化学プラントの床面(plant floor)について解説しましょう。
床はプラント架構の土台となる部分。
当たり前すぎて考えていない機電系エンジニアも多いでしょう。
もしくは一度施工するとどうしようもないと諦めるか。
土建エンジニアが近くにいる組織の場合は、土建エンジニアに任せてしまいがち。
ところが、土建エンジニアは建築においては専門家ですが、工場での使い方や設備の使い方などはほとんど知りません。知る努力も少ないです。
機電系エンジニアとしては自分たちが関わる部分だけでも、土建に関する概要的な知識は持っておいた方が良いです。
その代表例が床ですね。
コンクリート
床面がコンクリートとなるのは鉄筋コンクリート造(RC)の場合です。
化学プラントの場合は耐火性能の問題でコンクリートか鉄板のどちらかに限定されます。
コンクリートと鉄板の比較としてのコンクリート床のメリットを紹介します。
化学プラントでのメリットとしてはこれくらいだと思います。
安全安定運転を是とするために堅朗強固なプラントが求められるのは当然。
頑丈
鉄筋コンクリートは鉄板に比べて厚みがあるので当然ですが頑丈です。
鉄板だと補強が弱い箇所では、原料など重量物の運搬で歪みが起きる場合があります。
そもそも取り付け段階の溶接で歪みが起きますね。
腐食に強い
コンクリートは腐食にも強いと言われています。
コンクリートを打ってすぐのころはアルカリ性です。
原料のセメント内にカルシウム分があるからで、水と接触してCa(OH)2などになります。
pHも12と結構なアルカリ性を示します。
人にとっても良くありません。
化学プラント内では酸系の物質を良く扱うので、酸系の液が漏れてくると反応してしまいます。
これも良くありませんね。
一定時間経ってコンクリートが中性化したら気にならない(というか、どうしようもない)でしょう。
寿命が長い
腐食と似たような意味ですが、コンクリートは寿命が長いです。
鉄だとどれだけ塗装をしても、塗装が剥離して錆が起きるリスクはあります。
塗装を怠ると10年くらいで結構劣化していき、20年も経てばボロボロになるでしょう。
コンクリートは放っておいても50年くらいは持っているプラントもあります。
そう考えるとコンクリートは圧倒的な寿命がありますね。
鉄板
鉄板はチェッカープレート(縞鋼板)が一般的です。
4.5mmくらいが普通です。
縞鋼板はすべり止めと水はけのよさを考慮して平鉄板に突起をつけた構造です。
汎用的な建築材として街中でも普通に見かけるでしょう。
そんな鉄板板の化学プラントでのメリットを紹介します。
コンクリートに比べていろいろなメリットがありますね!
最近の化学プラントは鉄板を基本としています。
材質の選択肢が広い
鉄板は材質の選択肢が少しあります。
鉄・亜鉛メッキ・ステンレスの3つも選択肢があります。
コンクリートに比べれば、設計者としては考えやすいでしょう。
錆を気にしないのであれば鉄板に塗装を付けるのが最もリーズナブル。
塗装の代わりに亜鉛メッキにする工場もあるかもしれませんが、私はあまり採用しません。
錆びを徹底して嫌う場所(例えば粉体製品を充填するエリア)ではステンレスを選ぶ場合もあります。
とはいえ、これもレアケース。
取り外しが簡単
鉄板は取り外しが簡単という強力なメリットがあります。
化学プラント内にはタンクなど大型の設備を、ブラケット式で床を貫通させる形で設置します。
この設備を付けたり外したりするときに床面や火打ち梁がどうしても邪魔になります。
床を取り外しできるだけで据付の選択肢が広がるので、鉄板板はとても重宝します。
周りの床面と全溶接してもいいし、特定のエリアだけはビス止めをしても良いでしょう。
こういう選択肢の広さも鉄板の良いところ。
穴あけ加工が容易
鉄板は穴あけ加工が容易です。
これは化学プラントではとても大きなメリット。
建設後に配管を追加で必要というケースは山のようにあります。
鉄板だとこれをちょっと切るだけで完了。
コンクリートでも穴あけはできますがちょっと大変です。
穴を開ければ開けるほど建物としての強度は落ちていきます。
亜鉛メッキ板にするとせっかくの亜鉛メッキが無くなってしまって、寿命延命化の意味が薄れます。
ステンレス板だとそもそも穴あけ自体が大変です。
補強ができる
鉄板だと補強が容易です。
適当なサイズのH鋼を足したり、チャンネルでの補強もできます。
コンクリートだと改造するたびに劣化していきますが、鉄板だと改造するたびに補強できるイメージです。
配管サポートが付けやすい
鉄板には配管サポートが付けやすいです。
穴あけ加工と同じで溶接も鉄板は容易です。
配管改造が多い化学プラントでは、配管サポートの増改築も当然ながら多いです。
選択肢が広い方がありがたいので、鉄板は何かと重宝しますね。
グレーチング・エキスパンドメタル
鉄板の亜種的扱いでグレーチングを床として使う場合があります。
エキスパンドメタルでも考え方は同じです
グレーチングのメリットを紹介しましょう。
グレーチング床のメリットは水たまりを無くせるという点です。
化学プラントではデメリットにもなりえます。
使いところは水噴霧消火設備などの散水設備などの障害になるような場所。
鉄板床の下に散水設備を付けれないが、散水をしないといけないというニーズは割とあります。
こういうときはグレーチングやエキスパンドメタルの出番ですね。
あまり過剰に使い過ぎて、全階でグレーチング化してしまうと危険です。
上階の液漏れが地盤面まで到達するからです。
気が付かないうちに危険物が上から降ってきたというリスクが極端に上がります。
グレーチングは取り外しが容易な構造にできますが、逆に言うと簡単に外れるということ。
安心して歩けない人もいると思います。
使用場所は限定的にしたいですね。
参考
最後に
化学プラントの床面の種類と使いわけを解説しました。
コンクリート・鉄板・グレーチングがあります。
汎用性や選択肢の多さから鉄板が多いです。
コンクリートは改造がほぼない古い工場、グレーチングは水たまりを嫌う場所と使い分けます。
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