プロセス中の異物除去などのためにストレーナもしくはフィルタを、ラインに設置することはよくあります。
この配管の設計をする際には、実は数パターンの方法が考えられます。どこまで対策を取るかはプロセスの危険性や作業内容によって変わる部分がありますが、数パターンのうちから選べるというのが設計者にとっては1つのスキルとなるでしょう。
ストレーナやフィルタの内部を交換する時に「いかに安全な状態にするか」ということがポイントです。
シンプルな方法
最初にシンプルなライン設計を考えます。
ストレーナ・フィルタの前後に遮断弁を設け、ベントとドレンのバルブを付けたパターンです。とてもシンプルですね。この方法で付いている現場も多いことでしょう。
- 遮断弁を閉じることで、本体を開放したときに液が外部に漏れない
- 内部の液はドレンとして排出する
- ドレン排出を良くするために、ベントラインを付ける
この組み合わせが最低限だと私は思っています。ベントとドレンのラインがなかったりプラグで止めているというパターンもありますが、作業頻度が読みにくいストレーナ・フィルタはプラグ取外しが面倒なので避けた方が良いでしょう。
バルブとの取り合いはなるべくフランジにしたいです。危険物のラインならほぼ必須でしょう。そうでなくてもフランジで統一しておきたいです。フランジとバルブを付ける場合はノズルが折れる確率が高くなるので、ノズルの補強をしておきましょう。
残液確認をしたい
シンプルな方法では危険物などを扱う化学工場では、不安が残ります。
「労働安全衛生規則第272条第2号ただし書及び特定化学物質障害予防規則第16条第2号ただし書の装置について」に書いてある内容とほぼ同じです。
前後の遮断弁を閉じてベントとドレンを開けていれば、内部に液体が残っているはずがないと思うでしょう。ところが実際には内部に圧力を持った液体や気体が残っている可能性が考えられます。内部エレメントで閉塞が考えられるからです。蓋を開けたときに圧力を持った液体が飛び出してくると、怖いですね。
対策として現地圧力計を付けておき、ドレン抜きをしたときに圧力計の指示値がゼロであることを確認してから蓋を開けようとする狙いがあります。
私の案が労働安全衛生規則と違う部分は、ストレーナの前もしくは後に1個だけ圧力計を付けるのではなく、前後に1個ずつ付けるというもの。気体と液体で使いわけを想定しているようですが、使いわけをするのは結構面倒です。気体と液体が混じっているという場合も考えられます。内部エレメントが詰まっていた場合に、前側と後側のどちらに液体が残っているかを確認する術はありません。
圧力計の個数を増やすことでコストが急激に膨れ上がるわけでもないので、両方に付けるのを標準としている方が無難と思います。
内部洗浄をしたい
圧力計を付けているだけでは万全とはいえません。もう1段階安全性を高めるには以下のような洗浄ラインを付けることが考えられます。
水と窒素のラインをストレーナの1次側に付けます。排水ラインをドレンラインに繋ぎこみます。ドレンの場合はバケツなどに液を受けてドラム缶に廃棄することができますが、水のラインを接続する場合は排水量が増えてしまいます。これは排水タンクなどに受けて環境処理をすることになるでしょう。
水を付ける理由は、内部に残っているわずかな危険物すらも取り除きたいという狙いから。有機溶媒は水には溶けないので、水で置換したからと言って完全に除去できるわけではありませんが、安全性はグッと高くなるのは間違いありません。
窒素を付けておけば液の排出ができるだけでなく、洗い終わったフィルターをセットして運転に使用する時に窒素置換ができます。
水も窒素も遮断弁の内側にセットしておくとやりやすいのですが、遮断弁の外側に付いている場合は省略が可能かもしれません。作業性が悪いかもしれませんが。
自動化は難しい
安全性を高めるためには計器やラインが増えていきます。操作間違いを防ぐためにも自動化しようと思えば、できなくはないでしょう。
圧力計をDCSに取り込み、各種バルブを自動弁にして、シーケンスを組み、タイマーで制御することは不可能ではありません。
ただ、コストは高くなるでしょう。高温・高圧などの危険性が極めて高い場所以外ではそこまでする必要はないと思います。
この手のフィルターは蓋を手動で開けて洗浄したり交換したりすることが前提だからです。
自動搔き取り型のストレーナなど世の中には存在していますが、これも使う場所は限定化されるでしょう。
手動作業が残り続けるので、中途半端に自動化しても効果が低いという判断をします。この作業で操作間違いが気になるなら、他にも根深い問題がいっぱい出てくるでしょう。
参考
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最後に
ストレーナ・フィルタのライン設計を考えました。交換洗浄作業を考えるときに、遮断弁の外、ベント・ドレンを付けたり、圧力計で監視したり、水・窒素ラインを繋いだりと、安全性を高める方法が考えられます。
内容物の危険性に応じて選べるようにしましょう。
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