設備図面をユーザーがチェックする検図。
時間を掛けて行うわりに意味あるコメントが少ないかも知れませんね。
本当にチェックすべきこと、というのはプロジェクトの特性以上に工場全体の思想に関わることです。
それなりに大きな規模の工場で、設備投資が盛んで、長期的な運用が求められるプラントに対して、バッチプラントの設備を導入する時の図面チェックの例を見ていきましょう。
プロジェクト単位ではこういう考え方をする人は、ほとんどいないだろうと思っています。
取り合いが大事
設備図面で最も大事なことは取り合いです。
こういう取り合い部が一致しているかどうかは、ユーザーエンジニアにとって最重要項目です。
というのも、ここを間違えると以降の設計が全部狂ってしまうからです。
後で修正できる部分であればまだ救いようがありますが、全体が変わってしまうこともあり得ます。
例えば、配管なら途中で口径を変えれば済む世界かも知れませんが、口径を絞ることで詰まったりするので設備構成だけでなく運転方法すら計画から変えざるを得なくなったりします。
取り合いをチェックするのは、P&IDなどのエンジニアリング資料と照らし合わせて、設計情報の間違いがないことを確認するだけなので、難しい話ではありません。
記載ルールさえ理解すれば、膨大なチェック量に対して地道に確認していくだけです。
仕様との一致確認は最低限
見積仕様に記載している要求仕様と図面に書いている仕様が一致していることは、最低限の要求です。
長年取引している会社であれば、要求仕様と図面仕様がズレることは基本的にありません。
メーカーが要求仕様を理解してくれているからです。
それでも単純な記載間違いが起きたり、担当者変更により認識間違いが起きたりします。
その間違いを防ぐという意味での、単純チェックは必要です。
図面をサラッと見ればいい、とベテランが言う場合はこの辺りのことを指しているはずです。(取り合いもサラッとの一部かも知れませんが・・・)
逆に、新たに取引する会社・最近取引が無かった会社・特殊な設備はちゃんとチェックしましょう。
仕様書と図面を見比べて、合っているかどうかを1つ1つ確認していくだけです。作業時間としては15分~30分くらいのもの。
構造の勉強
図面を見れば構造を理解することができます。あくまで勉強目的なので、優先度は低めです。
エンジニアとしてはもちろん大事なことですが、極端にいうと知らなくても何とかなってしまうことが多いです。
作るのはメーカーに任せてしまい、使うのはユーザーの製造に任せてしまう。
何か問題があった時に、構造に立ち返ることがあれば、その時に確認しても良いくらいです。その方がきっと勉強になるでしょう。
初心者が図面を眺めても、解読に時間が掛かるだけという可能性があります。
サラッと概要を見て、上司や同僚と議論して中身を知っていくというプロセスを経る方が良いでしょう。
その点で、検図(製作許可前の図面チェック)の段階では、構造に深く入らなくても、何とかなることが多いでしょう。
図面チェックの例
取り合いと仕様の確認をすれば、設備図面のチェックはほぼ完成です。
個別の設備について、どういうチェックをするか見ていきましょう。
反応器
反応器は以下をチェックします。
ノズル口径とオリエンテーションは配管図に直結するので、非常に大事です。
見積仕様時に検討が浅かった場合には、メーカーに修正を依頼しましょう。
とはいえ、反応器としてはノズルオリエンテーションは、標準化するものです。
個別プロジェクトに対してノズルオリエンテーションを最適化しても、別のプロジェクトでは使えなかったり、トラブルが起きたときに困ったりします。
どのプロジェクトでも共通して使えるオリエンテーションにする方が、長期運転には遥かに有利。
プラントを短期的な目線で見るのか長期的な目線で見るのか、差が出てくる部分です。
基礎取り合いなどは、メーカーの提示した情報にユーザーが合わせないといけないので、変更はとても難しいです。
ここを見れば、後はその会社にとって標準的な表現になっているはずです。
仕様があっているかどうか少し確認する程度。
反応器というと、金額が高く構造も複雑なのでしっかり見ないといけないように思えて、実際はそうでもないです。
ポンプ
ポンプはチェックする項目がほとんどありません。
取り合いの確認はするものの、メーカーに修正依頼することは普通はできません。
モーターの取り合いも見積仕様書でしっかり記載していれば、検図では照合確認だけです。
シール材質は仕様書に書いていれば、照合確認だけです。たまに書いていなかったり、間違っていたりするので、気を付けましょう。
配管との取り合いを変更できないわりに、メーカーや型式によって取り合い部が変わってしまいます。
プラントの安定運転のための予備機共通化を考えるなら、ベローズなどの伸縮継手で取り合いのずれを吸収する方が望ましいです。
槽・熱交換器
槽・熱交換器などの製缶品も、反応器と考え方は同じです。
見積仕様書にスケルトンを付けていれば、スケルトンと図面の照合確認がメインです。
溶接部は作り方が会社によって違い、長期的な影響が出る部分ですので、要求仕様通りなのかチェックが必要です。
このためにも、溶接記号の意味は理解しましょう。
取引が長い会社なら心配なくても、新たな取引をする会社は注意です。
槽・熱交換器もノズルオリエンテーションを統一させていく方が有利です。ダメでも、取り合いが簡単に変更できる仕組みにしていきましょう。
ブロアー
ブロアーは、新規メーカーが多い分野です。
特にステンレス系のブロアーは、槽・熱交換器と同じように溶接が問題になりやすいです。
他にもシール部など考えることはいくつかあります。
相対的に小さな設備で、構造が単純だから、と軽視しがちですが罠にハマりやすい設備です。
フィルター
フィルターも、ブロアーと状況は似ています。
溶接が課題の1つです。
ただし、メーカーの種類が少なく、製図力の問題もあって、十分な情報が得にくいです。
溶接を確認したとしてもできることが少なくて、実質はノーチェックに近いでしょう。
溶接記号というよりも、内部にバリを出さないなどの基本的な部分での抜け漏れを確認する程度です。
遠心分離機・乾燥機
遠心分離機・乾燥機などの特殊設備は個別設計の対象ですので、カスタマイズしやすいです。
工場全体で取り扱う設備点数が多い場合は、ノズルオリエンテーションなど共通化させましょう。
扱う機会が少ないので、1つ1つ丁寧にチェックしていくことになるでしょう。
冷凍機
冷凍機は工場としては特殊設備ですが、メーカーが個別設計をすることは難しいです。
できるかもしれませんが、要求しない方がメーカーにとってもユーザーにとっても有利です。
取り合い寸法を変えたりしてしまうと、設備の標準化の概念から外れます。
工場全体で、冷凍機の種類を揃え取り合いを合わせてしまえば、冷凍機が壊れたときにも部品を融通させたり、設備全体を取り替えたりできます。
運転保全をしている立場からは、こういう傾向を強く望みます。
設計する側は、実はあまり考えずに個別最適化をしていたりしがちですから。(かくいう私もその1人でした)
参考
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最後に
設備図面でユーザーがチェックすることをまとめました。
取り合いと仕様確認を最初に行います。
構造の理解は、1回目のチェックではしなくても何とかなってしまいます。
設備の標準化などの目的で仕様を統一させる目線が、ユーザーとしては大事ですね。
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