ハステロイ配管は、化学プラントにおいて「最後の選択肢」として使われることが多い高耐食材料です。SUS316Lでは耐えられない腐食環境に対応できる一方で、高価・長納期という大きなデメリットを抱えています。
使用頻度が低いため、設計経験のあるエンジニアも限られがちです。その結果、通常配管と同じ感覚で設計・発注してしまい、後から手戻りが発生するケースも少なくありません。
この記事では、ハステロイ配管を設計する際に最低限押さえておきたい考え方を、「設計」「発注」「保全」という実務の流れに沿って整理します。
設計のポイント
ハステロイ配管の設計の基本的な部分です。
耐食性が高い
ハステロイの配管は、耐食性の高さが最大のポイントです。酸などに強いという性質があるので、SUS316Lでは持たないという場合に選定候補となります。
グラスライニング配管やフッ素樹脂ライニング配管も同じような性質を持つので、最高ランクの耐食性配管グループとして認識していれば良いでしょう。ハステロイでもBやCなど型式はありますし、グラスライニングとの特徴の違いもありますが、わずかな耐食性の違いを議論する機会はほとんどありません。
あるとすれば、特定の内容物を扱う専用プラントです。汎用性が求められるバッチプラントでは、この機会はほとんどありません。
高価・長納期
ハステロイの配管は、高価・長納期です。耐食性の高いというメリットがある以上、デメリットがあって当然。
それが価格や納期の問題です。扱う機会が少ないため、タイムリーに金額をチェックできずに予算化しても価格高騰に負けてしまったり、予想以上に納期が掛かって間に合わないということもあります。
細かなチェックをして情報をストックしていくか、高価・長納期ということを知っておいて個々の案件ごとに先行して設計するというようなフレキシブルな対応をしていくか、という選択になるでしょう。使う機会が少ないなら後者の対応になるはずです。
ところが、高価・長納期という情報をあまり意識せず、通常と同じタイムスケジュールで設計して、配管図ができたころには、納期が間に合わなかったということになりえます。配管設計のマネジメントの問題ですね。
継目なし
配管は継ぎ目なしという概念があります。対になるのは溶接です。これはハステロイの配管に限らず、金属材料では共通した話題です。
ハステロイの配管では、基本的には継ぎ目なしを選びましょう。配管というパイプ形状のものに溶接をしても、溶接欠陥や溜まり部など寿命を短くする要素が増えていきます。
ステンレスの配管でも同じように継ぎ目なしを、ほぼ自動的に選んでいるはずです。継ぎ目なしと溶接という2択があって、継ぎ目なしが良いということを知るのが、最初のステップですね。
フランジ最小化
ハステロイの配管に対する継手は、フランジを最小化しましょう。そもそも配管距離ですら最小化するべきです。
フランジ接続は特にバッチプラントでは高いニーズがありますが、ハステロイの配管だけは溶接を主にした方が良いでしょう。というのも漏れのリスクを下げたいから。パイプの継ぎ目なしを選ぶのも同じ発想。
ハステロイの場合、腐食性が高い液体を扱うので、ガスケットをどれだけ良い物を選んでも限界があります。
余裕を持った発注
発注段階では、数量に余裕を持たせましょう。溶接や配管加工で失敗するリスクを考えてのこと。
これは依頼する施工会社の環境にもよります。特殊な材料であればあるほど、失敗のリスクがあります。
長納期であるため、最低限の数量しか発注してなくて万が一失敗したら、後でどうしようもなくなります。高価だから数量を絞り込みたい気持ちは出てきますが、適切に予算を取ってリスク回避をするということが、ハステロイ配管では考えないといけません。
配管施工が、失敗することがなく即納できるということは、いろいろな前提条件があります。普段気が付かないとしたら、目に見えないところで運用を頑張ってくれる人が居るということです。初心者ほど意識しにくいですが、大事なことだと思います。
保全のポイント
ハステロイ配管は保全も大事になります。寿命が長くなるので保全上は楽になりますが、何もしなくて良いというわけではありません。
溶接検査
溶接の劣化検査はとても大事です。ハステロイ配管は長寿命が期待されますが、気が付いたときには漏れていたりします。大抵はフランジ接続のガスケットから漏れますが、溶接接続にしたら溶接から漏れます。
もちろん溶接の方がリスクは低いです。だからといって、ノーメンテではなくそれなりに検査が必要という意味です。配管の溶接面の劣化検査をして、傾向監視はした方が良いでしょう。
定期交換
ハステロイ配管は定期交換を計画しましょう。TBMの発想です。どれくらいの期間で交換するかは、配管形状と使用条件に大きく依存します。
TBMの周期を決めるためにも、溶接検査を定期的におこなって寿命の判断をしましょう。金額的な影響が少なければ、TBMでなくてCBMでリミットに近づいてから交換手配という流れでも良いと思います。
参考
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最後に
ハステロイ配管の設計は、耐食性だけで判断してはいけません。
- 高価・長納期を前提にした設計マネジメント
- 継目なし・溶接主体による漏れリスク低減
- 発注数量に余裕を持たせたリスク回避
- 溶接部を中心とした保全と定期交換計画
これらを総合的に考えることが、ハステロイ配管を長く安全に使うための基本です。
「使う機会が少ない材料」だからこそ、設計段階での慎重な判断が、その後のトラブルを大きく減らします。
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