化学プラントで必須の配管部品であるドレンファンネルは、見過ごされがちな設計ポイントが多く、設計の不備が液漏れや飛散事故につながることがあります。
本記事では、ドレンファンネルの基本構造と口径設計、レデューサや排出配管との関係を整理し、漏れを防ぐ設計の考え方をわかりやすく解説します。初心者の方でも理解できるよう、流量や圧力を基にした具体的な設計イメージも紹介しています。
ドレンファンネルは漏斗!
まずファンネルの説明からしましょう。以下のような形状をしています。

漏斗やドレン受けという日本語を使う人もいます。排水のプロセスなどの系内から分離して、排水溝に導く入口部分を指します。スチームトラップの排出口などにも使いますね。某有名ロボットアニメのオールレンジ武器のことではありませんよ。
ドレンファンネルから飛散する
ファンネルの問題は、ファンネル外部に液が漏洩するというものです。大気に開放されたプロセス液は、レデューサ形状の漏斗で受けたとしても、外部に漏洩する可能性があります。
例えばスチームドレンや温水などをファンネルで受けたときに、周囲に飛散したら火傷する可能性があります。ドライフロアーと真逆の発想になって、転倒などのリスクも出てきますね。
ドレンファンネルの口径設計
ファンネルの口径設計をしましょう。

ファンネルはプロセス配管・レデューサ・ドレン配管からなります。
プロセス配管
プロセス配管の設計は、一般にはプロセス要求に従います(当たり前)。化学プラントでファンネルを使う場面は、ユーティリティに限定されると言っていいでしょう。冷却水などの配管設計は、その装置で必要となる伝熱計算によって決まります。今回は以下の条件で考えます。
- 口径 50A
- 圧力 200kPa
- 材質 SGP
プロセス配管側は流量の計算をしておきます。プロセス配管がポンプで強制的に流れているとして、50Aで流速2m/sとすると約240L/minです。
レデューサ
レデューサ部は最小条件は決まっていますが、最大条件はあまり決まっていません。
プロセス配管外径より大きな内径を持つレデューサ
最小条件 × ファンネルに接続する配管の本数
ファンネルのレデューサは最低でもプロセス配管より1サイズは上げることになります。50AのSGPなら外径60.5mmで、65Aの内径が67.9mmなので、最小条件としてはクリアします。

ファンネルはプロセス配管1本だけを繋ぐというケースは少なく、複数の配管を接続するので、最大条件はプロセス配管の本数を掛けましょう。
ドレン配管(連続排出)
ドレン配管はファンネル設計上の超重要要素です。連続排出する場合を考えます。つまり、プロセス配管から常時240L/minで流れている時に、適切に排出できるドレン配管径の設計です。
自然流下の計算を使います。自然流下の流速0.3m/sとして、プロセス配管の流量が240L/minの場合に必要となる配管径は115mm程度です。配管径として100A程度が必要という単純計算になります。
ドレン配管(バッチ排出)
ドレン配管をバッチ的に排出するシーンは、バッチプロセスでは結構あります。
例えば、200kPaの冷却水をファンネル経由で大気に開放する例を考えましょう。ベルヌーイの法則そのものを使って、圧力200kPaと同等の流体エネルギーを持つ水の流速は20m/s程度。バルブを開けて圧力を開放して、圧力が急激に下がるまでの時間を5秒程度としたとき、この間にファンネルに排出される冷却水の体積は200L程度。自然流下の流速0.3m/sで5秒で到達する距離は、1.5m分の配管長さ。
このドレン配管とレデューサ部の体積が200L未満である場合には、ファンネルから液が溢れてしまいます。

漏れを防ぐ工夫
ファンネルの口径を適切に設計していないと、漏れが起きます。連続排出でもバッチ排出でも、ファンネルから漏れることは同じで、好ましくありません。配管が設置されて運転してから問題に気が付くので、その場でできる対策をいくつか紹介しましょう。
- ポンプ流速を下げる
- プロセス配管出口にオリフィスなど付けて圧力を下げる(流速を落とす)
- レデューサ上部に蓋を付けてカバーする
ポンプ流速やオリフィスなどは、運転条件を変えてしまう可能性があるので少し注意しましょう。現実的にはカバーで何とかしようとするでしょう。
参考
関連記事
ドレンファンネルの設計は、流速の考え方を使います。さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
ドレンファンネルは単なる漏斗ではなく、配管設計において液漏れや飛散防止の要となる部品です。口径やレデューサ、排出配管の容量を考慮することで、現場でのトラブルを未然に防ぐことができます。特にユーティリティ系配管では、正しい設計が安全運転とドライフロアーの維持に直結します。
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