化学プラントのような設備改造が多い現場では、運転中に工事をする機会が結構多いです。
SDMに向けて設計や調達をしようとしても、納期が延びたりしてSDMに間に合わないケースが増えています。この場合、運転を止めないように工事をしないといけません。ところが、ここを真剣に考えていないと、結構罠にハマってしまいます。
すごく簡単な設備改造工事ですら、運転を止めて工事をせざるを得ないようになると大問題になります。オーナーズエンジニアの工事としては規模的には初歩的ですが、意外にも中堅・ベテランでも見過ごしてしまう問題です。小規模工事だから簡単であるはずで甘く見るのではなく、しっかりと取り組みたいものです。
1つ典型的な例を紹介しましょう。
ポンプの増設
今回の例はポンプの増設です。
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この工事はいくつかの理由が考えられます。
- 安定生産のために据付予備を置きたい
- 工事期間が確保できない中で、ポンプの更新をしたい
- 能力増強をしたい
単純に既存の設備を撤去して、新規の設備に置き換えることができません。P&IDを作る時も単純に工事範囲の着色をするだけでなく、コピーとはいえ横に絵を足すという手間も発生します。
それはまだ良いとしても、実際の工事計画を立てないと大きな失敗をしてしまいます。最悪のケースは、工事をするために生産を止めないといけなくなります。たかがポンプ1個、されど・・・です。
事前準備
SDMでポンプの増設工事が完成できなくて運転中に工事をしないといけない条件でも、SDM中に多少の準備が必要です。確実に必要なことは枝取りです。
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P&IDを作って将来の姿を考えるときに、運転でどのラインを使うかを最初に確認しないといけません。古典的ですが、紙に蛍光ペンで着色するのが一番確実です。今回の場合だと、赤の太線部の工事はSDM中に実施しないといけません。
たった2ラインの枝取りですが、これが致命的になります。細かい箇所のチェックをしようと思うと、紙に直接色を塗って、目と手を使って確認するのが最も簡単だと今でも思っています(製造現場ではもっと多くのラインをこうやってチェックしています)。
単純に枝取りをすれだけで、多くの場合はトラブルを回避できます。ところが、場合によっては以下のことも考えた方が良いでしょう。
- 枝取り部と新設ポンプ部の配管が短すぎて、配管調整ができない。この場合は、単管を付けるなどのスペースの検討が必要です。これはバルブとの接続作業の安全性を高める上でもとても重要です。
- ポンプの吐出圧力が高い、危険性が高いなどの場合は、吐出バルブは二重にしておくなど安全上の配慮が必要です。
- 枝取り配管の距離が長かったり、さらなる工事が考えられる場合は、フランジやバルブを追加して今後の改造範囲を最小化することも考えられます。
- 内容物がスラリー系など詰まる可能性がある場合は、吐出部は液が溜まる構造を避けた配管改造をしておくことが好ましいです。多少コストが上がっても既存の吐出部配管のルートを見直す方が良い場合があります。
すべてが求められるケースは少ないですが、かといって全く考えなくていいというものでもありません。ポンプ1個という簡単な工事に見えても、考えることはいっぱいあって、疎かにできないという気構えがあれば、大抵の問題は避けることができると信じています。
相当前から計画の共有を
上記の計画を立てる場合、相当前から計画の共有をしておきましょう。
配管設計や図面作成はもちろん、工事会社との調整も欠かせません。それ以上に大事なのは、製造現場や生産企画との調整です。運転中に工事が可能な案なのかを製造現場が納得感を持たないと、いざ工事をしようとしたときに「できない」という意見が出て、大問題になります。この場合は、生産計画を急遽見直さないといけなくなり、大炎上します。
オーナーズエンジニアならではの調整ですが、意外とサボってしまうエンジニアが多いです。ポンプ1個だからと甘く見ていると後で痛い目に会います。
基本的事項ですので基本に忠実に進めたいものです。
参考
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最後に
運転中に設備改造を行う場合は、普段より慎重に考えないといけません。たっとポンプ1個でも大きな問題になりえます。
P&IDを書いて、事前に準備するラインを考え、工事の安全上の問題や運転条件を踏まえた改造を考えていきます。
ラインを増やすということはそれだけで難易度があがるのが、化学工場っぽい気がします。
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