化学工場では、安全で安定した運転のためにさまざまなマナーやルールが存在します。しかし、現場経験の浅い人や新しい従業員にとっては、規則が多すぎて戸惑うことも少なくありません。
実際には、これらのルールを守るかどうかで事故のリスクや作業効率に大きな差が出ることがあります。本記事では、化学工場で特に意識すべきマナーとルール、そして現場での実態をまとめて解説します。
通行
プラント内だけでなく工場の中のどこでも通行します。事務所の中でもそうですね。ここにも色々なルールがあります。
右側通行
右側通行は工場内に限らず、日本の道路交通法に基づいています。ところが、これが工場内では意外と守られません。
ちょっとした距離だから左側を歩く → 右側でも左側でも良いと錯覚 → 左側に違和感を覚えない。 → 左側で歩く
こういうパターンが多い気がします。街中の道路でも右側通行をしたくても、歩道が無かったりやむを得ない理由で左側通行をすることはあります。
同じことが工場内でも発生しています。事務所の通路など人がすれ違う場面でも、左側通行をして衝突しそうになることもあります。
歩行者・自転車は並んで移動しない
工場内では歩いて現場に行ったり、自転車で現場に行ったりします。この時、複数人で同時に移動する場合、並ぶことが往々にしてあります。2人が並ぶだけでもそれなりなのに、3人4人と並ぶ場面も見られます。
歩行者用通路を作れればいいのですが、すでに道路を拡張する余地がなく、プラント建設の障害になったりすることが工場ではよくあります。その結果、通り過ぎようとする車が通れなかったり、ぶつかりそうになったりする危険があります。
特に危険なのか、危険物を運搬するローリーや、工事用の大きな重機。
歩行者や自転車が優先だから、車が気を使うもの。
この発想で、並んで移動すると、結構迷惑です。
砂利の上を歩かない
プラント周りには砂利が敷かれています。砂利の上を歩くと躓く可能性があるので、基本的には避けるべきです。パトロールや運転で通る場合でも最低限にしています。
これを考えずに、すぐ近くにアスファルト舗装されていても砂利の上を、歩く人が一定数居ます。砂利に足を取られるという経験があるかないかと、そのレベルで安全を考えている化学工場という認識が、ポイントでしょう。
マンホール・側溝の蓋の上を歩かない
化学工場にはマンホールや側溝がいっぱいあります。地面の下を通る配管や、排水が多いから仕方ありません。これらの場所は、実は結構怖い場所です。
人が乗るだけで踏み落とす場合があるからです。
この場合、足を怪我したり人命に関わったりするでしょう。工場内のこうした設備は、街中よりも管理がされていません。街中でも適切に管理されているわけでなく、確率論の話で運よく問題に合わない可能性もあるでしょう。
工場内では、マンホールや側溝を専門に管理する人はおらず、通行する人も少ないので、数少ない機会として自分が該当してしまう確率が上がります。
少し足のステップを変えるだけで、危険回避できます。意識するかどうかの差。他人は信じず自分を信じるのが良いでしょう。
横断歩道・段差では指差し呼称
横断歩道を歩いたり、階段などの段差では指差し呼称をします。
これはフェーズ理論での意識レベルを上げる狙いがあります。横断歩道の前でいったん立ち止まって左右と正面の確認、階段でも段差で指差し確認。トラブルが起こりやすい場所なので、意識レベルを強制的に上げることができます。
横断歩道は工場内だと通行する人が少ないから良いだろう・・・、車や自転車が気を使うから歩行者は気を使わないで良いだろう・・・、こんな勝手な思考をする人が居ます。特に後者の発想は危険ですね。
階段でも転落や踏み外しのヒヤリはとても多いのに、自分だけは大丈夫だろうと勝手に考えてしまいます。
階段では手すりを持つ
階段を上り下りする時は手すりを必ず持ちます。
通行トラブルが結構多い場所です。化学プラントの現場で長く働いている人は、染みついていることでしょう。
