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コンカレントエンジニアリングで無理すると起こるトラブル

コンカレントエンジニアリング プロジェクト
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化学工場の建設・改造などのプロジェクトは、コンカレントエンジニアリングをすることが多いです。

少しでも商業生産を早くしたい・少しでも投資の決心を遅らせたい。

こういう会社の発想から、開発期間をできるだけ短くしたいから複数の部署の業務を同時並行的に処理するコンカレントなエンジニアリングは、非常に有用です。

ところが、これを上手く実施するには関わる人がしっかり意識していないといけません。

昔よりも縦割りで他人に興味を持たなくなっている状況で、コンカレントエンジニアリングは崩壊しかかっているとすら思っています。

間を調整する人は苦労が絶えないでしょう。

コンカレントエンジニアリングをやりすぎるとどんなトラブルが起こるのかを、観測範囲でまとめました。

研究

研究段階では、コンカレント性はあまり求められません。

ここでしっかり時間を掛けて開発しないと、そもそも物を作ることはできません。

特に薬関係は大変ですね。

少しでも早く開発しようと時間を短くすると、こんなことが起こりえます。

  • 製造現場を無視したオペレーションになる
  • 廃棄物処理が何も考慮されない
  • 製法の収率の最適化だけがなされ、製造に掛かる費用の最適化ができない
  • 加工時間が予想より伸びたり、設備の故障が起きたり、不具合が生じる

これらの問題が起きてしまうと、商業生産の前提を覆すことになります。

リカバリーまでに数年を越えることもあり、せっかく開発時間を短くした効果を無くしてしまいかねません。

まさに、急がば回れ、です。

化学会社で研究をしている人は、工場現場のことを知らないことが普通でしょう。その中で、時間が短くて議論する暇もなく、とりあえず見つけた1つの解放にしたがって盲目的に進めてしまうと、悲惨な結果になります。

製造プロセス

製造プロセスで時間が開発時間が短いことは、残念ながらごく当たり前にあります。

追加設備が必要というレベルはあまりありませんが、配管が必要というレベルは頻繁にあります。

これは、もちろん研究で発覚するのに時間が掛かることが背景にあります。

例えば以下のような問題が起きえます。

  • 液の移送の配管が追加で必要になる
  • 配管の保温や保冷などの温度調整が必要になる

製造プロセスを開発する段階で、設備が追加で必要になるということは、基本的には許容されません。

投資金額が大幅に変わるからです。ただでさえ、開発期間中のエスカレーションでコストアップする世の中で、追加投資を申請するのは難しいです。

研究の後半段階で、急激な製造プロセスの変更が要求されても、プロセス開発者は何とかしようとして何かを犠牲にします。

それが品質だったり生産数量だったりすることも。

金額が少なくて、効果がありそうなところだけに絞って、工事設計者に依頼することになるでしょう。

工事設計を長年していた私からは、製造プロセスから山のように追加変更があることを疑問に思っていました。ところが、彼らの立場を経験するなかで、工事設計者に依頼するまでに想像ができないほどの葛藤を抱えていることを知りました。工事設計者はできるだけ製造プロセスに寄り添いたいものです。

工事設計

工事設計で期間が短いと、現地工事で大変になります。

これは生産技術者の多くの人が経験している問題でしょう。

  • 必要な配管や配線が足りない
  • 工事の順番を決めることができず、配管を通す場所が現場で見つけられない
  • 工期を守ることができない
  • 将来の増改造の余地をなくす、追加投資が大幅にかかる。

2カ月程度の工事で、1カ月経過してから50m程度のライン敷設追加、というような工事は昔は結構ありました。

今こういうことをしたら、現場で大問題になりますね。

生産技術者としてはプラントの将来のことを考えて最適設計をしたいのですが、会社として真剣に考えているケースは多くは無いでしょう。

短期的な設計で良ければ、工事設計はもっと短くできそうなものの、中途半端に最適化しようとして時間短縮ができないように感じています。(極端に言えば、配管図なんてほとんど精度がないものと割り切っても良いと思っています)

現地工事

現地工事の期間が短くなると、そもそも工事が終わりません。

また安全上の問題が起きます。

ここを削ることは、誰も許容しないでしょう。

工事が終わっても、次のフェーズで確実に痛い目をみます。

生産技術の立場から見ると、「工期を何とか短くしてほしい」という検討依頼が来れば、深夜残業・安全性の不安・品質の問題などリスクを徹底して述べましょう。それが許容されて、工事が終わった後で問題になって生産技術が責め立てられるようでは、かなりマズイ組織だと思います。

トライアル

トライアルの期間が短いと、原因解析ができなくなります。

  • 合理化案を探すことができない
  • 無理な運転を続けて、安全・環境・品質に影響が出る
  • 設備が壊れて追加工事が必要

競争力のない製造プロセスのまま、運転を続けることになってしまいます。

工場外から見ると、「作り出したはいいけど高いから、すぐに作るのをやめよう」という判断になってしまいかねません。

工場としては長い間生産したいのに、そのためのチャンスを作ることができなくなりかねます。

トライアルは時間さえあれば良いというわけではありません。多くの人が関りデータを収集して条件変更をして課題を抽出する作業は、短い期間でもできます。逆に時間を取っても、交代勤務などで疲れ切って対応ができなかったり、関わる人が少なくて問題に気が付かなかったりします。

合理化改造

合理化改造の期間が短いと、生産の期間や工場の稼働が短くなる致命的なリスクを持ちえます。

トライアルまでは一定の工数をかけて検討しますが、トライアルが割ってしまうと関わる人が極端に少なくなります。

その中で改造案を練って、改造工事を実施しようにも、他の仕事と並行処理しないといけないので時間が掛かります。

実務作業としては、製造プロセス~現地工事までと同じ内容なので、起こりえる結果は省略します。

コンカレントエンジニアリングで開発期間を短くして、とにかく少量でも作り出すことに注力するというのは悪くはありません。質を犠牲にしているので、質を上げるための作業が別のフェーズで必要になるという認識を持つ必要があります。

参考

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最後に

コンカレントエンジニアリングを無理しすぎると、研究~トライアルの各種工程で確実に劣化が起きます。

タイムリーな情報共有ができていれば、まだ何とかなることでも、最近の人の働き方は縦割りになっています。

その結果、どこかで無理しても生産活動という目で見ると、得はしません。

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