化学プラントでバルブを使った運転をしていると、「バルブが漏れたらどうしよう…」と不安になることがあります。実はバルブは絶対に閉じるわけではなく、内通(漏れ)が起こる前提で運転を考えるのが安全です。
この記事では、バルブだけに頼らず、安全に運転するための実践的な工夫を5つ紹介します。調整弁は漏れることを前提で設置するでしょうが、自動のon-off弁や手動弁でも漏れることは前提で考えた方がいいです。漏れることを前提にすると配管設計も変わってきます。
この記事は、ライン設計(バルブ)シリーズの一部です。
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内通
バルブの漏れは内通という名でなじみがあるでしょう。
- シール面に異物が付着する
- 弁体が擦り減る
- ケーシングに穴が開く
設計がちゃんとされて選定したバルブであれば、内通の大半の原因は異物です。プロセス由来の異物となると防ぎようがないでしょう。
バルブ1個で遮断できるとは思わない方が無難です。仮に漏れが起きた時に問題ないことを前提にプロセス設計や運転方法を考えるべきです。想定外では許されない範囲です。
流量計を使う
バルブだけを信じない場合に、流量計を使うという方法があります。下の図のようなフローを考えてみます。

配管中に流量計ヘッダーが付いていて、AとBという2つの行先があります。当然ですが、Aに送る時はB側の弁を閉めBに送る時はA側の弁を閉めます。正常な状態であれば
- A側に1000L流したいという条件で運転を行い
- 流量計の積算値が1000Lに到達。
- A側で閉めれば積算値は1000Lでストップ
という状況になるはずです。ここで閉めているはずのバルブが内通しているとどうなるでしょうか?流量計の積算値は増え続けます。これが判定条件になります。
流量計で仕込み → 自動弁を閉める → 一定時間待機 → 待機前後の指示値の変動量が一定範囲 → 範囲を越えればアラーム
シーケンスでカバーしようという発想ですね。
液面計を使う
流量計ではなく液面計を使うという方法もあります。液面計を使うケースとして以下を考えましょう。

流量計が全てのラインについているとは限りませんが、液面計はほぼすべてのタンクについています。流量計のケースと思想はあまり変わりません。液面計は流量計より信頼できないという点に注意。
液を受け入れた後は、液が波打っています(揺動とも言います)。この波打っている状態を液面計は正確に検知してしまいます。指示値が振れます。液面の指示値が振れている間に、弁から少しずつ漏れていても気が付きません。液面計だけを頼りにする場合は、タンク内を実際に目で見ることも合わせて行いましょう。
フィードが終わってバルブを閉めた直後は配管内の残液が垂れてきて気が付きにくいですが、一定時間が経つと気が付く可能性があります。大量の漏れならすぐに分かりますが少しの漏れなら気が付きませんけどね・・・
配管の工夫
流量計や液面計のような機械に頼らず、パトロールなどの発見時間が遅れる人手にも頼らない確実性を高める方法を紹介しましょう。流量計の例を拡張してみましょう。

AとBの2つに送りたいという条件は変わりません。ところがC・D・Eという配管がヘッダーに合流しています。
- ある製品ではAとBのラインは使うが、C・D・Eは使わない。
- 別の製品でCやDやEのラインを使う。
こんなケースです。C・D・Eの3つのラインをそれぞれバルブ1つで遮断するのは信頼できません。そこで配管中の工夫をします。
二重弁
バルブ1つだと不安だから2つ付けるという発想です。手動バルブを毎回1つ開閉するのではなくて、2つも開閉しないといけません。うっかり間違えた…という可能性はゼロではありません。
手動弁の場合は、頻度が少ないけど安全性を高めたいという場合に使う可能性があります。危険なプロセスで徹底したい場合はon-off自動弁を2つ付けます。
遮断板
A・Bだけを使う製品では、使わないC・D・Eラインに遮断板が基本です。遮断板が壊れない限り漏れることはありません。信頼感は相当高く、一般的に使います。
バッチの場合、切替配管と遮断板のリストを製品ごとに明確に設定します。その設定を間違えた瞬間におしまいです。
配管撤去
遮断板と同じように配管を撤去してしまう方法です。100mmくらいの単管を作ってしまえば簡単に取り外し可能です。これは遮断板以上に信頼感があります。どうあがいても、漏れこみようがありませんので^^
参考
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最後に
バルブだけに頼らず、安全運転を考えることは化学プラントの基本です。
- 流量計や液面計で監視する
- 配管設計や遮断板で漏れを物理的に防ぐ
- 二重弁で安全性を高める
これらの工夫により、バルブの内通リスクを最小化できます。安全を確保する発想は、計器や人に頼るだけでなく、設備設計そのものから考えることが重要です。
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