分液は化学プラントで非常によく行う操作です。
プラント設計や機器設計でも分液を意識することはありますが、化学工学の比重を使った計算で終わってしまうことが多いです。
実際に運転をしたり、トラブル時に考えようとしたり、類似設備がない状態で設計をしようとして基本的な部分から考えようとしたときは、物理的なイメージを持っておくことが大事になります。
ドレッシングを振って置くと起こる分離が、分液そのものなのです。
考え方を整理しておきましょう。
水と油
分液とは、水と油を分離すると言っても良いくらいです。
2つの液層に分かれることが分液ですよね。
水と油はよく言われるように、混じり合いません。
ドレッシングを上下に振る(プラントなら撹拌機で撹拌する)ことで、油と水は均一な状態に見えます。
イメージで分かるように、油・水・均一になった状態を色で分けておきましょう。
水と油が均一になっている状態はあくまでも瞬間的なもので、時間が経つと水と油の2つの液相に分離していきます。
分液の状態
水と油が分離する状態を、時系列で並べていきましょう。
最初は水と油が均一な1つの液層の状態ですが、すぐに水と油に分かれようとします。
油の比重が水の比重より軽いという一般的な状況を考えましょう。
水と油は、油が上端から水が下端からそれぞれ液層として見えてきます。
時間が経つほど、水層と油層の体積が大きくなっていき水と油が混じった層は逆に少なくなります。
最終的には水と油が混じった層はほぼなくなります。完全になくなることは少なく、微妙に残ることでしょう。これを中間層と呼びます。
分液速度
分液はプラント運転上は、分液速度という概念が重要です。
つまり、水と油の場合でどれくらいの時間で綺麗に分離できるか、ということを気にします。
というのも、分液が完全にできていない状態なら、製品の量が少なくなったり、廃棄物の量が多くなったりと、効率的な運転にならないからです。
先ほどの説明のイメージ部を、下の図のようなグラフ化します。
横軸に時間を取り、縦軸に水層・油層の液面部を取ります。
時間とともに液面が中心部に集合していきます。
液面の変化がほぼなくなるまでの時間を測定し、液面高さ/時間を分液速度として定義します。
例えば10cmの水と油が混じっている容器を置いて、1分間で水と油に完全に分離した場合は、
分液速度 = 10cm/1min
とします。
実際のプラント運転での容器が1mの高さであれば、
1m/(10cm/1min)=10min
の時間が分液に必要となります。
運転上は余裕を持っておきたいので、30minの時間置いておくといったように決まった時間を確保することになるでしょう。
密度と粘度
分液速度は、密度と粘度が大きな要素になります。
水と油がそれぞれ下端と上端から層として見えるようになるのは、重たい水が下に沈み・軽い油が上に浮かぶからです。
沈んだり浮かんだりする速度は密度に比例しますね。
密度は水や油の種類で決まるだけではなく、溶けている物質や温度にも依存します。
人間が海では浮くのも、海には水以外に塩が溶けていて比重が大きいからですね。
分液速度を上げようとしたら、重たい水をさらに重たくするために例えば苛性ソーダを加えたりします。
温度によって密度が変わるので、水と油の密度差が温度を上げる方が広がるなら温度を上げるという操作も有効です。
粘度は分液速度に影響を与えます。
液が分かれようとするときに、液自身が抵抗となりその指標は粘度として現れます。
温度を上げた方が粘度は小さくなるので、温度を上げて速度を上げようとすることは1つの考え方です。
しかし、密度差は温度が低い方が広がる傾向なので、一般には温度を下げて分液速度を上げようとすることが多いでしょう。
参考
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最後に
分液の視覚的イメージを説明しました。
ドレッシングと同じですが、水と油を均一に混ぜた状態から置いておくと、水と油に分離します。
上端下端から液面が出て真ん中に集まっていきます。
この高さと時間から分液速度計算し、実際の設備に適用します。
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