ところが、機電系エンジニアなどのように、現場に行く機会が1日1回などの頻度だと、意外と染みつきません。昔から言われていることでベテランほど手すりを持ちますが、若手ほど持たないように感じます。(単に数回現場で直接言われたことがあるかどうかだけの差だと思います)
作業服
化学工場では作業服に関するルールもあります。
腕まくりをしない
作業服の腕まくりをしているシーンは、結構見かけます。
研究の人に多いイメージ。化学工場では薬液や設備との接触リスクを下げるためにも、長袖が基本です。
夏でも長袖です。暑いですよね。それが嫌な気持ちは分かりますが、腕まくりをする人が結構います。現場ではさすがに少ないけども、事務所内では見かけます。見た目の印象もあまり良くないので、TPOを考えて対応したいところです。
ボタンをしっかり閉める
袖や胸ポケットのボタンを閉めないという人は、結構います。無頓着というパターンでしょう。
胸ポケットの場合は、工場内で異物の原因にもなるので、気にしないといけないことです。
オペレータは相当気にしています。プラントエンジニアの方が気にしておらず、胸にボールペンを指したまま、ボタンを閉めずに現場に来てしまい、注意される場面があります。最近では、注意する人も減りました。
シャツの裾を出さない
作業服の下にはシャツなどを着ています。
このシャツをズボンの中に仕舞わないで、作業服を着て裾が見えている場合があります。
見た目の問題もありますが、工場現場では巻き込まれのリスクになりえます。少しでもリスクを下げるためにも、裾を出さないレベルで工場では気を使っています。
ポケットに手を入れて歩かない
作業服のポケットに手を入れて歩くというのは、非常に危険です。
躓いたときにどうしようもありません。大怪我に繋がります。これを気にして、作業服に手を入れれるポケットは設置しない場合もあるでしょう。
冬に手が冷たくなるので、裾の中に手を入れて歩くという本末転倒な方法を取る人も、最近では増えています。見た目も良くないし、手袋で対応できる問題ですね。
その他
通行や作業服のルールは、工場作業員全員に共通します。他にも共通的な事項がいくつかあります。
道端にゴミを捨てない
道端にごみを捨てないのは、街中でも当たり前です。
ところが、工場ではたびたび捨てられているシーンを見かけます。
積極的に捨てているわけではなく、車などでの移動中に落ちてしまうパターンが多いです。この時に、昔なら気が付いた人が拾い捨てていましたが、最近は拾わなくなりました。
汚いし、どんな風に汚染されているか分からないという問題と、ゴミ箱など気軽に捨てる場所が無いという問題があると思っています。捨て方を厳しくすればするほど、拾おうとする気持ちを削ぎますね。みんなでゴミ拾いをして意識改革を、というパターンを繰り返しています。
指定された場所以外ではタバコを吸わない
タバコを吸わないことは、化学工場ではとても大事です。
火事に繋がりますからね。
工場内で全面禁煙としている会社もあるでしょう。そうはいっても、特定の場所で許されていたりするのが実態でしょう。このタバコがなぜかプラント内に持ち込まれて、問題になることもあります。全面禁煙は現実的には不可能なので、この問題は残り続けます。
携帯電話はプラント内に持ち込まない
携帯電話をプラント内に持ち込むと、静電気着火する恐れがあります。
この理由で、防爆携帯以外は持ち込まないマナーになっています。実際には非防爆の携帯でも、エリアを絞れば問題ないのですが・・・。分かっている人ばかりではないので、全面禁止という手段を取らざるを得ないでしょう。
参考
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最後に
化学工場のマナーとルールは、ただの形式ではなく、実際の安全運転と事故防止に直結します。
通行ルール、作業服の着こなし、その他の基本マナーを理解し、現場で意識して実践することで、作業の安全性と効率を大きく向上させることが可能です。
現場で差が出るのは、この意識の違いです。まずは自分から基本を守ることが、工場全体の安全につながります。
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