりマイナーなので、中塗りをする。そんな感覚でいいのではないでしょうか。

安全弁・減圧弁

化学プラントの安全装置である安全弁。記号は以下のとおり。

安全弁

バネをイメージした三本線が特徴的。安全弁は吹き出し先が90度変わるため、△の形状を90度傾けています。減圧弁は同じようなノリで以下のように書きます。

減圧弁

減圧弁もバネがあるので三本線。流れ方向が変わらないので、△は180度方向に2つ付けます。

フラッシュ弁

釜底弁として使用するフラッシュ弁。記号は以下のとおり。

フラッシュ弁

△を45度ずらしています。フラッシュ弁の構造上、45度ずらして排出するからですね。最近は自動弁が一般的なので、シリンダ付きの記号にしてみました。

レデューサ

配管の口径を変化させるレデューサ。どこでも使用します。記号は以下のとおり。

レデューサ

台形を付けるだけ。シンプルですね。これは同芯レデューサの例です。

偏芯レデューサは以下のとおり書きます。

偏芯

これP&ID上では非常に見にくいです。誤解を招きます。そこで、水平側を強調するために直線を脇にそっと添えます。左側が下水平、右側が上水平です。

フレキシブルチューブ

配管の振動やずれを吸収するためのフレキシブルチューブ。記号は結構バラバラでしょう。

フレキ

今回は長方形に何となくグラデーションを掛けてみました。これでもOKです。一般的には長方形に蛇腹形状の模様を付けるでしょうか。何でも良いと思いますけどね^^

フレームアレスタ

逆火防止装置として化学プラントでも重要なフレームアレスタ。記号は以下のとおり。

・・・

あれ?

フレキシブルチューブと同じと思いませんでしたか?

そうです。

違いは長方形の長さ。区別はほとんどできません。フレームアレスタはガスラインに付いているので、そこで使い分けるしかないでしょう。

バッチ系化学プラントの場合、フレームアレスタの直近に窒素ラインを接続することが多く、窒素ラインにはフレキシブルチューブを付けることが多いので、本当に区別が難しいです。

  • ガスライン本体に付いているのがフレームアレスタ。
  • 支流である窒素ラインに付いているのがフレキシブルチューブ。

こうやって区別するのが現実的でしょう。

ストレーナ

異物除去としてバッチ系化学プラントでも多く使うストレーナ。記号は以下のとおり。

ストレーナ

Sを□で囲うだけ!これはバケットストレーナをイメージしています。Y型ストレーナならYの形をした記号にすることもあるでしょう。

トラップ

スチームの省エネ目的で使用するスチームトラップ。記号は以下のとおり。

トラップ

Tを〇で囲うだけ!ストレーナに続いて簡単すぎませんかね。〇にしているのはディスク型なのかフロート型なのか、どちらをイメージしているのでしょうか?私も分かりません。

参考

関連記事

P&IDについてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

P&IDのシンボルでバッチ系でよく使うものを解説しました。

P&ID図面は、ただの記号の羅列ではなく、プラント設備の「設計思想」や「運転方針」を伝える重要な図面です。

基本的な記号の意味を理解し、機器や配管、バルブの関係性を正しく読み取れるようになれば、設計の質やトラブル対応のスピードも格段に上がります。初心者の方は、まずは「よく使う記号」から覚えていくのがおすすめです。

化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。) *いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。

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