プラント建設だけでなく単純な改造工事でも、費用は高騰し続ける現在。
エンジニアとして見積を丁寧に算出しても、高騰の割合の中に埋もれてしまい、見積を正確にする努力が薄れていっています。
この状況では、エスカレーション費やコンティンジェンシー費の考え方を導入することが望ましいでしょう。
世間一般には使われている考え方なので、オーナーズエンジニアこそ知っておきたい考え方ですね。
エスカレーション費
エスカレーション費は、投資金額が将来にどれだけ高騰するかを現段階で予め予測しておこうという費用です。
例えば、2020年現在で100万円という金額の設備が、2021年には110万円であったとしましょう。
単純に10%アップしています。
これが、設備の仕様など全く同じであったとして、メーカーの稼働状況も全く変わっていないとしましょう。
それでも価格が高騰するとすれば、資材や労務の単価が上がっていると考えるのが最初です。
2023年の現在では100万円や110万円という数字は分かっているものの、2020年現在で予算見積を作成している状況だと、2021年に費用がどれだけ上がるかは知りません。
これをエスカレーション費として一定額見込んでおきます。
- エスカレーション費を10%と予想していたら、先読みが優れている
- 15%と予想していたら、安全率を見込んでいたことに。余った予算は別用途に使います。
- 5%と予想していたら、予算不足で何かを諦めないといけないことに
予算が高いからと、見積段階でエスカレーション費を入れていなければ、実行段階で悲惨な目にあいます。
結果的に、製造や保全がラインを維持するのに必死になり、限界を越えると生産量が下がっていきます。
会社にとっても、エスカレーション費を入れておくことは安全側ですね。
コンティンジェンシー費
コンティンジェンシー費は予算超過するリスクを回避するために、予め上乗せしておく費用という意味で使われます。
予算への上乗せという意味で、エスカレーション費と同じですが、別費用として計上します。
コンテンジェンシー費はプロジェクトで何か予想外のことが起こった時に、吸収するための費用という言い方も可能です。
雑費・予備費という表現とかなり近いです。
大雑把に言うと、私は以下の理解をしています。
- 雑費 予算に独立した費目で計上するほどではないが、計上したい費用
- 予備費 プロジェクトの計画変更に対する、吸収代
- コンティンジェンシー費 予算段階の項目通り実行段階に移すときの高騰に対する、吸収代
予備費とコンティンジェンシー費はプロジェクトとして予め決まっていた内容なのか、変更された内容なのかという使い分けができます。
エスカレーション費もコンティンジェンシー費と同じで、予算計画案を実行しようとしたら、高騰したという時の費用。設備に当てはめると、設備仕様が分からないという部分。
使い分けは以下のような感じでしょう。
- エスカレーション費 資材や労務の費用高騰する費用
- コンティンジェンシー費 メーカーの稼働状況により高騰する費用
資材や労務の費用が同じでも、稼働状況によって見積額は変わります。
稼働が忙しい時に依頼する方が、金額は高くなります。
メーカーの稼働状況を常にウォッチすること自体が難しく、聞いても適切な情報が入ってくるとは限りません。
さらに、費用にどれだけ上乗せするかもわかりません。
ユーザー側が実績データを積み上げていくしかないでしょう。
この費用は、エスカレーション費に入れることは一般には難しいです。
かといって、入れていなければエスカレーション費の操作が必要で、エスカレーション費そのものの意味がズレてきます。
参考
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最後に
エスカレーション費とコンティンジェンシー費について解説しました。
どちらも将来の価格高騰を予想するものです。
考え方はいくつかありますが、私はエスカレーション費を資材・労務の費用、コンテンジェンシー費をメーカーの稼働状況による差と認識しています。
不確定な要素を分解して、それぞれの名前を付けて管理しようという意味ですね。
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