液面計で管理しています。
こういう話はプラントに関わっていると、よく聞きます。
運転や計装に関わっていない人には、それっぽく聞こえるでしょう。
ところが、液面計での管理にはいろいろな落とし穴があります。
注意しないといけないことをまとめてみました。
液面計は信頼感は重量計よりは劣るものの、設置しやすいので汎用的に使われるという、位置づけですね。
液面は揺れる
液面は揺れる。
この当たり前の物理現象を改めて押さえておきましょう。
お風呂に入るときや、ペットボトルの水・コップの水を飲むときも、観察していれば液面は揺れていることに気が付くでしょう。
この当たり前の現象は、化学プラントのタンクでも当然起こります。
機械屋にとっては、計器というと何かすごいことをやっているような錯覚を覚えますが、実際には物理現象を素直にデータとして拾っています。
液面とその時間変化は例えばこんな感じになります。
左側の絵のように、タンク内に液を受け入れて、すぐに静止状態になって液面が静止する。
こういうシンプルなイメージを持ってしまうでしょう。
実際には右側のように、受入が終わった直後は液面は揺れています。
時間経過とともに落ち着いていくでしょう。
例えば液面計を使って液を受け入れるときに、過剰量を受け入れ内容にするために判定条件を付けることは良くあります。
- 液の受け入れモードになって、ポンプを起動して液面の上昇していく様子を監視
- 一定時間経っても、所定の液面に到達していないときは、ポンプに異常がある可能性がありアラーム発砲
こういう設定をしていて、判定値を必要液面地ギリギリにしてしまっていると、液面の揺れの程度によっては判定値を下回ってしまう場合があります。
判定値に余裕を持たせたら解決する話です。
レシピ上、1000L受け入れるのだから判定条件を999Lにする、というような攻め方はしないように気を付けましょう。
補正が必要
液面計を適切に使うには、使い始めに補正が必要です。
信頼のおける流量計を使って、何段階かに分けて水を仕込、液面計の値をプロットします。
流量計の指示値と合うように、補正を掛けてようやく使える液面計になります。
ここで、耐圧タンクなど鏡部がある場合はさらに注意が必要です。
鏡部は、容量と高さが比例関係にありません。
鏡の容量に関する計算式を当てはめることになりますが、例えばノズルが付いてあったり撹拌翼が付いてあったりすると、単純な計算式とはズレが起きます。
このため、鏡部は流量計で細かくチェックする方が好ましいです。
差圧式液面計は注意だらけ
液面計の中でも差圧式液面計は特に注意が必要です。
真空時に液面が変わる
差圧式液面計を真空下で運転しているときに問題になります。
差圧式液面計の均圧をしっかりとっておらずに、タンク内を真空にしたときには、指示値は下がります。
均圧さえ取っていれば解決するアナログな問題ですが、取り扱う数が多い時ほど軽視されがちなポイントで、運転したときになって問題に気が付きます。
密度で値が変わる
差圧式液面計は密度で値が変わります。
原理を考えると当たり前。
これが運転現場では、混乱のもとになります。
例えば蒸留工程で、通常なら留出器の液面計で1000Lを指示するはずなのに、今回は1100Lになっていた。
こういう問題があった時に、最初に考えるのは蒸留のしすぎです。
時間が長かった・スチームの圧力や流量が大きかった、ということを調べるでしょう。
ところが、蒸留対象物の組成が実は変わっていて重たい液が留出されていた、というケースは特にバッチでは起こりえます。
差圧液面計の原理的に避けれないことなので、ちゃんと特徴を知って問題が起きたときに対応できるようにしたいですね。液面計を疑うことすらしないというのが危ないです。
底が測れない
差圧式液面計を大気圧貯槽に付ける場合には、底部が測れなくなります。
特に危険物タンクは底板からノズルを取ることができないので、完全に測れない部分ができます。
この部分を加味して運転や管理を行いますが、注意したいことが1点あります。
- 液面計の指示値は底部の値を含んでいるか
底部の値を含まないケースと含むケースの2パターンが考えられます。
いわゆるゼロ点調整の世界です。
どちらであるかで結果が変わってくるので、間違いのもととなります。
払出時に測れない
差圧式液面計は、受圧部の圧力を液面に変換する装置です。
受圧部の圧力変動があると、指示値は当然変わります。
ここで注意したいのが、タンク内の液を払い出すとき。
液面が減るので、流体は下に落ちる方向の速度を持ちます。
この速度変化に応じて動圧が発生します。圧力損失と同じ概念で、速度の2乗に比例すると考えて良いでしょう。
この動圧を差圧式液面計は拾ってしまいます。
その分だけ差圧式液面計の指示値は真値から、ずれてしまいます。
払い出しの判定条件に、タンク液面計を使おうとしても上手くいかないでしょう。
残液の管理が重要になる場合には、そもそも差圧式液面計に頼らずに電波式液面計や重量計など信頼のおける計器でのダブルチェックを検討しましょう。
フロート式液面計はトラブルになりやすい
フロート式液面計は、フロートやワイヤーに関するトラブルが起こりえます。
液面の揺れが小さい場合には起こりにくくても、液面の揺れが大きくなると、フロートが反転したり・ワイヤーに絡まったり・ガイドパイプと擦れたりと、いろいろな問題が起きえます。
船が海の波によって揺れることをイメージすると、良いかもしれません。
古典的な仕組みで信頼感がありそうですが、液面の揺れという古典的な問題に直面します。
大型のタンクで使ったり、そこまで精度が求められないシステムに使ったりしますが、万能ではないので一定のケアが必要になります。
直視式は見ない
直視式の液面計は補助計器としての位置づけです。
運転員が現場で操作するような場所では重要な役割を果たしますが、自動化を進めていく中でこういう場所はどんどん少なくなっていきます。
付けなくて良いというわけではありませんが、付けても現場で見る人が居ません。
分液状態など液面値以外のタンク内状態を知ることができるので、本来は大事な計器です。
現場に行くのが大変だけど、状態は知りたいという場所であれば、カメラを設置して計器室で見れるようにしましょう。
今後、カメラの需要はますます高くなっていきます。
参考
液面計に限らず計装関係は化学プラントでとても大事です。
特に以下の本1冊あれば、かなりの部分で使えるのでおススメです。
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最後に
液面計で管理するときに気を付けることをまとめました。
液面が揺れるため、いつも真値を示すとは限りません。
使用開始前は流量計による補正も掛けましょう。
差圧式液面計やフロート式液面計などアナログな計器ほど弱点が多いですが、物理現象をしっかり把握するには役に立つでしょう。
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