フランジ(Flange)呼び圧力の使い分けについて解説します。
JISフランジの選定でよく目にする「呼び圧力(K表示)」ですが、10Kと20Kで何が違うの?なぜ温度によって耐圧が変わるの?と疑問に思ったことはありませんか?
この「K」は単なる記号ではなく、フランジの強度や使用条件を決める重要な指標です。間違った理解でフランジを選ぶと、配管の破損や事故の原因にもなりかねません。
この記事では、JISフランジの呼び圧力の意味、温度との関係、使い分けのポイントを、初心者にもわかりやすく解説します。図付きで解説するので、現場初心者や設計初学者の方もぜひ参考にしてください!
この記事は、フランジ(設計)シリーズの一部です。
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フランジ呼び圧力の意味
フランジの呼び圧力とは、その配管の耐圧を示すと思っても良いでしょう。
呼び圧力とは、フランジの強度区分を示す記号で、通常「10K」「20K」などと表記されます。これは「何kgf/cm²に耐えられるか」という基準を元にしています。
- 10K = 約1.0MPa程度の圧力に対応
- 20K = 約2.0MPa程度の圧力に対応
配管や装置がどれだけの圧力に耐えることができるか?ということは設備設計や配管設計施工で効いてくる話です。
呼び圧力はフランジの耐圧強度と直結する指標です。
配管-フランジのシステムで最も弱い部分がフランジ。だから呼び圧力が分かれば、その配管システムの耐圧が分かるという展開です。
例えばJIS10Kというような表現をして、末尾のKという文字がkgf/cm2(≒0.1MPa)の単位を示していることさえ知っていれば十分です。JIS10Kフランジなら1MPaまで耐えることができるフランジという認識ですね。
今回取り上げるのは突合せ溶接のフランジです。

あまり意識することはないですけど。。。
JIS10Kフランジ
JIS10Kフランジは、日本で最もよく使われるフランジでしょう。
バッチ系化学プラントでも、もちろんJIS10Kが一番よく使います。
フランジ呼び圧力で悩んだらとりあえずJIS10Kにしておけば良いというくらい標準的です。
配管・装置いずれもJIS10Kフランジにしておくことで、配管のフランジを統一できるので設計がかんたんになるでしょう。
実は、JIS10Kの一つ弱いグレードにJIS5Kというフランジがありますが、これだと強度面で少し不安です。
ポンプの揚程が40mくらいで、密度が1.2くらいの液だと締切圧力(最大使用圧力)が500kPaくらいになることもあります。
それくらいならJIS5Kでも耐えることは耐えますが、呼び圧力と最大使用圧力がかなり近いというのは、配管設計や強度設計的には好ましくありません。
悩んだらとりあえずJIS10K
JIS5Kフランジ
JIS10Kより弱い呼び圧力のJIS5Kは、特定の状況で使います。
10Kの半分の圧力である0.5MPaまで耐えるフランジという理解です。
- 大気圧使用のタンクのマンホール
- ほぼ常圧のガスライン
共通するのは「使用圧力が弱い」ことと「口径が大きい」こと。
呼び圧力が大きいとフランジ厚みが厚く、フランジ重量が重たくなるので、可能なら避けたいと考えます。
特に口径が大きい方が重量に効く影響も大きいです。
使える機会があれば積極的にJIS5Kを使いたいですね。
圧力の低い大口径はJIS5K
JIS2Kフランジ
JIS5Kよりも低い圧力にJIS2Kというグレードがあります。
これは450A以上に限定されるので、マンホールで使う可能性があるというくらいでしょう。
400AのマンホールだとJIS2Kは使えずJIS5Kとなるので、重量と口径のどちらを取るかというような判断を迫られます。
大口径でチャンスがあればJIS2K
JIS20Kフランジ
JIS20KはJIS10Kの2倍の耐圧である、2MPaまで耐えるフランジです。
1MPa以下での使用が圧倒的なバッチ系化学プラントでは、2MPaである20Kフランジの出番は非常に少ないです。
- 特定の高圧プロセスライン
- 油圧など高圧ライン
くらいに限定されるでしょう。
高圧プロセスラインだと渦巻型ガスケットなど特殊なガスケットを使うので、印象に残りやすいです。
油圧ラインはもっと高圧になることもあるので、あえて20Kを使うということがないかもしれません。
それくらい特殊だという認識があれば良いと思います。
連続プラントのような高圧で使う機会が少ないのは、バッチ系化学プラントの数少ない利点でしょうか。
特殊な高圧ラインはJIS20K
国ごとのルール(ASME規格との比較ほか)
フランジは形状や寸法など一定のルールがあります。
このルールは例えば国によって違います。
日本 | JIS | 2K | 5K | 10K | 2K |
アメリカ | ASME | 150lb | 300lb | ||
アメリカ | ANSI | ||||
ドイツ | DIN | ||||
中国 | GB |
ザックリこれくらいを知っていれば良いでしょう。
バッチ系化学プラントではJIS規格だけで基本的にOKです。
ASMEやANSIはアメリカの規格と思ってください。
アメリカの規格が世界スタンダートです。
日本でもアメリカの規格が使えるようにJPIという規格を定めています。
これは例えば中国などでも同じ考え方です。
アメリカ規格か国家オリジナル規格かという使い分け。
異なる規格のフランジは寸法が微妙に違うので取り付けができないケースが多いでしょう。
単に寸法の話だけですが要注意です。
JIS10kなら1000kPaつまり1MPaまで使えると認識しましょう。
ASMEフランジなどのClass150はポンド単位です。lbと表記する場合もあります。
1lb=7kPa程度なので、150lb=1050kPa程度でJIS10kとほぼ同じ感覚です。
参考
フランジには配管設計の基本なので図書も豊富にあります。
呼び圧力に限らず、フランジは幅広い知識を習得しましょう。
関連記事
フランジは配管設計上とても大事です。
詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
最後に
バッチ系化学プラントでの配管フランジ呼び圧力の使い分けについて解説しました。
JISフランジにおける呼び圧力(K表示)は、フランジの圧力耐性を表す重要な設計条件です。
10Kや20Kなどの表示は一見単純に見えますが、実際の耐圧は温度や材質によって変化するため、注意が必要です。
選定時には、使用温度や配管材質、流体の性質などを総合的に考慮し、過不足のない呼び圧力を選びましょう。間違った選定は設備のトラブルや重大事故につながる可能性もあるため、正確な理解が不可欠です。
「とりあえずJIS10K」という理解でも良いですが、周辺知識として呼び圧力の種類は知っていても良いと思います。
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